Plurality の地図
書籍『Plurality』と、その周りで語られている考え方・仕組み・実践・人・論争を、「〜ってなに?」に答える形で一つずつ説明する地図です。初めての人向けに書き、各記事の末尾から本や講演などの一次資料をたどれます。 このサイトについて(作り方と運営者) ・ 用語対照表 ・ 参考文献 ・ このサイトを人に紹介する(QR コード)
まずここから
最初に読むとよい 4 本です。
⿻ Plurality(プルラリティ)ってなに?考えや背景の違う人どうしが、ぶつかり合う代わりに力を合わせられるようにする技術と、その考え方です。台湾のオードリー・タンと経済学者グレン・ワイルが、同名の本で「社会的な違いをまたぐ協働のための技術」と定義しました。ブロードリスニングってなに?何千・何万人の自由な声を AI で読み、似た意見をまとめて「論点の地図」にし、一人でも大勢の声を聴けるようにする技術と実践です。テレビやラジオの「放送(ブロードキャスト)」の逆にあたります。6-Pack of Care(ケアの6パック)ってなに?AI が人々の役に立っているかを、AI の中身だけでなく「現場の声は聞かれたか、誰が責任を持つか、失敗したら直せるか、やめられるか」で確かめるための 6 つの原則です。オードリー・タンとキャロライン・グリーンが 2025 年に示しました。reverse alignment(リバース・アラインメント)ってなに?AI を人間に合わせる「アラインメント」の反対側、つまり社会の制度やルール、人々の技能のほうを AI の時代に合わせて作り直す取り組みです。グレン・ワイルらが 2026 年に掲げました。
中心の考え
書籍『Plurality』の骨組みになっている考え方。
Civic AI(シビック AI・仁工智慧)ってなに?その AI に影響を受ける人たちに対して、きちんと答える義務を負う AI のことです。一つの巨大な AI が皆を治めるのではなく、地域や団体が自分で持ち、点検し、直し、止められる小さな AI をたくさん作ろうという、オードリー・タンらの構想です。ID と人物性(⿻ ID)ってなに?ネットで「私は私です」と示す方法を、パスワードや一つの番号・指紋に頼らず、「この人を知っている」と言ってくれる多くの人や組織の重なりで支えよう、という考え方です。身元を示しやすく、しかも一か所から全部を覗かれにくくなる、と書籍『Plurality』は主張します。⿻ の変化の理論ってなに?世の中を一度にひっくり返すのではなく、中にいろいろな人がいる 10 万人くらいの集まりでまず新しいやり方を試し、そうした小さな成功例をたくさん作って、緩くつなぎながら広げていこう、という書籍『Plurality』の考え方です。⿻ 公衆(プルラル・パブリック)ってなに?人はサークル、職場、家族、町内会など、たくさんの集まりに属しています。それぞれの集まりの中では「みんなが同じことを知っている」状態をつくりやすく、しかも中身が外に漏れにくい。そんな集まりがネット上にいくつも並んで存在できるようにしよう、という考え方です。⿻投票(プルラル投票)ってなに?「一人一票を数えて、多い方が勝つ」というやり方の弱点を直す投票の設計をまとめた呼び名です。どれだけ強く望んでいるか、人どうしがどうつながっているかまで、票に映そうとします。クリエイティブな協働ってなに?芸術から科学まで、国も専門も違う大勢が知恵と経験を持ち寄って、一緒に何かを創ることです。書籍『Plurality』は、ネットの共同作業の道具と、文章や絵を生み出す AI がその範囲を広げると描き、同時に均質化と独占を警戒します。コンテキストの完全性ってなに?プライバシーとは「情報を隠すこと」ではなく、「情報が、共有された場の決まりに沿って扱われること」だ、という考え方です。書籍『Plurality』は、これをネットの ID・決済・データ共有を設計する基準にしています。スーパーモジュラリティってなに?「全体は部分の和より大きい」という性質です。人やものが集まって一緒に働くと、ばらばらに働いたときの合計より大きな価値が生まれます。書籍『Plurality』は、協働の力をこの言葉で言い表します。デジタル公共インフラってなに?道路や水道を公共のお金でつくるように、ネットの身元確認・支払い・データのやりとりといった基本の部品も、特定の企業のものではない公共のしくみとしてつくろう、という考え方です。書籍『Plurality』は、誰もが改ざんされていない情報にアクセスできることも権利として求めます。デジタル民主主義ってなに?インターネットや AI などのデジタル技術を使って、市民が政治や公共の決定にもっと広く深く加われるようにする考え方と実践です。書籍『⿻ Plurality』は台湾を世界の先頭の例とし、AI 中心の技術官僚主義や暗号中心の自由至上主義に代わる道として掲げます。ハイパーグラフってなに?二人のあいだの線だけでなく、何人でもまとめて囲む「集まり」も一つのつながりとして描けるように、ネットワークの図を広げた数学のモデルです。書籍『Plurality』は、社会をこの形で描きます。ポスト表象コミュニケーションってなに?言葉や絵のような「記号」に置き換えずに、感覚・感情・体験そのものを他人と分かち合うコミュニケーションのことです。VR の先駆者ジャロン・ラニアーの造語で、書籍『Plurality』は、ダンスや抱擁のような昔からの親密さを技術で広げる可能性として描きます。一元論的アトム主義ってなに?社会を「ばらばらの個人」と「それを束ねる一つの全体(国など)」の二つだけで考え、そのあいだにある家族・職場・宗教・地域などの重なり合う集団を見落とす考え方です。書籍『Plurality』が、自分たちの立場と対比するために名づけました。交差的アイデンティティってなに?「わたし」は一つの集団では決まらず、職場・信仰・政治・趣味など多くの集団に少しずつ属していて、その重なり方が誰とも同じにならないから唯一の個人になる、という考えです。社会学者ジンメルの説で、書籍『Plurality』は人間観の土台に置きます。創発的公衆ってなに?新しい技術が、それまで無関係だった人どうしを影響し合う関係に巻き込むと、影響を受ける人々のまとまり=新しい「公衆」が生まれ、自分たちでその問題を治める必要が出てくる、という考えです。