李舜志ってどんな人?
書籍『Plurality』は分厚く、内容も難しい本です。日本でこの本を読みたい人のために、入り口になる新書を書いた研究者がいます。
ひとことで言うと
李舜志(リ・スンジ、Lee Sunji)は、1990 年に神戸市で生まれた研究者です。東京大学大学院教育学研究科で博士(教育学)を取り、法政大学社会学部の准教授を務めています[1]。
2025 年 6 月に、集英社新書『テクノ専制とコモンへの道 民主主義の未来をひらく多元技術PLURALITYとは?』を出しました[2]。書籍『Plurality』を日本に紹介する役の一人です。→ 日本での Plurality の広がり
Plurality とのかかわり
入門書を書いたわけ。 李は、前著『ベルナール・スティグレールの哲学』を書いていた 2023 年の年末に、ウェブで公開されていた英語版の執筆過程を知り、追いかけたと語っています。技術を切り捨てずに社会の豊かさにつなげる点に新しさを感じた一方、内容や表現が少し難しく、共著なので一本のストーリーが見えにくいとも感じました。そこで、普通の人にも届くように、わかりやすく一本の筋で説明する本を書いた、という趣旨です[3]。
新書の中身。 新書は、意見を集めて合意を見える形にするツール Polis(Pol.is)や、安野貴博 のチームが 2024 年の東京都知事選で試みた ブロードリスニング などを例に解説しています[3]。
著者との対談。 集英社新書プラスで、グレン・ワイル との対談(前後編、2025 年 5 月 30・31 日公開)[4][5] と、オードリー・タン との対談(2025 年 6 月 6 日公開)[6] を行いました。
思想の背景の紹介。 ダイヤモンド・オンラインのインタビューで李は、Plurality とジョン・デューイ、柄谷行人、ダロン・アセモグルとの関係を解説しました[7]。本はデューイやジンメルといった思想家の影響を受けているので、思想の面をもっと深める必要がある、とも述べています[8]。
大学の授業で Pol.is。 同じインタビューで李は、Pol.is を大学の授業で使う試みを紹介しています。タンの言う「シビル・マッスル」(市民の筋肉、信頼を積み重ねる力)を鍛える、という考え方です[8]。
翻訳と紹介。 李は note で、タンの講演「ケアの6パック:マニフェスト」の日本語訳を公開しました[9]。→ 6-Pack of Care。ほかに、ダニエル・アレン の『Justice by Means of Democracy』のレビュー[10]、タンやワイルらの 向社会的メディア の考えの紹介[11]、ワイルと思想家カーティス・ヤーヴィンの討論の要約[12]、Plurality を深く理解するための本のリスト[13] なども書いています。
新書の受け止め。 新書には、橋爪大三郎の書評(初出は毎日新聞、2025 年 9 月)があります[14]。
主な考え
テクノ専制とコモン。 新書の題が示す対比です。集英社新書プラスの対談の導入文は、世界が支配する側とされる側に分かれつつあり、その武器がインターネットと AI だ、という問題意識を示しています。AI による大失業とベーシックインカムという筋書きとは別の道として、Plurality が紹介されています[15]。
技術に「ハンドルをつける」。 李は note の論考で、テクノロジーの進化を加速させるのでも減速させるのでもなく、「ハンドルをつける」べきだというタンの主張を、自分なりに補って考えています。ただし、デジタル民主主義そのものがハンドルを「握る」のではなく、握るのは市民一人ひとりで、デジタル民主主義はそのための力を市民に与えるものだ、と注意を促しています[16]。
長期主義への批判。 AGI(汎用人工知能)やシンギュラリティの議論の背景にある、長期主義や効果的利他主義の問題点を紹介しています[17][18]。→ AI の未来をめぐる論争
もっと知りたい人へ
- ダイヤモンド・オンラインの李舜志インタビュー 第 1 回(日本語・インタビュー、2025-08-14)— https://diamond.jp/articles/-/370383 (続き — https://diamond.jp/articles/-/370388 、https://diamond.jp/articles/-/370401 )
- 『テクノ専制とコモンへの道』の書誌(日本語・本)— https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I034122541
- ワイル × 李の対談 前編(日本語・対談、2025-05-30)— https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/e_lee/30554
- タン × 李の対談(日本語・対談、2025-06-06)— https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/audrey_lee/30659
- 李舜志「テクノロジーにハンドルをつける:多元的未来論序章」(日本語・論考、2025-06-14)— https://note.com/chic_borage2648/n/n3f0a9bdbee1a
- 李舜志「Pluralityを深く広く理解するためのブックリスト」(日本語・本のリスト)— https://note.com/chic_borage2648/n/n4f612e10d5e5
出典
- 集英社新書プラス「日本の政治に絶望している人たちへ」末尾のプロフィール(2025-05-30)— https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/e_lee/30554
- 国立国会図書館サーチ『テクノ専制とコモンへの道』— https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I034122541
- ダイヤモンド・オンライン 李舜志インタビュー 第 1 回(2025-08-14)— https://diamond.jp/articles/-/370383
- 集英社新書プラス ワイル × 李 前編(2025-05-30)— https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/e_lee/30554
- 集英社新書プラス ワイル × 李 後編(2025-05-31)— https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/e_lee/30559
- 集英社新書プラス タン × 李(2025-06-06)— https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/audrey_lee/30659
- ダイヤモンド・オンライン 李舜志インタビュー 第 2 回(2025-08-15)— https://diamond.jp/articles/-/370388
- ダイヤモンド・オンライン 李舜志インタビュー 第 3 回(2025-08-16)— https://diamond.jp/articles/-/370401
- オードリー・タン「ケアの6パック:マニフェスト」日本語訳(2025-09-13)— https://note.com/chic_borage2648/n/nc2fe44693ece
- ダニエル・アレン Justice by Means of Democracy レビュー(2025-06-28)— https://note.com/chic_borage2648/n/n36443feaf466
- 「SNSの真の問題とは? プロソーシャルなメディアエコシステム構築のために」(2025-07-06)— https://note.com/chic_borage2648/n/nd766c8101e79
- 「アメリカはCEO独裁によって統治されるべきか?――カーティス・ヤーヴィンVSグレン・ワイル」要約&レビュー(2025-09-05)— https://note.com/chic_borage2648/n/ne5e7100346b9
- 「Pluralityを深く広く理解するためのブックリスト」(2025-05-24)— https://note.com/chic_borage2648/n/n4f612e10d5e5
- 橋爪大三郎による書評(ALL REVIEWS、初出 毎日新聞 2025-09-20)— https://allreviews.jp/review/7512
- 集英社新書プラス 田中優子 × 李(2025-06-16)— https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/tanaka_lee/30694
- 「テクノロジーにハンドルをつける:多元的未来論序章」(2025-06-14)— https://note.com/chic_borage2648/n/n3f0a9bdbee1a
- 「テクノロジーと金儲けで世界は救えるか?:長期主義/効果的利他主義の問題点」(2025-05-31)— https://note.com/chic_borage2648/n/na0f4957c5064
- 「AGIについて語るときのいくつかの注意点」(2025-06-07)— https://note.com/chic_borage2648/n/nf3f6003df99e
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