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Cofacts(真的假的)ってなに?

台湾の市民が、LINE などで回ってきた怪しいメッセージをチャットボットに転送すると、ボランティアが調べて書いた回答が返ってくる、誰でも参加できるファクトチェックの仕組みです。市民技術者の集まり g0v から生まれ、集まったデータは誰でも使えます。

家族のグループチャットに、「これを飲むと病気が治る」「〇〇が危ない」といったメッセージが回ってきたことはありませんか。本当かどうか気になっても、自分で調べるのは手間がかかります。Cofacts(コファクツ)は、そうしたメッセージをチャットボットに転送するだけで、市民が調べた答えが返ってくる台湾の仕組みです。

ひとことで言うと

Cofacts は、怪しい話をチャットボット(自動で会話するプログラム)に転送すると、ボランティアの市民が調べて書いた回答が返ってくる、台湾生まれのファクトチェック(事実確認)の仕組みです。中国語の名前は「真的假的」で、「ほんとう?うそ?」という意味です[1][2][3]。

誰でも回答を書くことができます。集まったデータは、誰でも自由に使えます[1][2][3]。

たとえば

外から見えない会話の中のうわさ。 台湾で広く使われている LINE のようなメッセージアプリは、会話が外から見えません。そのため、デマを調べるのも対策するのも難しいのです。Cofacts の中心メンバーのジョンソン・リャン(Johnson Liang)は、利用者がボットに送ったメッセージそのものが、閉じた SNS の中で何が起きているかを知る貴重な記録になる、と書いています。2018 年 3 月には、それを個人がわからないように処理して公開しました[2]。

同性婚の国民投票の前(2018 年)。 Cofacts の分析機能で、「同性愛」を含むメッセージがどれほど出回ったかをグラフで示せるようになった、とリャンは書いています。台湾が同性婚の投票の前に反 LGBT のフェイクニュースとどう戦ったかという海外メディアの報道でも、Cofacts が取材を受けました[2]。

ほかのボットの「ハブ」。 Cofacts のデータベースは、誰でも制限なく使える形(CC0)で公開されています。そのため、別の人が作った人気のボット「美玉姨」も、Cofacts のデータを使っています[3]。オードリー・タン(Audrey Tang)は Cofacts を、多くのボットにつながる「ハブ(中心の拠点)」と呼びました[4]。

タンによれば、スマホは使えてもパソコンが苦手な高齢の親も、こうしたボットを入れるだけで、確認を頼んだり、結果を家族に転送したりする参加者になれます[4]。タイにも同じ仕組みがある、とタンは言います[5]。

しくみ

転送して、答えが返る

書籍『Plurality』によれば、Cofacts では参加する市民が、SNS で流行っている内容と、個人のチャットから転送されて回答を求められたメッセージの両方に、すばやく答えます[1]。

リャンの 2019 年の振り返りでは、利用者が 7 万人を超えても、回答を書く編集者は増えませんでした。そこで 2018 年 7 月、メッセージを送るときに「どこが疑わしいと思うか」を書いてもらう機能を入れました[2]。

狙いは三つありました。遊びの投稿をふるい落とすこと。編集者が調べるべきものを選べるようにすること。そして、送る人自身が情報を疑う、メディアリテラシー(情報を読み解く力)の第一歩を踏むことです[2]。8 月には、役に立った回答を友だちにシェアするボタンも付けました[2]。

誰がやっているのか

Cofacts は、市民技術者の集まり g0v(ガヴゼロ)から派生したプロジェクトです[1]。李比鄰(ビリオン・リー、Billion Lee)は共同創設者として紹介されています[6]。

2018 年には、毎週水曜の夜に対面の会議を 50 回開きました。2 か月に一度は編集者の小さな集まりを開き、100 分間いっしょに回答を書いた、とリャンは記しています[2]。

リャンの 2019 年の記事によれば、Cofacts はまだ未完成だった 2017 年の初めに偶然注目され、編集の協力者より利用者が押し寄せました。英語名の Cofacts は 2017 年 4 月に決まりました[3]。g0v の市民技術の助成金を受けましたが、お金を出した側は運営に口を出さない、と書いています[3][2]。

「公正な第三者」ではない

リャンは、誰でも参加できる以上、一つひとつの回答の正しさは保証できない、と認めています。その代わり、誰でもいつでも別の回答を足せます[3]。回答には「個人の意見を含む」という分類があり、一つのメッセージへのすべての回答が並べて示されます。回答する人の顔ぶれが気に入らなければ、公開されたデータとコードで自分のボットを立てることもできます[3]。

リャンは、Cofacts は編集者の身元を制限しないことで、言論の自由で偽情報に対抗しようとする試みだ、と書いています。成功しても失敗しても、同じ悩みを持つ国の参考になる、とも述べています[2]。

AI の導入

タンは 2023 年、Cofacts はすでに言語モデル(文章を扱う AI)を訓練し、偽情報を最初に見た時点で、背景や考える手がかりを AI に添えさせている、と語りました[7]。2024 年には、人間が見る前の流行したてのデマに、過去の例から関連する注意喚起を結びつけてすぐに答える、と説明しています[8]。

2025 年のドイツ語のインタビューでタンは、Cofacts を「ファクトチェックのウィキペディア」のようなものだと表現しました。政府は運営しておらず、専門家も支え、学校のメディアリテラシーの授業でも使われている、と述べています[9]。

