Plurality の地図

慶應義塾大学の X Dignity センターと PRANCE とは?

慶應義塾大学の研究所 KGRI の 2 組織です。X Dignity センターは書籍『Plurality』日本語版の発売記念イベントを共催し、PRANCE は「なめらかな社会」と Plurality の実現を掲げ 2026 年にできました。

書籍『Plurality』は、日本では大学の催しや研究組織ともかかわっています。慶應義塾大学の X Dignity センター(2024 年)と PRANCE(2026 年)がその例です。この記事では、両者の歩みを年表でたどります。

ひとことで言うと

どちらも、慶應義塾大学のグローバルリサーチインスティテュート(KGRI)という研究所の中にある組織です[1][2][3]。

たとえば

2025 年 5 月 10 日、日本語版の発売記念イベント。 『PLURALITY』日本語版の発売を記念した 1 日のカンファレンスが、慶應の三田キャンパスで開かれました。共催はスマートニュースメディア研究所・慶應義塾大学 X Dignity センター・Plurality Tokyo・なめら会議の 4 団体で、オードリー・タンとグレン・ワイルも登壇しました[2]。X Dignity の開催報告によると、参加者は会場で約 80 名、オンラインで約 120 名でした[5]。

2026 年 8 月 2 日、デジタル民主主義サミット2026。 公式サイトは、主催を「慶應義塾大学 KGRI PRANCE × デジタル民主主義2030」とし、会場を慶應三田の北館ホールとしています。閉会の挨拶はタンと鈴木健でした[6][7]。

くわしく

X Dignity センターとは

X Dignity センターは、2024 年 7 月 1 日付で KGRI の中のセンターとして設立されました[1]。

センターの「X Dignity宣言」によると、自分と他人、人間と機械といった境目がだんだんあいまいになるなかで、21 世紀の「尊厳」(dignity)にかかわる倫理の問題を考えるのが目的です。頭文字の「X(クロス)」は、学問の分野を重ね合わせて考えることを表します。人の注意を奪い合う「アテンション・エコノミー」や、脳と機械をつなぐ技術(BMI)も論点に挙げ、福澤諭吉の「独立自尊」を引いています[4]。

共同代表(代表を何人かで分けて務める役)は牛場潤一・大久保健晴・徳永聡子・山本龍彦の 4 人で、運営委員長は駒村圭吾です[4][8]。なお、宣言そのものは Plurality に触れていません[4]。

年表(Plurality にかかわる部分)

2024 年 7 月 1 日 X Dignity センターが設立されました[1]。

2024 年 12 月 21 日 X Dignity 主催のシンポジウム「『情報的健康』を、日本から世界へ」が、三田キャンパスの会場と zoom の両方で開かれました(鈴木健の登壇の記録は「国際シンポジウム」と書きます[9])。鈴木健は特別講演「なめらかな社会と分断社会」を行いました。告知の本文には、Plurality・タン・ワイルの語はありません[10]。

報告記事(鈴木雄也の note の転載)は箇条書きの要約で、話した人の言葉そのままではありません。それによると、鈴木健は社会を「フラット」「ステップ関数的」「滑らか」の 3 つのモデルで示し、分断の現実を直視する必要を述べました[11]。

2025 年 5 月 10 日 日本語版の発売記念イベント(上の「たとえば」)。告知の暫定版のプログラムでは、最初のセッション「Pluralityと学問知の交差点」に、タン・ワイル・駒村圭吾・宇野重規・鈴木寛・安田洋祐が並び、鈴木健が司会を務めました。そのあとに、Polis、偽情報とコミュニティノート、クアドラティック・ファンディングとクアドラティック投票(QF/QV)、AI の各セッションが続きました[2]。鈴木健の本人サイトは、自分がこの催しの企画とまとめ役、司会を務めたと書きます[9]。慶應義塾の全学のお知らせ(2025 年 5 月 16 日)も開催報告にリンクしました[12]。

