前回「渾沌をして語らしめる」勉強会で、「発想法」から20年の間に、「狭義のKJ法」ではない探検ネットが発明され、川喜田二郎は日常の9割程度の問題解決に探検ネットを使うようになった、というところまで説明した。今回はその「探検ネット」について掘り下げていく。

  • 2022-07-01

前回の振り返り

  • 川喜田二郎の著書としては「発想法」が有名だが、その後にも何冊も本を出して考えをアップデートして行っている
  • 11年後の「知の探検学」で「KJ法の素材になるデータの質が悪いと、結果は救いようもないものになる」と語って、データを集める「取材」「探検」のより良い方法を掘り下げた
    • ここで「探検ネット」も紹介されている
  • 20年後のKJ法に関する集大成的な書籍「KJ法 渾沌をして語らしめる」の内容:
    • KJ法は文化人類学者である川喜田二郎が、自分の「仕事」つまりフィールドワークで集めた多種多様な定性的データをまとめるために作った
    • これは他の人の「仕事」にも役に立つと考えた
    • 「仕事」には判断を伴わない「作業」と、判断を伴う「一仕事」がある
      • 何をやるべきか主体的に判断して進めていく「一仕事」
      • やれと言われたことをやる「作業」
    • この「一仕事」を達成することが大事
      • つまり「判断」が大事
    • この「判断」とはデータを集めてまとめて「状況把握」してから行うもの
    • この「状況把握」では既成概念を当てはめたりせずにデータを観察することが大事
    • この「データをして語らしめる」の具体的方法論がKJ法
    • 川喜田二郎が多くの人にKJ法を教える中で、KJ法の手前の部分(=探検)を改善する必要性がわかってきた
  • これで1〜3章(〜p.119)完了
  • 4章 狭義のKJ法一ラウンド, 5章 評価と衆目評価法, 6章 KJ法のグループ作業 はスキップ
  • 7章 取材の方法, 8章 探検ネット再論-KJ法の実務化 を今回やっていく(p.213〜p.341)

取材の方法

  • 第7章
  • 探検の五原則(7.2.1 p.216)
    • 定性的データを集める上でのコツ
    • (7.2.1.1) 360度の視角から
    • (7.2.1.2) 飛び石伝いに
      • 最初に何を取材するのか計画するのではない
      • 取材して得られた新しいデータを使って次の取材先が決まる
      • 飛び石のイメージ、最初のジャンプでたどり着いたところから、さらにジャンプ
    • (7.2.1.3) ハプニングを逸せず
      • 予定していなかった出来事もメモする
      • 計画したものだけを集めるのでは計画した時の思考の枠に収まったものばかり集めてしまうバイアスがある
      • 折にふれて採集
    • (7.2.1.4) なんだか気にかかることを
      • ある情報が役に立つかどうかは事前にはわからない
      • 人間には、理屈ではない、なにか嗅覚にも似た能力があり、この能力の方が理性よりも遙かに先行して、必要らしい情報を嗅ぎつける。あるいはこういうことかもしれない。人間に限らず多くの動物は、自分を取りまく全体状況を、全体として感じ取る能力がある。それは、分解して扱うなら視覚・時間感覚・嗅覚・触覚その他として個別にも扱える面があろう。しかも人間や他動物は、それらの認識能力を、単に並列的に個別に行使するだけでなく、また部分の総和以上の、分割できない総体としても感知する。そしてそれに対応して、状況というものはそもそも縫い目のない総体として存在するのである。

      • そのように捉えられた全体としての状況と人間や動物の総体的認知能力との間に調和的な交渉があるときは、人間や動物はそれを格別意識せず、「正常」と受け取っている。ところがそこに不調和が生じたとき、彼らは「異常さ」を感じる。 そしてその原因となったらしいものに注意を集中する。これが、ここで私がのべた嗅覚にも似たものかもしれない。