哲学者デューイの説で、書籍『Plurality』は民主主義の柱にします。協働テクノロジーってなに?人の代わりに働く技術ではなく、人どうし、とくに立場や文化の違う人どうしが一緒に考え、決め、作るのを助ける技術のことです。書籍『⿻ Plurality』の副題に使われた言葉で、本の第 5 部が熟議・投票・市場・共同創作などの具体例を並べています。商取引と信頼ってなに?スマホ決済や暗号資産で、お金のやりとりは現金並みに手軽になりました。でも書籍『Plurality』は、それは現金をデジタルで再現しただけだと言います。人と人の信頼や貸し借り、地域への貢献をそのまま記録して取引の土台にしよう、という構想です。拡張熟議ってなに?大勢の人が一緒に話し合い、考える力を、デジタル技術で広げることです。一人の声を大勢に届ける技術は大きく進んだのに、一人が大勢の多様な声を聴くことはまだとても難しい、という問題に答えようとします。數位(シュウェイ)と ⿻ の記号ってなに?「數位(シュウェイ)」は台湾で「デジタル」を表す言葉です。書籍『Plurality』は、この言葉が人について使われると「複数」の意味にもなると説明し、「デジタル=複数」を一文字で示すために、四角が重なった記号 ⿻ を使います。権利 OS ってなに?スマホのアプリが OS(基本ソフト)の上でしか動かないように、民主主義も「権利」という土台の上でしか動きません。ネットで暮らす時間が長い今、その土台をデジタルの共通のしくみとして作り直そう、という書籍『Plurality』の考え方です。没入型共有現実(ISR)ってなに?VR や AR などを使って、離れた場所にいる人どうしが同じ仮想の空間に入り、多くの感覚で体験を一緒にすることです。書籍『Plurality』は、他人の立場を体で体験して、共感と共同体を育てる道具として描きます。生成基盤モデル(GFM)ってなに?ChatGPT や Claude のように、大量の文章や画像の例から学び、文章・画像・声を生み出す大きなプログラムのことです。書籍『Plurality』は、これをなるべく「AI」とは呼ばず、人々が違いをまたいで協働するのを助ける道具として扱います。社会市場ってなに?書籍『Plurality』が描く「市場の作り直し」です。市場は世界中の見知らぬ人どうしをいちばん広くつなぎますが、協働の形としてはいちばん単純です。その広さを保ったまま、みんなのためのもの・共有・人のつながりを、値段の仕組みの中に取り込もうとします。社会的差異をまたぐ協働ってなに?考え方・信仰・文化・立場などが違う人どうしが、その違いを消さずに一緒に何かを成し遂げることです。書籍『⿻ Plurality』は、これを支える技術を Plurality の定義そのものにしていて、違いは対立の火種であると同時に進歩の燃料だと考えます。財産と契約(⿻ 財産)ってなに?家を貸すと、借り手は「住む権利」だけを受け取り、「売る権利」や「家賃を受け取る権利」は大家に残ります。このように所有権は分けて持ち合えます。書籍『Plurality』は、この考えを計算能力やデータなどのデジタル資産に広げようと提案します。適応型管理行政ってなに?役所や大企業の「決まった書式と規則で処理する」しくみを、文章を生み出す AI などの技術で、利用者一人ひとりの言葉や事情に合わせて動けるようにする、という書籍『Plurality』の構想です。公平さのための規則は保ったまま、多様な人が制度をそのまま使えるようにします。
しくみと道具
違う意見の人どうしが協力するための、具体的な仕組みやソフトウェア。
Community Notes(コミュニティノート)ってなに?X(旧 Twitter)の利用者が、誤解を招きそうな投稿に補足説明(ノート)を付けるしくみです。多数決ではなく、ふだん評価が食い違う人どうしがそろって「役に立つ」と評価したノートだけが表示されます。Gov4Git(GitRules)ってなに?大勢でコードや文書を作るときに、誰がメンバーで、誰がどれだけ発言力を持ち、どの寄稿を採るかを記録して動かすオープンソースの道具です。書籍『Plurality』づくりで使われ、2024 年に GitRules と名前を変えました。Kami(地神・小さな AI の守り手)ってなに?一つの場所や一つの集まりだけに仕える小さな AI です。そこの人たちが中身を点検でき、直せて、いつでも引退させられます。神道の「その土地の神」の形を借りた、オードリー・タンによる比喩です。Plural Management Protocol(PMP)ってなに?大勢でひとつの本やソフトウェアを作るとき、「次に何をやるか」と「出てきた寄稿を採用するか」を、リーダー一人ではなく参加者みんなで決めるための運営ルールです。書籍『Plurality』そのものが、このルールで作られました。Polis(ポリス)ってなに?参加者が短い意見を書き、ほかの人の意見に「賛成・反対・パス」を押すだけのオンラインの対話ツールです。票の傾向から意見のグループを地図のように描き、グループをまたいで支持される意見を浮かび上がらせます。proof of personhood(人間であることの証明)ってなに?ネットで「このアカウントは本物の人間のもので、しかも一人一つしか持っていない」と示すしくみです。名前や住所は明かさず、「人間であること」と「ほかの誰とも別人であること」だけを証明します。Talk to the City(TTTC)ってなに?大量の自由な意見を AI に読ませ、似た論点ごとにまとめて点の地図と要約にする、無料で公開された道具です。米国の AI Objectives Institute が作り、台湾の話し合いでも、日本のブロードリスニングの始まりでも使われました。⿻ クレジット(プルラルクレジット)ってなに?書籍『Plurality』づくりで貢献した人に配られた、お金で売り買いしない点数です。誰がどれだけ本を作ったかの記録であり、課題の優先順位や寄稿の採否を決める投票に使う「コミュニティ通貨」でもあります。いどばたってなに?一人ひとりが AI とチャットで話し、その中身を AI が集めて論点や政策の直し案にまとめる、日本製の話し合いの道具です。