2025 年 7 月 25 日 駒村圭吾が集英社新書プラスの連載で『PLURALITY』を評し、「Pluralityという改革構想は憲法改正に匹敵する」と書きました[13]。これは PRANCE ができる前の、個人としての書評です。

2026 年 2 月 27 日 KGRI の運営会議の承認を受けて、PRANCE が正式に置かれました。研究代表者は駒村圭吾、共同代表は鈴木健です。KGRI のページによると、2025 年度の実際の活動は約 1 か月(2026 年 3 月)でした[3]。

同じページのメンバー一覧には、唐鳳(オードリー・タン)とワイル グレン(英語版では Glen Weyl[17])が、KGRI の訪問教授(外から迎えた教授)として載っています。この一覧はページの上では折りたたまれていて、資料を集めた人がページの中のデータから取り出したものです[3]。

2026 年 6 月 1 日 鈴木健が KGRI の特任教授として着任し、PRANCE の研究を本格的に率いる計画だ、と KGRI のページは書きます[3]。鈴木本人の略歴は、2026 年 2 月から PRANCE の共同代表、2026 年 6 月に慶應義塾大学の特任教授、としています[14]。

2026 年 8 月 2 日 デジタル民主主義サミット2026(上の「たとえば」)。PR TIMES の発表は、一般社団法人デジタル民主主義推進機構(代表理事 鈴木健)が PRANCE と共催し、定員は約 200 名としています[15]。公式サイトの末尾は、PRANCE・デジタル民主主義2030・ソーシャス・Tech for Impact Summit の運営委員会を「共催」としています[6]。

PRANCE が目指すもの

KGRI のページによると、PRANCE の出発点は、先進国で民主主義がうまく働かなくなっているという認識です。例として、対立の固定化、暴力的な言動、SNS を通じた認知の操作による分断を挙げます。そのうえで、「なめらかな社会」と「Plurality」を実現するための課題を整理し、実践のやり方を確立して、日本での解決策を示すことを目的にしています[3][16]。

技術開発のコミュニティ「デジタル民主主義2030」(DD2030)と組んで、実際に使える道具づくりにも取り組みます。中には 3 つのサブプロジェクトがあります[3]。

  1. 熟議民主主義の実践 — 熟議は、じっくり話し合って考えを深めることです。台湾や欧米の話し合いの場や、住民が予算の使い道を決める「参加型予算」の例を調べ、日本で試します。Polis などでの意見集めを 2026 年度の前半に行い、年度中に熟議のイベントを開く計画です[3]。
  2. ブロードリスニング — AI を使って、大勢の市民の意見を集めて分析します。市民が詐欺広告を通報できる「AntiFraud」のベータ版(試用版)を 2026 年 3 月 19 日に公開し、同じ日に記者会見「ストップ詐欺広告」を開きました(登壇は鈴木健と駒村圭吾)[3]。
  3. インフォメーション・インテグリティ — 情報の健全さを守る取り組みで、有名人になりすました詐欺広告を中心に、偽情報への対策を扱います。2026 年 1 月の鈴木の台湾視察をもとに、各国の制度を比べる研究を進めます[3]。

どこが議論になっているか

資料の中に、この 2 つの組織への批判は見当たりません。ただ、資料どうしで書き方が食い違うところがあります。

Plurality の中での位置

書籍『Plurality』は X Dignity にも PRANCE にも触れていません。慶應が出てくるのは、3-3 章の写真「テッド・ネルソン、慶應大学にて、1999 年」の説明だけです[21](→ テッド・ネルソン)。

PRANCE は、Plurality と鈴木健の「なめらかな社会」を、名前と目的に並べて入れた、日本の大学の研究組織です(→ 鈴木健)。サブプロジェクトは本に出てくる道具と重なります。熟議と Polis、ブロードリスニング です。実践は DD2030 と組んでいます。

日本での受け止められ方の流れは、日本での Plurality と日本の年表へ。

このページの資料について

このページのテーマは、サイトの運営者の西尾泰和が選びました。西尾は資料の中では、2025 年 5 月 10 日のセッション「Polis ― 合意形成の新しいかたち」のパネリスト[2]と、サミットの分科会「ブロードリスニングの技術」の登壇者(中山心太と)[7]としてだけ出てきます。サミットの公式サイトの登壇者紹介にも載っていますが、同じ分科会の登壇者としてです[6]。