      • p.223
      • 理屈ではない、なにか嗅覚にも似た能力

      • 動物が生得的にこういう「全体状況認知能力」を持つことはおかしな話ではない
      • ヒトに限らずほぼすべての動物が繰り返される入力にあまり反応しなくなる(馴化の仕組み)
        • 相対的に、見慣れない刺激が強調される
      • 言語獲得によって人間たちは思考の対象を狭く絞ることができるようになったが、時々「絞らずに広いままにすること」を忘れてしまう
    • (7.2.1.5) 定性的に捉えよ
      • 定量的でないものを軽視してはいけない
      • 特にWの左側
      • 数値化しにくいものを無視してしまうバイアスを避けなければならない
  • (7.3.3) 泥くさく個別から喰いこめ
    • 僕が「具体的には?」と聞くのと同じ
    • してない
      • 抽象的な概念だと一見矛盾しているように見える
      • 具体的な事実を集めて観察すると、シンプルな「した/してない」ではないことがわかる
      • 一見矛盾してるものが統合できる
    • 関連
    • 「具体的にどういうことがありましたか」と聞くと概念的なタテマエが出てきにくい
      • どうすれば具体的な事実を引き出せるか
      • ソフトウェアのユーザーインタビューで「どうなるといいですか」と聞くと観念的な話が出てしまう
      • キャリアインタビューにおいても「あなたはどんな人か」では観念的な話が出てしまう、具体的にどのような行動をしたかの事実にフォーカスする
  • (7.3.4) 自由に語ってもらう
    • 「関係ないこと」と聞き手や話し手が勝手に判断してしまいがち
      • だが、人が話している時は無意識に連想のネットワークをたどっている
      • 聞き手にとって一見脱線したように見えても、話し手にとってはどこか関連している
      • ので、なぜつながっているかを現時点で言語化できないとしても事後的につながりがわかることがしばしばある
    • 何を聞きたいのか伝える方法として後述の「探検ネット」が使われる
  • (7.3.5) 同定とシステム化
    • われわれの世界、そしてわれわれを取り巻く世界は、考えようによっては連続している。自然はどこにも切れ目はないといえよう。その切れ目のない自然の中から、われわれは、何かを注目することによって、あえてひと区切りの物事を切りとり、取りだす。そしてそのものごとに、圧縮したひとまとまりの意味を与える。

    • それはちょうど、KJ法の表札づくりに似ているではないか。その圧縮が極端までゆけば、しまいには単語とか記号とかいったシンボ ル を与えるところまでゆく。このようにして、切断→圧縮→シンボル化 を行なっているのである。そ してそのシンボル群を組みたて、この世界を意味のある全体として掌握しているわけだ。(p.242)

    • こうやって世界の一部を切り出したものに名前をつけることで操作可能な対象とする
    • 個別的断片的よりも座標軸的知識の方が定着しやすい
      • nishio.icon記憶を司る海馬がそもそも周囲の地形に対応した脳内地図を作る振る舞いをしているから、断片的シンボルの記憶より空間の中に位置付けたものの方が記憶しやすいのだろう
    • 座標軸的知識の例
      • サルの個体識別に関して、サルの間の関係、例えばどの母の子か、ボス猿の序列、好む食べ物など
      • 人間に関して、家系図、役職一覧
      • 動植物に関して、
        • 図鑑: これは既成の知識体系を座標軸的知識にしている
        • 現地の人の使ってる名前、現地の人が考える分類
          • これはフィールドワークの中で見出していく
    • 座標軸的知識にするとたくさんの物事を覚え、必要に応じて動員しやすくなる=システム化
    • 別の表現をすれば、システム化するのがよいということである。まさにこの目的のためにKJ法が役立つのであるが、これを膨大な定性的データのいちいちについて 行なうことは容易でない。実務的ではない。そこで後にのべるように「探検ネット」という簡易なシステム化も必要になる(p.245)