デジタル民主主義2030(DD2030)が無料で公開し、チームみらいのマニフェストづくりで使われました。クアドラティック・ファンディングってなに?みんなの寄付に基金がお金を上乗せするとき、寄付の金額より「寄付した人の数」を重く見るルールです。1 人の大口より、多くの人の少額に支えられた事業ほど、たくさん上乗せを受けます。クアドラティック投票ってなに?全員に同じ数の「持ち点」を配り、好きな案に振り分けて投票するやり方です。1 票は 1 点、2 票は 4 点、3 票は 9 点と、票の数の 2 乗だけ点がかかるので、強い気持ちは示せても、一つに全部つぎ込むのは割高になります。ソウルバウンド・トークン(SBT)ってなに?他人に売ったり渡したりできないデジタルの証明書です。学歴・所属・出席・貸し借りの約束などを、本人の「魂(Soul)」と呼ぶ口座に結びつけます。2022 年にブテリン・ワイル・オールハーバーが、お金中心の Web3 を人間関係の上に組み直す「DeSoc(分散型社会)」として提案しました。データの尊厳ってなに?私たちがネットで生み出すデータは、AI や広告の原料として大きな価値を持ちます。それを企業にただで吸い上げさせず、作った人の「働き」として認め、労働組合のような中間の組織を通じて集団で交渉・管理しよう、という考え方です。ハーバーガー税ってなに?持ち主が「この値段なら手放してもいい」という額を自分で申告し、その額に比例した税を払う制度案です。誰かがその値段で買うと言えば売らなければなりません。正直な値付けと、眠っている資産が使いたい人に渡ることを同時に狙います。ブリッジング(橋渡し)ってなに?「ふだん意見が分かれる人たちが、そろって支持するもの」を上位に出す設計の考え方です。いいねの数や閲覧数で並べる代わりに、分断をまたぐ支持を重んじます。Community Notes や Polis が代表例です。向社会的メディアってなに?怒りや驚きを誘う投稿を広げて稼ぐ SNS の反対に、「この投稿はどの集団で受け入れられ、どこで意見が割れているか」を見せ、分断をまたいで共有できる投稿を優先し、そのつながりの価値に共同体がお金を払う、という SNS の作り方の提案です。広聴AI(kouchou-ai)ってなに?何千件もの自由記述を表のファイルで読み込ませると、AI が似た意見をまとめて「意見の地図」と要約を作ってくれる、日本製の無料ソフトです。米国の Talk to the City をもとに、デジタル民主主義2030(DD2030)が作りました。液体民主主義ってなに?議題ごとに「自分で投票する」か「信頼する誰かに票を預ける」かを選べる仕組みです。預かった人はさらに別の人へ預け直せ、預けた本人はいつでも取り消して自分で投票できます。
実践と事例
台湾や日本などで、実際に使われた例。
AI Objectives Institute(AOI)とは?どんな団体?AI を、人間の主体性(自分で考え、決め、行動する力)を守り強める方向へ導くことを掲げる米国の非営利研究団体です。大量の意見を AI で地図にする道具 Talk to the City を作りました。この道具は台湾の話し合いで使われ、日本のブロードリスニングの出発点になりました。AI 政党・デジタル政党にはどんなものがある?技術で政治を開くと掲げる政党には、党員のネット投票を軸にした欧州の「デジタル政党」、AI を党の顔にしたデンマークの The Synthetic Party、AI を声の聞き取りに使う日本のチームみらいなどがあります。資料に沿って並べます。Alignment Assemblies(アライメント集会)ってなに?「AI はどう振る舞うべきか」を、企業や専門家だけで決めずに、ふつうの市民が集まって話し合い、その結果を AI 企業や政府の決定に届ける試みです。2023 年に米国の非営利団体が始め、台湾政府も加わりました。Cofacts(真的假的)ってなに?台湾の市民が、LINE などで回ってきた怪しいメッセージをチャットボットに転送すると、ボランティアが調べて書いた回答が返ってくる、誰でも参加できるファクトチェックの仕組みです。市民技術者の集まり g0v から生まれ、集まったデータは誰でも使えます。Collective Intelligence Project(CIP)とは?どんな団体?AI のように社会を大きく変える技術の行き先を、一部の企業や専門家ではなく、一般の人々の話し合いで決められるようにする仕組みを研究し、実際に試す非営利団体です。2022 年の終わりにディヴィヤ・シッダールトとサフロン・ホアンが作りました。g0v(零時政府)ってなに?2012 年に台湾のプログラマーたちが始めた、市民のオープンソース・コミュニティです。政府のサイトを自分たちで「作り直して」見やすく公開し、定期的なハッカソンで市民の問題に取り組みます。vTaiwan、マスク地図、Cofacts などを生みました。RadicalxChange(RxC)とは?どんな団体?経済学者グレン・ワイルが本『ラディカル・マーケット』(2018 年)のあとに作った国際的な非営利団体と、その周りの運動です。投票やデータの新しい仕組みを研究し、実際に試してきました。書籍『Plurality』の広報も支えています。The Synthetic Party ってなに?2022 年にデンマークで作られた「AI が動かす」と称する政党です。小さな政党の文章で学習したチャットボットを党の顔にし、選挙に行かない人々を代表すると説明しています。アートと研究の実験でもあり、書籍『Plurality』も例に挙げます。vTaiwan ってなに?台湾の市民ハッカー集団 g0v が 2014 年末に始めた、法律や規制の作り方を市民・専門家・政府が一緒に話し合う場です。あわせて、政府が運営する提案と意見募集のサイト「Join」も紹介します。ひまわり学生運動ってなに?2014 年 3〜4 月、中国との貿易協定が十分な審議なしに通されようとしていると抗議した台湾の学生と市民が、国会(立法院)を 3 週間あまり占拠した運動です。市民技術者の集まり g0v がその場を中継・記録し、のちの台湾のデジタル民主主義の出発点になりました。アラビア語圏での Plurality の広がりってなに?