どこが議論になっているか

Plurality の中での位置

書籍『Plurality』の 2-2 章「デジタル民主主義の日常」は、節「情報の正真性」で、偽情報にすばやく応える台湾の「超能力」の中心として Cofacts を紹介しています[1]。本は研究を引いて、こうした仕組みは、処理できる量に限りがある専門のファクトチェッカーよりふつうは速く、同じくらい正確に、より人を引きつける形でうわさに答えられる、と書いています[1]。

同じ節には、ほかの LINE のボットや、「ユーモアはうわさに勝る」という台湾の偽情報対策の考え方も並んでいます[1]。台湾の全体像は 台湾のデジタル民主主義 の記事で扱います。

市民が補足を書き足す点で、Cofacts は X の コミュニティノート と近い仕組みです。タンは 2023 年のインタビューで、Polis・Cofacts・コミュニティノートを、声の大きいものではなく、意見の最も違う人どうしを橋渡しするものを見せる技術として並べました[7]。この考え方は ブリッジング の記事でくわしく扱います。

もっと知りたい人へ

  1. 『Plurality』2-2「デジタル民主主義の日常」の節「情報の正真性」(日本語・本)— https://www.plurality.net/v/chapters/2-2/jpn/
  2. Cofacts 公式サイト(中国語・サービス)— https://cofacts.g0v.tw/
  3. Johnson Liang「2019 第一天,來看看兩歲的 Cofacts」(中国語・記事)— https://medium.com/cofacts/2019-%E7%AC%AC%E4%B8%80%E5%A4%A9-%E4%BE%86%E7%9C%8B%E7%9C%8B%E5%85%A9%E6%AD%B2%E7%9A%84-cofacts-d2330f01727b
  4. 美國之音專訪唐鳳(中国語・インタビュー)— https://sayit.archive.tw/2023-09-23-%E7%BE%8E%E5%9C%8B%E4%B9%8B%E9%9F%B3%E5%B0%88%E8%A8%AA%E5%94%90%E9%B3%B3%E9%83%A8%E9%95%B7%E9%80%90%E5%AD%97%E7%A8%BF
  5. Audrey Tang, Interview with Microsoft Research, Part II(英語・インタビュー)— https://github.com/audreyt/transcript/blob/main/2024-01-01-Interview-with-Microsoft-Research%2C-Part-II.md
  6. Andy Zhao & Mor Naaman の比較研究(英語・論文)— https://doi.org/10.54501/jots.v2i1.118

出典

  1. 『Plurality』2-2「The Life of a Digital Democracy」— https://www.plurality.net/v/chapters/2-2/eng/ [CC0]
  2. Johnson Liang「2019 第一天,來看看兩歲的 Cofacts」(2019-01-01)— https://medium.com/cofacts/2019-%E7%AC%AC%E4%B8%80%E5%A4%A9-%E4%BE%86%E7%9C%8B%E7%9C%8B%E5%85%A9%E6%AD%B2%E7%9A%84-cofacts-d2330f01727b
  3. Johnson Liang「摘掉『公正第三方』的高帽子 — Cofacts 對陰謀論的回應」(2019-01-11)— https://medium.com/cofacts/%E6%91%98%E6%8E%89-%E5%85%AC%E6%AD%A3%E7%AC%AC%E4%B8%89%E6%96%B9-%E7%9A%84%E9%AB%98%E5%B8%BD%E5%AD%90-cofacts-%E5%B0%8D%E9%99%B0%E8%AC%80%E8%AB%96%E7%9A%84%E5%9B%9E%E6%87%89-bd948d128d6c
  4. Audrey Tang, Interview with Microsoft Research, Part II(2024-01-01)— https://github.com/audreyt/transcript/blob/main/2024-01-01-Interview-with-Microsoft-Research%2C-Part-II.md [CC0]
  5. Audrey Tang, Conversation with AI Objectives Institute(2024-05-06)— https://github.com/audreyt/transcript/blob/main/2024-05-06-Conversation-with-AI-Objectives-Institute.md [CC0]
  6. 「國防在線急 S2E7」(李比鄰出演、動画)— https://www.youtube.com/watch?v=mCHU0RsVbL8
  7. 美國之音專訪唐鳳(2023-09-23)— https://sayit.archive.tw/2023-09-23-%E7%BE%8E%E5%9C%8B%E4%B9%8B%E9%9F%B3%E5%B0%88%E8%A8%AA%E5%94%90%E9%B3%B3%E9%83%A8%E9%95%B7%E9%80%90%E5%AD%97%E7%A8%BF [CC0]
  8. Audrey Tang, Interview with Your Undivided Attention podcast(2024-01-24)— https://github.com/audreyt/transcript/blob/main/2024-01-24-Interview-with-Your-Undivided-Attention-podcast.md [CC0]
  9. D+C「Taiwan hat die gesellschaftliche Polarisierung abgeschwächt …」(Audrey Tang インタビュー、2025)— https://www.dandc.eu/de/article/taiwan-hat-die-gesellschaftliche-polarisierung-abgeschwaecht-und-ist-heute-besser-gegen
  10. Daily Beast「Taiwan tried to digitize democracy with vTaiwan. It was a huge flop」(2023)— https://www.thedailybeast.com/taiwan-tried-to-digitize-democracy-with-vtaiwan-it-was-a-huge-flop/

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