Plurality の地図

チームみらいってなに?

AI エンジニアの安野貴博が 2025 年に作った日本の政党です。有権者が AI と対話してマニフェストに意見を出せる仕組みなど「デジタル民主主義」を掲げ、Plurality を指針の一つに挙げています。2026 年の衆院選で 11 議席を得ました。

政党の公約(マニフェスト)は、ふつう党が作って有権者に示すものです。有権者の側から「ここを直してほしい」と言える場は、あまりありません。チームみらいは、AI やインターネットの道具を使って、この流れを双方向にしようとしている日本の政党です。

ひとことで言うと

チームみらいは、2024 年の東京都知事選に出た AI エンジニア・SF 作家の安野貴博(あんの・たかひろ)が、2025 年 5 月 8 日に作った政党です。安野は結党会見で、テクノロジーを使って誰も取り残さない日本をつくる、という趣旨の目標を語りました[1]。

党は、技術で政治への参加を広げる「デジタル民主主義」を実践しています。党のマニフェストは、オードリー・タンとグレン・ワイルの Plurality(違いを越えた協働を技術で支えるという考え方)を、デジタル民主主義の大事な指針として紹介しています[2]。

たとえば

しゃべれるマニフェスト(2025 年参院選)。 2025 年 5 月 16 日に公開された仕組みです。AI が有権者に話を聞き、マニフェストの変更案を GitHub(ギットハブ、文書の変更を記録・提案できるサービス)に送ります。政策への提案は 8,559 件届きました。ブロードリスニング(大勢の声を広く聴き取り、全体像をつかむこと)について日本の実践者が書いた本は、都知事選のときに GitHub へ直接届いた変更提案は 104 件だったので、入口を「対話」にしたことで約 80 倍になった、とまとめています[3]。

国会での質問(2026 年)。 2026 年 5 月 21 日の参議院総務委員会で、安野は「みらい議会」の AI インタビューで集めた有識者や当事者の声 264 件(約 47 時間分)をもとに質問しました[4]。

くわしく

都知事選から生まれた

2024 年都知事選の安野陣営は、三つの仕組みを同時に動かしました。AI のアバター(分身)「AIあんの」、たくさんの声を AI で整理する Talk to the City、そして GitHub でのマニフェストの改善です。安野は約 15 万票を得て 5 位でした[3][1]。

安野は結党会見で、15 万 4,638 票を「1,400 万人いる都民の 1%」の人から託された票だと言い表し、この「1%」の支持を元手に国政政党を作ると述べました[1]。この「1%」は都民の数に対する安野の言い方で、選挙での得票率は 2.3% でした[9]。日本語版 Wikipedia によれば、参院選の候補者の多くは、都知事選で安野を支えるために集まったメンバーでした[5]。くわしくは 安野貴博の 2024 年都知事選 の記事で扱います。

国政政党になるまで

2025 年 7 月 20 日の参院選で、党は比例代表で 1 議席(安野)を取りました。得票率は約 2.6% で、法律上の「政党」の要件を満たしました[3][5]。

国からの政党交付金で「永田町エンジニアチーム」を作りました。政治資金の流れを誰でも見られる「みらい まる見え政治資金」(2025 年 10 月 2 日)や、法案をやさしく説明する「みらい議会」(2025 年 10 月 16 日)を公開しています[6]。

2026 年 2 月 8 日の第 51 回衆院選では、比例で 381 万 3,749 票(得票率 6.66%)を得て、11 人が当選しました[7]。国会議員は安野を含めて 12 人になりました。党は、半年で 150 回を超える国会質疑をしたと報告しています[8]。

「聴く・磨く・伝える」

都知事選のマニフェストには、有権者の声を「聴く」、政策を「磨く」、そして「伝える」というサイクルを速く回す、という考えがありました。ブロードリスニングの本は、これが党の仕組みの芯になっていると説明します[9]。

2026 年 7 月 18 日の第 1 回党大会では、党のアプリを使って約 1,100 人がスマートフォンで議決に参加しました。党は安野の考えとして、デジタル民主主義の狙いは政治の判断を AI に任せることではなく、AI の助けで参加する人を増やし、出た声を政策につなげ、その後どうなったかまで確かめられるようにすることだ、と紹介しています[10]。

仕組みの手直し

参院選の「しゃべれるマニフェスト」では、問題も出ました。同じ箇所に数十件の提案がぶつかる、提案した人に「受け止めてもらえた」という感覚がない、GitHub のコメント欄が荒れる、といったことです[3]。

そこで 2026 年の衆院選では「声が届くマニフェスト」に改めました。本文を選んで質問や提案を始められる画面、AI が選択肢を示すチャット、提案の自動分類と似た提案のまとめ、担当者用の管理画面などを加えました[11]。雑誌 Noema の記事によると、衆院選で党のチャットボットは 3 万 8 千件を超える質問と 6 千件を超える提案を受けました。消費税減税に懐疑的な有権者の層を見つけるのにも役立ったといいます[12]。

DD2030 とのつながり

安野は 2025 年 1 月、鈴木健らとオープンソース(誰でも使え、改良できる形で公開すること)のコミュニティ「デジタル民主主義2030(DD2030)」を始めました。ただし政治的な中立を保つため、2025 年 5 月 7 日にその運営役(ボード)を退いています。チームみらいは DD2030 の 広聴AI を複製して選挙向けの機能を足し、その改良を元のプロジェクトに戻しました[13]。