アラビア語圏では、書籍『Plurality』の訳も、本やワイルを扱う記事も見つかっていません。報道に出るのは台湾の大臣としてのタンです。本の側では、UAE やサウジアラビアが、電子政府で民主国を上回る権威主義の国の例として出ます。イスラエルでの Plurality の広がりってなに?イスラエルでは、書籍『Plurality』のヘブライ語訳も、本やワイルを扱うヘブライ語の報道も見つかっていません。見つかったのは、タンへの取材や紹介と、X の Community Notes の報道です。訳が無いとまでは言い切れません。イタリアでの Plurality の広がりってなに?イタリアでは、有志が書籍『Plurality』を GitHub でイタリア語に訳し始めましたが、36 のファイルのうち 14 で止まっています。台湾との縁は本より前からあり、台湾の g0v をまねた市民団体の活動や、五つ星運動の投票の仕組みとの対比で語られてきました。インドネシアでの Plurality の広がりってなに?インドネシアでは、書籍『Plurality』のインドネシア語訳も、本を取り上げた報道も見つかっていません。目立つのはタンの人物紹介と台湾の偽情報対策の報道で、ファクトチェックの協働や住民参加の計画の制度は、本とは別に前からありました。ウクライナでの Plurality の広がりってなに?書籍『Plurality』のウクライナ語訳は、公式の一覧に名前があるだけで本文はありません。逆に本の側が、ウクライナの政府アプリ Diia とデジタル変革相を例に挙げます。タンも侵攻後の Diia や情報の発信を何度も語りました。エストニアでの Plurality の広がりってなに?書籍『Plurality』は、エストニアを「最もデジタル化された民主政府」とよく言われる国として挙げます。けれども、エストニア語訳は見つかりません。現地で目立つのは、市民会議 Rahvakogu と、そこから生まれた市民発議サイトです。オランダ・フランデレンでの Plurality の広がりってなに?オランダでは書籍『Plurality』より先に、2019 年に訪れたタンと、台湾で使われた意見集約の道具 Polis が伝わりました。自治体の試行が政府の Polis NL に育つ一方、本の蘭訳は個人による一部の訳にとどまっています。ギリシャでの Plurality の広がりってなに?書籍『Plurality』のギリシャ語訳は、ギリシャの開発者が 2025 年に前付けだけを訳したところで止まっています。それでも公式サイトはギリシャ語をトップの言語の一つにしています。本を扱ったギリシャ語の報道は見つかっていません。サイボウズとは?書籍『PLURALITY』とどう関わる?仕事の連絡や情報共有の道具(グループウェア)を作る日本のソフトウェア会社です。自社の出版レーベル「サイボウズ式ブックス」から、2025 年 5 月に書籍『PLURALITY』の日本語版を出しました。このサイトの運営者の勤め先でもあります。シビックテックってなに?市民が自分たちの手でテクノロジーを使い、行政と組んで地域や社会の問題を解いたり、政治に参加しやすくしたりする活動です。米国の Code for America、台湾の g0v、日本の Code for Japan が代表例です。スウェーデンでの Plurality の広がりってなに?スウェーデンでは、書籍『Plurality』の訳は見つからず、本を取り上げた報道もほとんどありません。目立つのは、タンが 2025 年に「もう一つのノーベル賞」と呼ばれる Right Livelihood 賞を受けたときの報道と講演です。スペイン語圏での Plurality の広がりってなに?書籍『Plurality』のスペイン語訳は、2026 年 10 月の時点で見つかっていません。それでもタンはチリ・メキシコ・スペインで台湾の経験を語りました。逆に、台湾の参加の仕組みの一部はマドリードの道具から来た、とタン自身が述べています。タイでの Plurality の広がりってなに?タイでは 2024 年に、バンコクの訳者が書籍『Plurality』をタイ語に全訳し、公式サイトで読めます。紙の本は見つかっていません。本より先に、タンの来タイから生まれたファクトチェックの Cofact と、台湾との交流がありました。チェコでの Plurality の広がりってなに?チェコでは書籍『Plurality』の訳は見つからず、本やワイルの報道もほとんどありません。目立つのは、2020 年の上院議長の訪台から続く台湾との往来です。タンは主に、その中の偽情報対策の相手として語られています。チームみらいってなに?AI エンジニアの安野貴博が 2025 年に作った日本の政党です。有権者が AI と対話してマニフェストに意見を出せる仕組みなど「デジタル民主主義」を掲げ、Plurality を指針の一つに挙げています。2026 年の衆院選で 11 議席を得ました。デジタル民主主義2030(DD2030)ってなに?市民の声が政治や行政に届くための道具を、誰でも無料で使えるオープンソースで作る日本の有志コミュニティです。2025 年 1 月に安野貴博と鈴木健が始め、広聴AI・いどばた・Polimoney を開発しています。特定の党派に肩入れしない中立を掲げています。デンマークでの Plurality の広がりってなに?デンマークと書籍『Plurality』の目に見える接点は、本が例に挙げる AI の政党 The Synthetic Party がほぼ唯一です。デンマーク語の訳や書評は見つかっていませんが、市民が技術を話し合う場づくりなど、重なる土台はあります。トルコでの Plurality の広がりってなに?トルコでは 2026 年 9 月に、一人の開発者が書籍『Plurality』の全章をトルコ語に訳して公開しました。後半は AI と一緒に訳したと記録にあります。ただ、この本を論じたトルコ語の書評や報道は、まだ見つかっていません。ドイツの市民ハッカソン「Deutschland, was geht?」ってなに?ドイツの連邦機関 SPRIND と連邦デジタル省が 2026 年に開いた市民ハッカソンです。台湾の総統杯ハッカソンを手本に、役所への不満の声 2 万 7,707 件から 13 の論点を作り、市民がクアドラティック投票で優先順位をつけました。