      • 実務的とは「時間が掛かる」という意味nishio.icon

タッチネッティング

  • 取材の方法の具体的なプロセスについての解説
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    • p.283 一番上に探検ネットがある
  • (7.3.6) 点メモ・ラクガキ
    • 相手の話したことを一言一句文章として書き留めるのではなくキーワードやシンボルや図でメモする
  • (7.3.7) 清書化と貯金箱
    • 点メモは時間が経つと忘れるので、記憶がフレッシュなうちに清書する
    • 例えば昼にフィールドワークして見聞きした話を夜に部屋で清書する
    • 実例
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      • p.253
    • このペンとメモ用紙がくっついたものを「貯金箱」と呼んでいる
    • 個別の断片的メモだけよりも、時系列に並んでいるこの形の方が記憶が長持ちする
      • 「この時、こういう話をしていたなぁ」
      • 周囲のメモが思い出す助けになるから
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      • p.251
      • これを「点よりも線が強く、線よりも面が強い」と表現する
      • 面が強いから「探検ネット」を作ると良い、という話になる
  • (7.3.8) 探検ネット(花火)
    • 狭義のKJ法一ラウンド(第4章)では、グループ編成をしてからA型図解化の要素として空間配置をしている(p.123)
    • 探検ネットではいきなり空間配置をする(p.289)
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    • 〜という抽象概念での説明はわかりにくいと思う
      • 書籍でも次の章で丸々解説するので僕も後で説明する
    • コンピュータがない時代なので関係線をクリップを置くことで表現するとか書いてる
      • もちろんこのデジタルの時代にそういう物理的手段を使う必要はない
    • この探検ネットは西尾が普段やってることに近いし、川喜田二郎自身も9割近くは探検ネットとのこと
      • エンジニアの知的生産術p.170-173の「(5.3) 社会人向けチューニング」で「表札を作らずに直接空間配置をしました」と書いている
      • これを書いた時はまだ探検ネットのことをしっかり把握してなかった
      • 今思えばこれは探検ネットの再発明に近い
    • KJ法との違い(p.258)
      • KJ法はデータを収束していくためのもの
      • 探検ネットは発散的に新しいデータを求めていくもの
    • 似たような構図が叙述化にもある
      • p.140 内容説明か発想への踏み台か
      • 後者はストーリー化の途中で生まれたアイデアをストーリーの中に織り込んでいく
      • 調査結果をレポートするとかでないなら、文章化中に浮かんだアイデアは全部文章に入れる
    • 二次元の図解を一次元の叙述に変換していく過程で新しいアイデアが生まれていく
    • つまり最初に生まれた原初のKJ法たくさんのデータをどう「収束」していくかにフォーカスしていたが、色々使ってるうちに「これをやる過程で発想が生まれる」となった
      • どんどんアイデアが生まれるのを「今は収束フェーズだから入れるのをやめよう」というのは損失、どんどん記録して追加していく
      • このような考え方の変化が起きてきているので初期に書かれた「W型の左側の収束フェーズがKJ法」という考え方とはマッチしなくなってきている、小さなWがたくさんあるようになってきている
  • 残り
    • (7.3.9) データをカードに書いて長期保存する話
    • (7.3.10) 探検ネットが作られていることを前提として、データのピックアップをする話
  • これで「取材の方法」という大きな章が終わる

質疑1

  • Q: 探検ネットでデータが増える?
  • A: そうではなく、既に得られた情報を探検ネットすることによって、記憶が定着したり、次にどこを探検すべきかのアイデアがでる
  • Q: データを見て、次にどこを見に行くか決める感じか
  • A: そう、探検の五原則の「飛び石伝いに」をやる

