Plurality の地図

落合陽一ってどんな人?

メディアアーティストで研究者、「デジタルネイチャー(計算機自然)」を唱える人です。オードリー・タンと何度も対談し、Plurality との共通点と違い(主役は人間か環境か)を自分の名義の文章で整理しています。

書籍『Plurality』には名前が出てきませんが、日本でこの本が語られるとき、よく比べられる人がいます。オードリー・タンの対談相手として何度も登場し、自分の考えと Plurality の違いを言葉にしてきた人です。

ひとことで言うと

落合陽一(おちあい よういち、Yoichi Ochiai)は、メディアアーティストで、筑波大学でデジタルネイチャーの研究室や研究センターを率いる研究者です[1][2]。

コンピューターが道具であることをやめ、光・音・物・身体と溶けあった「環境」になった状態を「デジタルネイチャー(計算機自然)」と呼び、この考えを約 10 年にわたって唱えてきました[3]。

Plurality とのかかわり

書籍『Plurality』には登場しません。接点は、オードリー・タン との対談と、落合名義の論考です。

タンとの対談の積み重ね。 落合は NHK の番組のために聞き手としてタンにインタビューしました(2023 年 1 月付の映像。台湾のデジタル発展部が YouTube で公開)[4]。2025 年 5 月 6 日には、東京大学安田講堂で対談しています[5]。2026 年 3 月には NewsPicks の番組 WEEKLY OCHIAI でも話しました。この回の英語の逐語録は CC0(著作権放棄)で公開されています[6]。

共通点と違いを自分で整理。 安田講堂の対談の直前、落合は note に備忘録を書きました(落合名義の論考。無料公開部分のみ)。そこでは共通点として、オープンソース(中身を公開して誰でも使い直せるソフトウェア)への根本的な肯定、技術を社会を設計する土台とみること、近代の人間中心の考え方に限界があるという認識、を挙げています[7]。

決定的な違いは、社会が主体性を環境(計算機自然)の側にゆずって人間はその一部になるのか、それとも人間が主体のまま環境を調整し続けるのか、という問いにまとめられています。落合の側はアルゴリズムが主導する「ポスト民主主義」に、タンの側は人間どうしの対話で合意をつくる民主主義に向かう、という整理です[7]。

安田講堂の対談の中身。 対談を聞いた参加者の note によれば、落合は「デジタル発酵」という言葉を使いました。AI を使う過程は、微生物にまかせて細かく制御できない発酵に似ている、という意味です。悪い AI への規制について、タンは暴走する車をパトカーで追いかけるのではなく「ハンドルをつける」という話をした、と記録されています(参加者による記録で、意訳を含むと本人が断っています)[5]。

WEEKLY OCHIAI(2026 年 3 月)。 落合は、「自然」という言葉の中身が中国(道家)と日本で少し違うのでは、と問いかけました。タンは『老子』の一節を引いて、「対立は共創の源」というのが書籍『Plurality』の根本の考えだと答えました。そのうえで、日本の読み方は対立の動きにあまりこだわらない、少し違いがある、と述べています[6]。

タンは同じ回で、分断で周りが見えなくなる状態を「戦場の霧(fog of war)」と呼び、それを減らす目安を「PPM(Polarization Per Minute、1 分あたりの分極化)」と名づけました。また、大勢の声を聞く ブロードリスニング を、放送(ブロードキャスト)と同じく「普遍的な権利」にすべきだ、とも語っています[6]。

二次投票と「運の制度化」。 2026 年 8 月の英語の長い論考「Homo Convivium」(落合名義の論考)で、落合はポズナーとワイルの クアドラティック投票 を、投票の計算そのものに再分配を組み込む仕組みとして紹介しました。タンと話したときも、能力による選抜はすでに有利な側に取り込まれているので、くじのような「運」を制度に組み込むべきだ、という同じ設計の課題に話が戻った、と書いています[8]。

未踏とのかかわり

落合は 2009 年度上期の IPA の 未踏 ユースで、「電気がみえるデバイスとソフトウェアの開発」によりスーパークリエータに認定されました。担当の首藤一幸 PM は、それまでこの世に存在しなかったもの、つまり「未踏」だったものを目の前に出して見せてくれた、という趣旨で評価しています[9]。2023 年度からは未踏 IT の PM(プロジェクトマネージャー)に名を連ね、テーマそのものより面白い人材になりそうかを審査する、と書いています[2]。一般社団法人未踏の理事でもあります[1]。

主な考え

デジタルネイチャー(計算機自然)。 2026 年の英語の総括(落合名義の論考)は、一番短い定義を、計算が外の道具であることをやめ、知覚・物・記憶・身体・儀礼・人間関係の、生き物のような層になった状態、としています。自然と人工、身体とデータ、人と機械の境目が、計算によって組み替えられる状況だ、という説明です[3]。→ デジタルネイチャー