ドイツ語圏での Plurality の広がりってなに?ドイツ・オーストリア・スイスでは、有志 5 人が書籍『Plurality』をドイツ語に訳し、2026 年に独訳『Pluralität』が出ました。タンはベルリンやチューリッヒで繰り返し語り、ドイツの連邦機関は台湾を手本にクアドラティック投票を使いました。ノルウェーでの Plurality の広がりってなに?ノルウェーでは有志が、書籍『Plurality』をいったんやさしい英語に直してからノルウェー語に訳す、二段階の方法で訳しています。下訳は AI で、35 章のうち 8 章まで進みましたが、まだ公開されていません。ハンガリーでの Plurality の広がりってなに?ハンガリーでは、書籍『Plurality』のハンガリー語訳は見つからず、タンやワイルの報道もわずかです。重なるのは、台湾の偽情報対策を学ぼうとする市民団体の動きと、ブダペスト市の抽選の市民会議や参加型予算です。フィンランドでの Plurality の広がりってなに?フィンランドでは書籍『Plurality』の訳も、タンやワイルの報道もほとんど見当たりません。目立つのは、基金の Sitra が意見調べの道具 Polis を 2023 年に持ち込み、2025 年に Voxit と改名した流れです。フランス語圏での Plurality の広がりってなに?フランス語圏では、書籍『Plurality』の仏訳は 2023 年の部分的な草稿で止まっています。その一方で、オードリー・タンは 2016 年からパリで紹介され、仏の団体 Make.org と組み、国民議会でも証言しました。フランスの「大討論」や市民会議と並べて語られてきました。ベトナムでの Plurality の広がりってなに?ベトナムでは書籍『Plurality』のベトナム語訳は見つからず、本を論じた記事もほとんど見つかっていません。国内の新聞はワイルを AI の会合に来た学者として紹介し、タンと台湾の実践は主に国外のベトナム語媒体が伝えています。ペルシア語圏での Plurality の広がりってなに?ペルシア語圏で書籍『Plurality』がどう読まれているかは、ほとんどわかりません。訳は見つからず、タンやワイルを扱う報道も取れませんでした。見えるのは Community Notes の報道と、検閲の回避が話題の対話です。ポルトガル語圏での Plurality の広がりってなに?書籍『Plurality』のポルトガル語訳は、2026 年 10 月の時点でありません。ブラジルでは、弁護士のロナルド・レモスが新聞のコラムで本やクアドラティック投票を紹介し、2024 年にはタンとワイルが国を訪れました。参加型予算の生まれた国として、台湾との縁も語られています。ポーランドでの Plurality の広がりってなに?ポーランドでは書籍『Plurality』の訳が見つからず、本を名指す議論もわずかです。2022 年に RadicalxChange がウッチとワルシャワで催しを開きました。抽選の市民パネルなど、本と重なる制度は以前からありました。ラトビアでの Plurality の広がりってなに?ラトビアでは書籍『Plurality』の訳も、タンやワイルの報道も見つかりません。重なるのは、1 万筆で議会に届く市民発議サイト ManaBalss.lv、リガにある NATO の偽情報対策の拠点、台湾との往来という三つの文脈です。リトアニアでの Plurality の広がりってなに?リトアニアでは書籍『Plurality』の訳も、ワイルの報道も見つかりません。目立つのは、2021 年の台湾代表処の開設と中国の反発、2023 年のタンの訪問、そして偽情報に立ち向かう市民「elfai」(エルフ)です。ロシア語圏での Plurality の広がりってなに?ロシア語圏では、書籍『Plurality』のいまの版のロシア語訳は見つかっていません。届いているのは構想の文書の訳や、暗号資産のメディア、ブテリンの発信です。国がつくった「参加」の仕組みとの違いが、比べる手がかりです。中国語圏での Plurality の広がりってなに?『Plurality』の中国語版として見つかったのは、台湾の繁体字版《多元宇宙》だけです。中国本土では本そのものより、ワイルの前著『ラディカル・マーケット』やクアドラティック投票の仕組みを通して、web3 の集まりや一部の学者が論じてきました。台湾での Plurality の広がりってなに?台湾では書籍『Plurality』は、共著者の唐鳳がつけた訳語「多元宇宙」で知られています。この語は本より先に、2022 年に新しい役所に置かれた「多元宇宙科」の名で広まり、わかりにくいと批判も受けました。中文版は 2024 年 7 月に出ました。台湾のデジタル民主主義ってなに?2014 年のひまわり運動のあと、台湾では市民のプログラマー集団 g0v と政府が手を組み、政策の話し合い、データの公開、デマ対策、コロナ対応をデジタルの道具で進めてきました。書籍『Plurality』はこれを、世界でいちばん進んだデジタル民主主義の実例として描きます。安野貴博の 2024 年都知事選ってなに?2024 年 7 月の東京都知事選で、AI エンジニアの安野貴博が、有権者の声を AI でまとめて地図にし、ネットで公開したマニフェストを選挙中に書き換え、AI の分身「AIあんの」に質問へ答えさせた選挙運動です。15 万 4,638 票で 5 位でした。慶應義塾大学の X Dignity センターと PRANCE とは?慶應義塾大学の研究所 KGRI の 2 組織です。X Dignity センターは書籍『Plurality』日本語版の発売記念イベントを共催し、PRANCE は「なめらかな社会」と Plurality の実現を掲げ 2026 年にできました。日本での Plurality の広がりってなに?書籍『Plurality』は、日本では 2023 年ごろから有志が読み、訳し、イベントを開くことで広まりました。2025 年 5 月には日本語版が出て、読書会や書評が各地に広がり、政党の政策集にも名前が載るようになりました。