質疑2

  • Q: 小さいWでも収束と発散は分かれている?道具は同じで、発散する時にやってることと収束する時にやってることは違う?
  • A: 川喜田二郎はまずここの部分を解決する方法としてKJ法を作った、これは明確に「収束」を目的としたものだった
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    • でもその後の時代が進むに連れてこのKJ法の構成要素をあちこちで使うようになってくる
    • そうなると「これは収束のための手法である」とは言えないよね
  • Q: 発散にも使う?
    • A: 発散にも使う。
    • というより「きっちり『収束するため』に限定して使うと、得られるものが減るよね、今これをやる目的って本当に収束することですか?」という感じ。
  • Q: ある瞬間にどっち向きの作業をしているかは意識されないということ?
    • A: 意識しても良いんだけども「収束フェーズをやるぞー」と活動している最中に新しいアイデアが出たらどうしますか、という話。
    • Q: 中断して発散をやることもある、と
    • A: 少なくともメモを取るべきだと僕は思います。忘れてしまうのはもったいないので。とはいえメモを取るならばデータの量は増えるのだから収束の方向とは逆行する。

質疑3

  • Q: 自分で思いついたことを紙に書く時って何が印などをつけて区別するんですか?自分ではわかってるから何もつけない?
  • A: 印をつけて区別したかったらしても良いです。「印をつけて区別しろ」というルールはありません。
    • 僕はつけない、川喜田二郎も「印をつけて区別しろ」というルールは作ってない
  • Q: 「事実をして語らしめる」という割には自分の考えと混ざっていったりしないですか
    • A: 「自分が〜と思った」は「事実」です
    • Q: それは詭弁では
    • A: いやいや、そもそもユーザインタビューでユーザが語ったことは真実というわけではないでしょう。「すべてのデータは間違っている」が大前提で、定性的データ、例えば「AさんがXと言った」の「X」は確定した事実ではない。
      • (7.2.1.1) 360度の視角から

      • すべてのデータは間違っている(すべてのデータはうそである)

      • p.70 事実とデータとはちがう

      • 事実を集めろと言ってるのではなくデータを集めろと言ってる、ここのところが誤解されがちだけど、この場合の「データ」とは定量的な数値データだけではなく定性的なデータがメイン(see (7.2.1.5) 定性的に捉えよ)
      • たとえば少数民族の村に行ってインタビューをするわけです、そしたらAさんがXと言ったとする、そういう定性的データが事実かというとそんなことは全然ない、事実に反することをしばしばいう
    • Q: Aさんが言った「X」は事実ではないとしても、「AさんがXと言った」は事実ですよね
    • A: そうですね(ここ間違ってます)
      • で、作りつつあるKJ法の図解をみて「私はYだと思った」も同様です
      • そこが混ざってしまうのが心配なら区別するマークをつけたらいいと思いますよ、自分が区別する必要があると思うならつけらいい。僕も川喜田二郎も区別するマークをつける必要は感じてない
    • Q: 文化人類学では明確にわけないといけないってなってると思うのだが、この手法ではその区別が重要ではないと思っている?
    • A: (KJ法以前のフェーズで)最初にデータを収集した時のログは残ってるわけですよ、それをみたら一次的データであるのか、二次的データであるのかの区別は容易にできるわけなので、まとめていくフェーズにおいて区別するかどうかは重要ではない

質疑4

  • Q: 思考をまとめて行くというフェーズにおいては、他人から集めたデータなのか自分の考えなのかはあまり区別なくまとめていって、人に伝えるフェーズ、例えば論文とか書籍にする時には切り分けた方が良いよねということ?
  • A: もちろん、論文とか書籍にする時に何が自分の解釈であるのかを明確にするというのは、当たり前すぎて言ってなかったけど当然Yesです。取材元が明確なデータは実際に文章にするときに「何々のソースからこうである」みたいに書かれるだろうし、そこから解釈したことは解釈として書かれるわけです。執筆はKJ法よりも後の段階。
  • Q: KJ法とか探検ネットは、自分が取材とかをして、自分が「何がどうなってるのか」を把握するためにやっている?
  • A: Yes, その把握するフェーズをやる時に「後で文章化する時にどう書くか」とかを一緒に考えようとすると話がごっちゃになってしまうんです。先程の質問の「分けた方がいいんじゃないか?」に関しても、最終的には分けた文書を作るのだけども、このフェーズでそのことを気にしなくてもいいんじゃないの、ということです。

花火とは何か?

