Plurality の地図

中山心太ってどんな人?

機械学習の技術者・経営者で、ネットでは「ところてん」の名で知られます。大勢の意見を AI で整理する「広聴AI」のメンテナで、本『政治・自治体・企業に広がるブロードリスニング』の取りまとめ役です。

何千、何万という人の自由な意見を、どうすればきちんと「聞く」ことができるでしょうか。日本でこの問いに技術で取り組んでいる人の一人が、この人です。

ひとことで言うと

中山心太(なかやま しんた)は、機械学習やデータ分析を専門にする技術者・経営者です。株式会社NextInt の代表取締役で、ネットでは「ところてん」(X は @tokoroten)の名で知られています[1]。

大勢の人の意見を AI で整理して見えるようにするオープンソースのソフト「広聴AI」のメンテナ(開発をまとめ、支える人)の一人です[1][2]。その経験をまとめた本『政治・自治体・企業に広がるブロードリスニング』(DD2030 コミュニティ著、インプレスから刊行予定)の取りまとめ役も務めています[3]。

Plurality とのかかわり

書籍『Plurality』には登場しません。関わりは、広聴AI を通じたものです。本の 5-4 章は、大勢の声を聞く「ブロードリスニング」の例として Talk to the City(TTTC)を挙げています。広聴AI は、その日本での後継にあたります。→ Talk to the City、拡張熟議

広聴AI のメンテナ。 中山は デジタル民主主義2030(DD2030)に参加し、広聴AI のメンテナを務めています[1][2]。2025 年 6 月の技術解説のスライドでは、TTTC から受け継いだ処理の流れを説明しました。意見を取り出し、数値のベクトルに直し、似たものを近くに並べ、グループに分け、AI に名前をつけさせる、という流れです。その目的を、意見の量ではなく、少数意見も含めた意見の多様性を見えるようにすること、と書いています[4]。2026 年 7 月には、同じ分析をブラウザの中だけで動かせる版を公開しました[5]。

ブロードリスニング本の取りまとめ役。 本の原稿の置き場(GitHub)の説明には、@tokoroten が全体の構成と進行管理を担当する、とあります。序文は 安野貴博(安野たかひろ)、推薦文は オードリー・タン、ライセンスは CC BY-NC 4.0(出典を示せば非営利で使える)です[3]。2026 年 8 月のスライドによれば、中山が約 60%、西尾泰和 が約 15% を書き、ほかにも多くの著者がいます[2]。

タンの推薦文の原文は "Broad Listening puts AI in the human loop: Democracy learned to broadcast — Japan shows it how to receive." です。本には、西尾が言葉を補った日本語訳が載っています。ブロードリスニングは AI を人間の熟議の循環に組み込み、発信にかたよってきた民主主義に「大規模に聞く能力」を与える。その実践的な答えを日本が示している、という内容です[6]。

デジタル民主主義サミット 2026。 2026 年 8 月 2 日、中山は西尾と一緒に「ブロードリスニングの技術」を講演しました[1][2]。

チームみらいとの距離。 2026 年 2 月、中山は X で、チームみらい はもう TTTC もその後継の広聴AI も使っていない、Polis も新しい版で AI による要約を入れた、と書きました。時期のずれた論評に留保をつけたものです[7]。広聴AI(開発は DD2030)と、チームみらいが今使っている仕組みとを分けて考える手がかりの一つです。

未踏とのかかわり

中山は 2006 年度下期の IPA の 未踏 ユースで、「次世代Greasemonkey、TsukikageSystemの開発」のチーフクリエータとして採択されました(安村通晃 PM の担当)[8]。2011 年には雑誌『情報処理』に寄稿し、未踏の面白さは、得意なことが違う人どうしが自然に集まれることだと書いています。プログラミングの本質はコミュニケーションだ、とも述べています[9]。

主な考え

規模と深さのトレードオフを AI で越える。 中山は、ブロードリスニングを 1 枚のスライドで説明します。お金が一定なら、大勢に聞こうとすれば簡単なことしか聞けず、深く聞こうとすれば少ない人にしか聞けません。この「あちらを立てればこちらが立たず」を AI の助けで乗り越えるのがブロードリスニングだ、というのです。例として、令和 7 年の国勢調査が全世帯に 17 項目を聞くのに約 946 億円かかったことを挙げています[2]。→ ブロードリスニング