どこが議論になっているか

Plurality の中での位置

書籍『Plurality』の 5-4 章「拡張熟議」は、結党前の 2024 年都知事選の安野陣営を、ブロードリスニングを選挙に持ち込んだ例として挙げています[20]。党名そのものは本には出てきません。

チームみらいは、その延長で、本の言う 拡張熟議(技術で話し合いを深める試み)を政党の運営に組み込もうとしている例と読めます。党大会のスマホ投票や、AI インタビューを国会質疑に使う試みは、⿻ 投票 や 適応型管理行政 の問題意識と重なります。ただし、本がこれらを直接論じているわけではありません。

日本での受け止められ方の全体は 日本での Plurality の広がり の記事にまとめています。

もっと知りたい人へ

  1. チームみらい(日本語版 Wikipedia・事典)— https://ja.wikipedia.org/wiki/チームみらい
  2. ブロードリスニング本 6.1「2025年参院選 チームみらいの取り組み」・6.2「2026年衆院選」(日本語・本)— https://broadlisteningbook.com/
  3. 結党会見の全文(2025-05-08、日本語・記事)— https://note.com/takahiroanno/n/nebe958c4651c
  4. 第 51 回衆院選の結果報告(日本語・党の記事)— https://note.com/team_mirai_jp/n/n4a15f23f129d
  5. 西尾泰和「しゃべれるマニフェスト」の知見(日本語・記事)— https://note.com/nishiohirokazu/n/nb35e8d526fd4
  6. Noema「Democracy Needs Friction To Function」(英語・記事)— https://www.noemamag.com/democracy-needs-friction-to-function

出典

  1. 安野貴博「結党会見 全文」(2025-05-08)— https://note.com/takahiroanno/n/nebe958c4651c
  2. チームみらい マニフェスト「ステップ1 デジタル民主主義」— https://github.com/team-mirai/policy
  3. ブロードリスニング本 6.1「2025年参院選 チームみらいの取り組み」— https://github.com/digitaldemocracy2030/broad-listening-book/blob/f69c60c838a91b91668abf109d7093b240610139/06_01_%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%BF%E3%82%89%E3%81%84.md [CC BY-NC 4.0]
  4. チームみらい「参議院総務委員会(2026-05-21)」の記録 — https://note.com/team_mirai_log/n/n3c57f6729185
  5. 日本語版 Wikipedia「チームみらい」— https://ja.wikipedia.org/wiki/チームみらい [CC BY-SA 4.0]
  6. チームみらい公式サイト — https://team-mir.ai/
  7. チームみらい「第 51 回衆院選 結果報告」— https://note.com/team_mirai_jp/n/n4a15f23f129d
  8. チームみらい「国会半年の記録」(2026-08)— https://note.com/team_mirai_jp/n/nb07827d2292d
  9. ブロードリスニング本 4.1「安野貴博の取り組み」— https://github.com/digitaldemocracy2030/broad-listening-book/blob/f69c60c838a91b91668abf109d7093b240610139/04_01_%E5%AE%89%E9%87%8E%E8%B2%B4%E5%8D%9A%E3%81%AE%E5%8F%96%E3%82%8A%E7%B5%84%E3%81%BF.md [CC BY-NC 4.0]
  10. チームみらい「第 1 回党大会のスマホ投票」— https://note.com/team_mirai_jp/n/n2092f0dc600d
  11. ブロードリスニング本 6.2「2026年衆院選」— https://github.com/digitaldemocracy2030/broad-listening-book/blob/f69c60c838a91b91668abf109d7093b240610139/06_02_%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%BF%E3%82%89%E3%81%842026%E5%B9%B4%E8%A1%86%E9%99%A2%E9%81%B8.md [CC BY-NC 4.0]
  12. Noema「Democracy Needs Friction To Function」(2026-06-10)— https://www.noemamag.com/democracy-needs-friction-to-function
  13. ブロードリスニング本 10「DD2030 による広聴AIの開発活動」— https://github.com/digitaldemocracy2030/broad-listening-book/blob/f69c60c838a91b91668abf109d7093b240610139/10_00_DD2030%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%BA%83%E8%81%B4AI%E3%81%AE%E9%96%8B%E7%99%BA%E6%B4%BB%E5%8B%95.md [CC BY-NC 4.0]
  14. 市民の note 記事(2025-10、無料部分)— https://note.com/ippanjin_2025/n/n299555fb4908
  15. team-mirai の GitHub リポジトリ一覧 — https://github.com/team-mirai/policy
  16. team-mirai/policy の README — https://github.com/team-mirai/policy
  17. 一田和樹の note 記事 — https://note.com/ichi_twnovel/n/n1a945d0925da
  18. 朝日新聞 東浩紀インタビュー(2026-05-21、無料部分)— https://www.asahi.com/articles/ASV5N2691V5NUPQJ004M.html
  19. 中山心太の X 投稿(2026-02-07)— https://x.com/tokoroten/status/2020004238718570604
  20. 『Plurality』5-4「Augmented Deliberation」— https://www.plurality.net/v/chapters/5-4/eng/ [CC0]

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