  • 探検ネットの別名
  • 中央のテーマから四方八方に発散するから花火
    • ところがすべてがそうではない
  • 歴史的経緯で「花火」と呼ばれている概念に幅がある
    • 「探検ネット」と呼ばれたり「花火」と呼ばれたりするのもそのせい
    • KJ法的発想を色々な目的に応用した、目的に幅があるからやり方にも幅がある
    • 初めての人は混乱してしまいそう

ざっくり歴史的経緯

  • 元はブレインストーミングにKJ法的発想法を持ち込んで改善しようとする試みだった
    • パルス討論」という名前
    • ブレスト中に自分の発言を点メモし、各自が最初してから、みんなで1枚ずつ空間配置
    • それを見てからまたブレストをするとより良いブレストになる
    • image
      • p.359
  • これが取材のプロセスに組み込まれる
    • 先述の「タッチネッティング」の「探検ネット」の部分
    • image
      • p.283
    • これは取材で集まったものをまとめることが目的
    • 点より線が強く、線より面が強い
      • まずは鮮やかな記憶のためだった
    • 加えて、もっと取材すべきテーマがわかるとか、その後のインタビューでよりよくメモが取れるなどの副次的効果があった
    • 複数日にわたるフィールドワークで、データを集めることだけに専念して、持ち帰ってからKJ法でまとめようとするよりも、毎日KJ法的なまとめ方をした方が良いな、となった
    • しかし、後に「狭義のKJ法」と呼ばれるようになった、この時点で言語化されていたKJ法のプロセスに従おうとすると時間が掛かりすぎてしまう
    • そこで「探検ネット」というラフな手法が生まれた
      • グループ編成をしないでいきなり空間配置
      • 「グループはせいぜい5枚」というルールの撤廃
      • 表札づくりを厳密にやらなくて良い
  • 発散的思考の探検ネットが生まれる
    • 上記の「データをまとめるため」の探検ネットをやっているうちに、それが新しいデータを集めるプロセスの支援にもなることに気づいた
    • テーマに対して多角的にデータを集めるために、真ん中にテーマを置こう、となる
    • ここで打ち上げ花火的な形状になり「花火」と呼ばれるようになる
    • 後に、まとめる目的のラフなKJ法を「統合型花火」真ん中にテーマを置いて発散的に作るこちらを「探検型花火」と呼ぶようになる
      • 後から花火と呼ばれるようになっただけなので統合型花火は全然打ち上げ花火の形ではない
      • image
        • p.257
    • 探検型花火と統合型花火の比較(p.301,302)
      • imageimage
  • その後でフィールドワークの文脈から切り離して使われるようになる
    • 考えるために花火を使うから「考える花火」と呼ばれるようになった
    • 真ん中にテーマを書いて、連想したことを周りに書いていく
      • nishio.iconここはマインドマップっぽさもあるね
        • マインドマップがツリーを書いていくのに対し、考える花火は密なネットワークを作っていく
    • デジタルな文房具がなかった時代なのでクリップを置くことで関係を表現していた
      • image
        • p.307 質疑
  • Q: 花火って言葉が出てきたのは真ん中から広がるから?統合型はなぜ花火?
  • A: 先に探検ネットが生まれた、そのうちの中央から広がるものを花火と呼ぶようになった、それだけではなく探検ネット自体も花火と呼ぶようになった
  • Q: 拡大解釈したわけ?
  • A: そう

KJ法と何が違うの?