資料のほとんどは、慶應の自前のページと、催しの公式ページ・プレスリリース・鈴木健の本人サイトです。独立した報道はほとんど集まっていません。PRANCE の設置や鈴木健の着任についての慶應の公式発表も見つかっておらず、根拠はプロジェクトのページだけです。

もっと知りたい人へ

  1. KGRI「プルーラリティ・なめらかな社会研究センター(PRANCE)」2026 年度(日本語、大学のページ)— https://www.keio.ac.jp/ja/org/kgri/project/2026/P26-22/
  2. X Dignity「PLURALITY」日本語版発売記念イベントの案内(日本語、催しの告知)— https://www.x-dignity.kgri.keio.ac.jp/news/848/
  3. X Dignity 開催報告(2025-05-10、日本語、動画へのリンクあり)— https://www.x-dignity.kgri.keio.ac.jp/news/1263/
  4. KGRI PRANCE 英語版(英語、大学のページ)— https://www.keio.ac.jp/en/org/kgri/project/2026/P26-22/
  5. デジタル民主主義サミット2026 公式サイト(日本語)— https://summit.dd2030.org/
  6. 駒村圭吾「Plurality(プルラリティ)を読み解く④」(日本語、書評)— https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/news/31462

出典

  1. X Dignity センター設立のお知らせ — https://www.x-dignity.kgri.keio.ac.jp/news/48/
  2. X Dignity「PLURALITY」日本語版発売記念イベントの開催案内 — https://www.x-dignity.kgri.keio.ac.jp/news/848/
  3. KGRI「プルーラリティ・なめらかな社会研究センター(PRANCE)」2026 年度 — https://www.keio.ac.jp/ja/org/kgri/project/2026/P26-22/
  4. X Dignity宣言 — https://www.x-dignity.kgri.keio.ac.jp/about/
  5. X Dignity 開催報告(2025-05-10)— https://www.x-dignity.kgri.keio.ac.jp/news/1263/
  6. デジタル民主主義サミット2026 公式サイト — https://summit.dd2030.org/
  7. デジタル民主主義サミット2026 プログラム — https://summit.dd2030.org/program
  8. X Dignity メンバー — https://www.x-dignity.kgri.keio.ac.jp/member/
  9. 鈴木健 本人サイトの登壇の記録 — https://nameteki.kensuzuki.org/event
  10. X Dignity シンポジウム「『情報的健康』を、日本から世界へ」告知(2024-12-21)— https://www.x-dignity.kgri.keio.ac.jp/news/408/
  11. X Dignity シンポジウムの報告(2024-12-21)— https://www.x-dignity.kgri.keio.ac.jp/news/606/
  12. 慶應義塾 お知らせ(2025-05-16)— https://www.keio.ac.jp/ja/news/20250516-1/
  13. 駒村圭吾「Plurality(プルラリティ)を読み解く④」集英社新書プラス(2025)— https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/news/31462
  14. 鈴木健 略歴 — https://nameteki.kensuzuki.org/profile
  15. PR TIMES「デジタル民主主義サミット2026」の発表 — https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000178637.html
  16. KGRI PRANCE 2025 年度 — https://www.keio.ac.jp/ja/org/kgri/project/2025/I25-12/
  17. KGRI PRANCE 英語版 — https://www.keio.ac.jp/en/org/kgri/project/2026/P26-22/
  18. Reverse Alignment 連合のサイト — https://reversealignment.ai/
  19. デジタル民主主義2030 トップページ — https://dd2030.org/
  20. Tokyo Plurality Week の告知(note)— https://note.com/digitaldemocracy/n/n4c91cddef564
  21. 『PLURALITY』日本語版 3-3「失われた道」— https://www.plurality.net/v/chapters/3-3/jpn/ [CC0]

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