日本の Plurality・デジタル民主主義の年表2023 年に Plurality を掲げる催し「Plurality Tokyo」が東京で開かれ、2024 年の都知事選をきっかけに、東京都の長期戦略、オープンソースの「広聴AI」、日本語版の刊行、新しい政党の国会進出へと広がりました。その流れを日付順にたどる年表です。東京都「シン東京2050」のブロードリスニングってなに?東京都が 2024 年 11〜12 月に「2050 年代の東京」への意見を募り、集まった約 2 万 8 千件を AI で分類・可視化して、長期計画の政策の分け方を組み直した取り組みです。DD2030 の有志が書いたブロードリスニング本は、行政がブロードリスニングを使った代表例として取り上げています。自治体のブロードリスニングってなに?町や県が、アンケートの自由記述など住民の声を「広聴AI」などの道具で自動的にまとめ、住民が全体として何を言っているかを見える化する試みです。2025 年に香川県宇多津町・岩手県・東京都渋谷区・広島県などで行われました。韓国での Plurality の広がりってなに?韓国では『Plurality』の韓国語の商業版はまだ確認できず、全章を読める訳は非公式の機械翻訳だけです。そのかわり、タンの来韓講演や、ワイルの前著『래디컬 마켓』、韓国自身の熟議の制度を通して、考え方が少しずつ紹介されてきました。
背景と周辺
Plurality と並べて語られる考え方や、対になる思想。
AI の未来をめぐる論争(AI 2027 など)ってなに?「人間より賢い AI はいつ来て、世界はどうなるのか」を描いた予測やシナリオが 2024〜2026 年に相次ぎ、大きな論争になりました。Plurality の側の人々は、一つの AI の行方より「社会がどう備え、誰が舵を握るか」を問う形で応じています。d/acc(防御的な加速)ってなに?技術は速く進めるけれど、攻撃より防御を、権力の集中より分散を助ける技術を選んで先に進めよう、という考え方です。イーサリアムの創設者ヴィタリック・ブテリンが 2023 年に名づけました。Plurality への批判にはどんなものがある?書籍『Plurality』とその実践には、「技術で政治は解けない」「台湾の成功例は続いていない」「楽観的すぎる」「日本では看板や教条になりかねない」といった批判が、英語・日本語・中国語で出ています。誰がいつ何を言い、どう応答されたかをまとめます。Radical Markets(ラディカル・マーケット)ってなに?法学者エリック・ポズナーと経済学者グレン・ワイルが 2018 年に出した本です。「私有財産」や「一人一票」は人間が設計したしくみなので作り直せる、と主張し、5 つの大胆な改革案を出しました。ワイルは後に『Plurality』へ進み、この本の考え方を自分で批判しています。「三つの道」ってなに?技術が進んだ先の社会の行き先を、AI と専門家が計画する「テクノクラシー」、暗号技術で個人を自由にする「リバタリアニズム」、違う人どうしの協力を技術で支える「⿻(デジタル民主主義)」の三つに分ける、書籍『Plurality』の見取り図です。本は三つ目を選びます。なめらかな社会ってなに?鈴木健が 2000 年代に考え、2013 年の本にまとめた社会の姿です。人びとが敵と味方にきっぱり分かれず、複雑な世界を複雑なまま生きられる社会を目指します。価値がさかのぼって伝わるお金 PICSY や、1 票を分けて託せる分人民主主義を含みます。デジタルネイチャー(計算機自然)ってなに?メディアアーティストで研究者の落合陽一が 2015 年ごろから唱える世界観です。コンピューターが画面の中の道具であることをやめ、光・音・物・身体と溶けあって「自然」のような環境になった状態を指します。Plurality とは「主役は人間か環境か」で分かれる、と本人名義の文章が整理しています。ネットワーク国家ってなに?考えの近い人々がまずネット上で強くまとまり、資金を集めて世界各地に土地を持ち、やがて既存の国から国として認められる、という新しい国のつくり方です。起業家バラジ・スリニバサンが 2022 年の本で唱えました。Plurality の側は「抜け出すこと」に偏っていると批判します。一般意志2.0ってなに?哲学者の東浩紀が 2011 年に出した本と構想です。ネットに残る人々の行動や発言の痕跡から「社会全体の意志」を読み取り、政治に生かせると論じました。のちに東自身がネットへの期待を取り下げ、AI 任せの政治を批判しています。交換様式(柄谷行人)ってなに?日本の哲学者・柄谷行人が、社会を「人と人が何をどう交換しているか」で四つに分けた理論です。贈与とお返し、支配と保護、お金と商品、そしてまだ実現していない第四の形です。オードリー・タンはこの第四の形を「交換様式 X」と呼び、強い影響を公言しています。分人ってなに?一人の人を「これ以上分けられない個人」ではなく、いくつもの部分に分けられるものとしてとらえる考えです。書籍『Plurality』は、社会学者ジンメルの考えと、鈴木健が哲学者ドゥルーズから着想した考えの二つの流れで紹介します。失われた道(The Lost Dao)ってなに?インターネットの元をつくった 1960〜70 年代の米国の研究者たちは、コンピュータで人がつながり、一緒に考え、一緒に治めることを目指しました。けれども公的な投資が細るうちに、その志の一部は作られないまま忘れられました。書籍『Plurality』はこれを「失われた道」と呼びます。書籍『Plurality』にはどんな版と翻訳がある?『Plurality』は GitHub と plurality.net で誰でも無料で読める CC0 の本です。英語と繁体中文が元になる版で、紙の本は英語・繁体中文(2024 年)と日本語(2025 年)が出ました。ほかの言語は有志の翻訳で、完訳から空のものまであります。未踏(IPA 未踏事業)ってなに?国の機関 IPA が 2000 年から続けている、若く突出したソフトウェアの作り手を個人単位で選び、担当者(PM)がつきそって育てる事業です。日本で Plurality やブロードリスニングに関わる人の中にも、その修了生や関係者が何人もいます。超知能(スーパーインテリジェンス)ってなに?ほぼすべての分野で、最も賢い人間を大きく上回る知能のことです。多くの AI 企業が目標に掲げ、同時に人類を脅かしうるものとして恐れられています。Plurality の側は「超知能はすでに、協働する私たち自身だ」と読み替えます。