デジタル発酵と Homo Convivium。 同じ総括は、生成 AI のあとの段階の言葉として「デジタル発酵」や、ともに生きる人間の姿としての「Homo Convivium(ホモ・コンヴィヴィウム)」を挙げ、東北の猟師マタギに着想を得た「マタギドライヴ」という言葉も使っています[3][8]。

党派にも企業にもよらない政治の道具。 2026 年 2 月の論文の形の note(落合名義の論考)で、落合は行政のデジタル化(GovTech)や市民による技術(シビックテック)と区別して、「PoliTech」を定義しました。台湾・英国・米国・EU・日本の例を、党派によらないか、企業によらないかなど 6 つの軸で比べています。参考文献には書籍『Plurality』が入っています。オープンソースであることは AI の偏りを確かめられる前提で、中身の見えない AI を政治に組み込むのは確かめられない偏りを民主主義の中心に入れるのと同じだ、と論じています[10]。

東浩紀との対話。 WEEKLY OCHIAI で 東浩紀 とも対談を重ねています(2023 年 1 月の初対談、2024 年 12 月の選挙と AI の回)[11][12]。

どこが議論になっているか

なお、この記事で「落合名義の論考」と書き分けた 2025〜2026 年の note と Medium の文章(OJPP の告知は含みません)は、AI の助けを借りて書かれたと思われるものです。落合の名義で公開されているので落合の主張として紹介しています。

もっと知りたい人へ

  1. 落合陽一「〈デジタルネイチャー/マタギドライヴ〉と〈Plurality〉」(日本語・論考、2025-05-06、無料部分)— https://note.com/ochyai/n/n2904ec32f363
  2. WEEKLY OCHIAI × Audrey Tang の逐語録(英語・対談、2026-03-25、CC0)— https://archive.tw/2026-03-25-weekly-ochiai
  3. Ten Years of Digital Nature(英語・論考、2026-05-17)— https://medium.com/@ochyai.manage/ten-years-of-digital-nature-from-computational-materialization-to-fermentative-conviviality-967fcf79b7a1
  4. PoliTech の論文形式の note(日本語・論考、2026-02-13)— https://note.com/ochyai/n/n6aa9a2a161a8
  5. OJPP の告知(日本語・記事、2026-02-13)— https://note.com/ochyai/n/n66d8d67242bf
  6. Homo Convivium(英語・長い論考、2026-08-18)— https://medium.com/@ochyai.manage/homo-convivium-c4d2a9980208

出典

  1. 一般社団法人未踏 理事プロフィール(落合陽一)— https://www.mitou.org/board_ochiai.html
  2. IPA 未踏 IT 2023 年度 PM 紹介 — https://www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/it/2023/pm.html
  3. Yoichi Ochiai, Ten Years of Digital Nature(2026-05-17)— https://medium.com/@ochyai.manage/ten-years-of-digital-nature-from-computational-materialization-to-fermentative-conviviality-967fcf79b7a1
  4. NHK 番組用 落合陽一によるオードリー・タンのインタビュー映像(YouTube)— https://www.youtube.com/watch?v=-6soX3owK4Q
  5. 東大 AI 研究会 特別講演会の参加記(note、2025-05-06)— https://note.com/ekoron/n/n042c8fc6339c
  6. Weekly Ochiai(2026-03-25)— https://archive.tw/2026-03-25-weekly-ochiai [CC0]
  7. 落合陽一「〈デジタルネイチャー/マタギドライヴ〉と〈Plurality〉」(2025-05-06)— https://note.com/ochyai/n/n2904ec32f363
  8. Yoichi Ochiai, Homo Convivium(2026-08-18)— https://medium.com/@ochyai.manage/homo-convivium-c4d2a9980208
  9. IPA 未踏ユース 2009 年度上期 スーパークリエータ認定資料 — https://www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/it/qv6pgp000000ilp8-att/000050678.pdf
  10. 落合陽一 PoliTech 論文(note、2026-02-13)— https://note.com/ochyai/n/n6aa9a2a161a8
  11. WEEKLY OCHIAI 落合陽一 × 東浩紀(YouTube、2023-01-19)— https://www.youtube.com/watch?v=qGQCTJgyk1c
  12. WEEKLY OCHIAI 選挙と AI の回(YouTube、2024-12-19)— https://www.youtube.com/watch?v=pGSpBVTlIQs
  13. 落合陽一「Open Japan PoliTech Platform をつくってみた」(note、2026-02-13)— https://note.com/ochyai/n/n66d8d67242bf

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