ブロードリスニングの三つの形。 同じスライドは、ブロードリスニングを三つに分けています[2]。

  1. 道具としてのブロードリスニング — TTTC や広聴AI のように、大量の自由な書き込みを AI で整理する
  2. 拡張熟議を支えるブロードリスニング — いどばた のように、AI が人どうしの話し合いに入る
  3. 政治家や行政が主導するブロードリスニング — 各党や自治体の取り組み

スライドは、海外では 2 が、日本では 3 が広がった、と整理しています[2]。

炎上の怒りを「交渉できる提案」に。 2026 年 3 月の X の長文で、中山は政治学者 W. Lance Bennett と Alexandra Segerberg の「Collective Action(団体の運動)」と「Connective Action(つながりの運動)」の区別を紹介しました。SNS の炎上のようなつながりの運動は、交渉する代表がいないので、制度を変えるところまで届きにくい、と論じます。そこで、炎上で生まれた怒りを交渉できる提案に変えて、公式のルートへつなぐ仕組みが要る。それこそがブロードリスニングの役割だ、という提案です。後半の整理は学術的に確立したものではなく自分の整理と提案だ、と本人が断っています[10]。

ふるい分けへの警戒。 2024 年 7 月のイベント Funding the Commons Tokyo の最中、中山は X に、ブロードリスニングの前の段階で攻撃的な発言をふるい落とすのはとても良いが、攻撃的な人が社会的な権利を失う社会と隣り合わせでもある、という趣旨を書きました[11]。

企業での使い道。 DD2030 として、コールセンターで顧客の声の分析に広聴AI を使っているアルティウスリンク社を取材しました(2025 年 12 月 9 日取材)[12]。

もっと知りたい人へ

  1. 中山心太・西尾泰和「ブロードリスニングの技術」(日本語・講演スライド、2026-08-02)— https://www.docswell.com/s/tokoroten/5Q2LVW-tech-of-broadlistening-dd-summit2026
  2. 『政治・自治体・企業に広がるブロードリスニング』の web 版(日本語・本、CC BY-NC 4.0)— https://broadlisteningbook.com/
  3. 広聴AI の技術解説スライド(日本語・講演スライド、2025-06)— https://www.docswell.com/s/tokoroten/ZL1M88-2025-06-14-014546 (収録動画 — https://www.youtube.com/watch?v=SpOI-JuJv5o )
  4. 「Collective ActionとConnective Action」(日本語・X の長文、2026-03-02)— https://x.com/tokoroten/status/2028388031192035560
  5. 広聴AI のサーバレス版(英語・日本語、ソフトウェア)— https://github.com/tokoroten/kouchou-ai-serverless

出典

  1. デジタル民主主義サミット 2026「ブロードリスニングの技術」セッションページ — https://summit.dd2030.org/sessions/broad-listening-technology/
  2. 中山心太・西尾泰和「ブロードリスニングの技術」スライド(2026-08-02)— https://www.docswell.com/s/tokoroten/5Q2LVW-tech-of-broadlistening-dd-summit2026
  3. 『ブロードリスニング』本の原稿リポジトリ README — https://github.com/digitaldemocracy2030/broad-listening-book [CC BY-NC 4.0]
  4. 広聴AI 技術解説スライド(2025-06-14)— https://www.docswell.com/s/tokoroten/ZL1M88-2025-06-14-014546
  5. kouchou-ai-serverless README — https://github.com/tokoroten/kouchou-ai-serverless
  6. 『ブロードリスニング』本「Audrey Tangから本書に送られた言葉」— https://github.com/digitaldemocracy2030/broad-listening-book/blob/f69c60c838a91b91668abf109d7093b240610139/00_endorsement_from_Audrey.md [CC BY-NC 4.0]
  7. 中山心太の X の投稿(2026-02-07)— https://x.com/tokoroten/status/2020004238718570604
  8. IPA 2006 年度下期 未踏ユース 公募結果 — https://www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/esp/2006/2006-2-youth-koubokekka.html
  9. 中山心太「プログラマじゃないから続くコミュニティ」(情報処理 Vol.52 No.12、2011)— https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/records/78371
  10. 中山心太「Collective ActionとConnective Action」(X、2026-03-02)— https://x.com/tokoroten/status/2028388031192035560
  11. 中山心太の X の投稿(2024-07-24)— https://x.com/tokoroten/status/1816010940988678391
  12. DD2030「広聴AIのコンタクトセンターでの活用 - アルティウスリンク株式会社に取材!」(note、2026-02-24)— https://note.com/dd2030/n/n6db28a76ca95

記事の間違いや、知りたいこと(「〜ってなに?」)を受け付けています。送られた内容は公開の issue になります。

この記事の間違いを知らせる ・ 質問する