人物
この考え方を作り、広め、論じてきた人たち。
E・グレン・ワイル(E. Glen Weyl)ってどんな人?アメリカの経済学者で、書籍『⿻ Plurality』をオードリー・タンと書いた主な書き手です。気持ちの強さまで票に表せる「クアドラティック投票」などを考えた一人で、RadicalxChange の創設者でもあります。g0v・vTaiwan の人々ってどんな人たち?台湾のデジタル民主主義は、オードリー・タン一人の仕事ではありません。市民の技術者の集まり g0v や、市民参加の場 vTaiwan、デマ検証の Cofacts、マスク地図を動かした、市民ハッカー・公務員・研究者たちを紹介します。J・C・R・リックライダー(J. C. R. Licklider)ってどんな人?1960 年代に米国の ARPA で情報処理技術局を率い、のちのインターネットの種をまいた心理学者です。「人間とコンピュータの共生」を唱えました。書籍『Plurality』は 3-3 章「失われた道」の中心人物に据えています。アヴィヴ・オヴァジャ(Aviv Ovadya)ってどんな人?意見が分かれる人たちがそろって支持するものを上に出す「ブリッジング(橋渡し)」の考えに名前をつけ、SNS や AI の方針を市民の話し合いで決める方法を研究・提案している技術者・研究者です。エレーヌ・ランデモア(Hélène Landemore)ってどんな人?くじ引きで選ばれたふつうの市民が話し合って決める民主主義を研究し、提唱しているイェール大学の政治学者です。オードリー・タンとともに、AI の統治に市民会議を使う提案をしています。オードリー・タン(唐鳳)ってどんな人?自らを「シビックハッカー」と紹介する台湾のプログラマーで、台湾の初代デジタル発展部長を務めた人です。経済学者グレン・ワイルと書籍『⿻ Plurality』を書きました。2026 年 9 月の時点では、AI を地域のケアに役立てる「6-Pack of Care」に取り組んでいます。キャロライン・グリーン(Caroline Green)ってどんな人?英国オックスフォード大学 AI 倫理研究所の研究者で、お年寄りや障害のある人の暮らしを支える「ソーシャルケア」を研究してきた人です。オードリー・タンとともに、AI を「ケア」の考え方で治める「6-Pack of Care」を作りました。コリン・メギル(Colin Megill)ってどんな人?大勢の意見を、短い意見への「賛成・反対」の投票から地図にする道具 Polis を作った一人です。Polis は台湾の vTaiwan で使われ、書籍『Plurality』でも話し合いを技術で助ける代表例として出てきます。サム・アルトマン(Sam Altman)ってどんな人?ChatGPT を作った OpenAI の共同創業者・CEO で、虹彩で ID を配る Worldcoin(現 World)の共同創業者です。書籍『Plurality』は「テクノクラシー」の代表として取り上げ、Worldcoin も批判します。ジャロン・ラニアー(Jaron Lanier)ってどんな人?1980 年代に「バーチャルリアリティ(VR)」の分野を切り開いた計算機科学者・作家です。データを作った人と結びつけ、ときには対価を払おうという「データの尊厳」を唱え、グレン・ワイルと共著を重ねてきました。書籍『Plurality』は源流の一人として扱っています。ゾーイ・ヒッツィグってどんな人?多くの人が少しずつ寄付したものほど大きく上乗せして配る「クアドラティック・ファンディング」の最初の論文を、ブテリン、ワイルと書いた研究者です。書籍『Plurality』では編集に加わり、仕組み設計への批判の論文も引かれています。ダニエル・アレン(Danielle Allen)ってどんな人?アメリカの政治哲学者で、ハーバード大学の教授です。違いをまたいで人どうしがつながる「つながった社会」の考えを書き、書籍『Plurality』は Plurality の三つの柱の一つをこの考えに結びつけています。研究ネットワーク GETTING-Plurality を率いています。ダリオ・アモデイ(Dario Amodei)ってどんな人?Claude を作る Anthropic の共同創業者・CEO です。AI がうまくいった未来を描きつつリスクを論じ、2026 年 9 月には AI の能力を高めるペースを落とそうと呼びかけました。Plurality の側は市民の関与を求めています。テッド・ネルソン(Ted Nelson)ってどんな人?文章どうしをリンクでつなぐ「ハイパーテキスト」という言葉を名付けた人です。理想の情報ネットワーク「ザナドゥ計画」に生涯をささげ、WWW の設計の欠陥を警告し続けました。書籍『Plurality』は 3-3 章でその歩みを描きます。ディヴィヤ・シッダールト(Divya Siddarth)ってどんな人?AI の行き先を、一部の企業や専門家だけでなく一般の人々の話し合いで決めるための仕組みを作っている研究者・実践家です。非営利団体 Collective Intelligence Project(CIP)の共同創設者で、ワイルやタンとの共著が多く、書籍『Plurality』も彼女の論文を引いています。ハンナ・アーレントってどんな人?『人間の条件』(1958)や『革命について』(1963)を書いた思想家です。書籍『Plurality』は題の「plurality(多元性)」の意味の一つをアーレントに結びつけ、アレン、タンと並ぶ「三人の思想家」に置いています。バラジ・スリニバサン(Balaji Srinivasan)ってどんな人?2022 年の本『The Network State』で、ネットでまとまった共同体が土地を持ち、やがて国として認められる「ネットワーク国家」を唱えた起業家です。書籍『Plurality』はリバタリアニズムの代表的な論者の一人に挙げています。ピーター・ティール(Peter Thiel)ってどんな人?PayPal を創業者の一人として構想した米国の投資家です。自由と民主主義が両立するとはもう思わないと書き、技術で政治の外に自由の場を作ろうと論じてきました。書籍『Plurality』はリバタリアニズムの中心人物として扱います。プジャ・オールハーバーってどんな人?2022 年にグレン・ワイル、ヴィタリック・ブテリンと論文「分散型社会(DeSoc)」を書いた人です。お金中心の Web3 に、人と人の信頼を表すしくみを持ち込もうと提案しました。書籍『Plurality』の執筆にも加わっています。ヘンリー・ジョージ(Henry George)ってどんな人?『進歩と貧困』(1879 年)で知られる 19 世紀アメリカの政治経済学者です。土地の値上がりは社会が生んだものだとして「単一税」を唱えました。書籍『Plurality』はジョージを「⿻ 社会科学の創始者」と呼びます。ペタル・マイムンコフってどんな人?書籍『Plurality』を大勢で書き、運営するための仕組み Gov4Git(のちの GitRules)と Plural Management Protocol の技術面を担った技術者です。当時は Protocol Labs の研究者でした。マーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)ってどんな人?Netscape と投資会社 a16z の共同創業者です。技術と市場による成長こそ進歩だと説く『技術楽観主義マニフェスト』(2023 年)を書きました。書籍『Plurality』は 2-0 章の冒頭にその一節を掲げています。ムスタファ・スレイマン(Mustafa Suleyman)ってどんな人?DeepMind の共同創業者で、2024 年から Microsoft AI の CEO を務めるイギリスの起業家です。著書『The Coming Wave』(邦題『AIを封じ込めよ』)で、強力な技術を「封じ込める」必要を説いています。ユヴァル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)ってどんな人?『サピエンス全史』で知られる歴史家・哲学者です。『NEXUS』では情報ネットワークの歴史から AI と民主主義の未来を論じました。2020 年にはオードリー・タンと、技術が人間を「ハック」する時代について対談しています。レオポルド・アッシェンブレナー(Leopold Aschenbrenner)ってどんな人?OpenAI の Superalignment チームの初期メンバーだった研究者です。2024 年の連作エッセイ『Situational Awareness』で、2027 年ごろの AGI と、米中の超知能の競争を論じました。ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)ってどんな人?ブロックチェーン「イーサリアム」を作った人です。グレン・ワイルらとクアドラティック・ファンディングなどの論文を共著し、書籍『⿻ Plurality』には推薦文を寄せ、編集にも加わりました。本の長い書評も書いています。中山心太ってどんな人?機械学習の技術者・経営者で、ネットでは「ところてん」の名で知られます。大勢の意見を AI で整理する「広聴AI」のメンテナで、本『政治・自治体・企業に広がるブロードリスニング』の取りまとめ役です。安野貴博ってどんな人?AI エンジニア・起業家・SF 作家です。2024 年の東京都知事選で、AI とブロードリスニングを使って有権者の声を聞く選挙をしました。翌年に政党「チームみらい」をつくって党首になり、参議院議員を務めています。書籍『Plurality』にも事例として出てきます。山形浩生ってどんな人?評論家・翻訳家・開発コンサルタントで、ピケティ『21世紀の資本』などの訳者です。書籍『Plurality』の日本語版『PLURALITY』(サイボウズ式ブックス、2025)を翻訳しました。訳は読者のオンラインの集まりと並行して進みました。李舜志ってどんな人?法政大学社会学部の准教授で、書籍『Plurality』を一般の読者向けに解説した新書『テクノ専制とコモンへの道』(2025)の著者です。ワイルやタンとの対談、関連する本や論考の紹介を多く手がけています。東浩紀ってどんな人?日本の哲学者・批評家で、出版社ゲンロンの創業者です。ネットで民意を集める構想を描いた『一般意志2.0』(2011)の著者で、のちに AI で政治を自動化できるという期待を戒めました。Plurality に賛成しつつ、政治との緊張を問いかけています。柄谷行人ってどんな人?社会を「人と人が何をどう交換しているか」で読み解く日本の哲学者です。書籍『Plurality』は骨組みの一つが『世界史の構造』に触発されたと明記し、オードリー・タンは RadicalxChange の「X」は柄谷の交換様式の X だと語ります。落合陽一ってどんな人?メディアアーティストで研究者、「デジタルネイチャー(計算機自然)」を唱える人です。オードリー・タンと何度も対談し、Plurality との共通点と違い(主役は人間か環境か)を自分の名義の文章で整理しています。西尾泰和ってどんな人?サイボウズ・ラボの研究者です。書籍『Plurality』英語版の編集に協力し、日本語版の出版プロジェクトのリーダーを務めました。安野貴博の都知事選の技術支援や、大勢の声を AI で整理する「広聴AI」の開発にも関わっています。鈴木健ってどんな人?本『なめらかな社会とその敵』(2013)の著者で、貨幣のしくみ PICSY や「分人民主主義」を考えた研究者・起業家です。書籍『Plurality』の中で紹介され、日本語版の解説を書き、安野貴博とデジタル民主主義2030 を立ち上げました。関治之ってどんな人?Code for Japan 代表理事で、日本のシビックテックの中心人物です。Plurality Tokyo の発起人の一人で、安野貴博に Talk to the City を紹介し、デジタル民主主義2030 のボードメンバーも務めています。高嘉良(clkao)ってどんな人?台湾のプログラマーで、市民が政府のウェブサイトを作り直して見せる運動「g0v(零時政府)」を 2012 年に仲間と始めた一人です。書籍『Plurality』は g0v の創設者としてこの人の名前を挙げています。