  • KJ法と花火は双子の兄弟、と川喜田二郎は言っている
  • 用途に違いがある〜
    • 〜とは言うが、特に統合型花火はKJ法が担当していた「まとめる」ことを担当していたから違いがわかりにくい
    • 探検型花火や考える花火に関しての主張「発散的思考に真価がある」は一理あるがその説明の仕方は「発散的」の解釈揺れで結局伝えたいことが伝わらないと思う
  • 構成要素には共通点が多く、組み合わせ方に違いがある
    • KJ法は「ラベルを集めて表札をつけて束ねる」
      • KJ法がほんとうにわかるには100枚以上必要と言っている
      • nishio.iconなぜ束ねるのか、それは多すぎるデータを圧縮するため、だから圧縮の必要ない量のデータでやってても理解できない
      • 束ねて10枚以下にしてから空間配置をする
        • nishio.icon7±2ってことだろう
    • 花火は束ねない、いきなり空間配置をする
      • 考える花火のラベルは30〜60枚と言ってる
      • 統合型花火の時は取材で集まったデータ次第なので多くなることもあるんじゃないかな
        • その状態でいきなり空間配置するために「10枚取り出して空間配置」というテクニックを使っている
        • nishio.icon要するに、重要なのは空間配置(して座標軸的知識とか認知の地図とかを作ること)であって束ねることではない
          • 100枚のものを人間はいきなり空間配置できないので枚数を減らす必要があった
          • KJ法はそれをグループ編成して表札をつけて束ねることで実現していた
    • つまり「何が違うの?」に関しては「枚数が少ないから『グループ編成して束ねる』が必要ない」ということ

日々使えるものにするアプローチ

考える花火

  • 実例: 上記の花火についての解説を書くために行った「考える花火
    • image
  • テーマを考えて一仕事のWに位置付ける
    • 考える花火の目的は日々発生する問題について考えること
    • 考えて例えばネクストアクションを決めることが目的
    • (1)テーマを真ん中に置く
      • テーマは「問題」自体ではない
      • 今考えるべきことは何か
        • ネクストアクションは何か
    • (2)テーマをW型問題解決モデルのどこに相当するか考える
      • 結論が出た後に何をするのか明確にするため
        • 問題Xの原因を究明する
          • →データを集めて状況判断をしようとしている、C→D
        • プロジェクトの戦略を練る
          • →どうやって実行していこうかの構想を作ろうとしているのでD→E
        • プロジェクトの問題点をリストアップする
          • →特にデータなどなく問題だと思うことをリストアップしようとしてるならA
          • →集めてきたデータがあるのをまとめようとしてるならC→D
        • 「考える花火の説明を作る」
          • →集めたデータはあり、それをどう配列するか考えようとしているのでD→F
  • 1枚ずつ追加して密なネットを作る
    • (3)考えたことを1枚ずつ追加する
      • 1枚追加したらすぐ空間配置
      • 最初のラベルは必ずテーマから線を引き出す
    • 空間配置の三原則
      • できるだけ多くのラベルとの間に線がひける位置
        • (デジタルでやってるからやろうと思えばどこにでも線が引けてしまう、川喜田二郎は線をクリップで表現してたので物理的制約があった)
      • できるだけ短距離に線がひける
      • できるだけ線が交差しない
      • nishio.iconこれらは要するに「密なネットを作る」ということだと解釈してる
    • 考える花火の追加原則
      • まとめようという意識を持って空間配置しない
        • 終了時点ではラベル同士は密に線でつながっているが全体としては整理されてない「網のようなもの」ができる
  • 思索の流れを可視化する
    • 追加原則の続き
      • 思索の流れを尊重して空間配置
        • nishio.iconAから連想してBが出てきた時に、その連想の線を大事にするってこと
          • マインドマップでも同じですね
      • 民族大移動は避ける
        • nishio.iconせっかく可視化した考えの流れが壊れるから
    • 作りかけの状態の実例
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      • テーマに対して360度になってないなーという状態
      • 左の空欄に何を追加しよう〜と考えて「良いとは何か?」が生えた
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      • で、良い説明は使える説明で、微妙に違う色々な手法を詳細に語っても仕方がないので「考える花火」だけ説明しよう、という方針が生まれた
    • (4)ラベルを出し切ったら固定する
      • 川喜田二郎はラベルシールの台紙を剥がして貼り付けるイメージ
      • 僕はKozanebaのスクリーンショットを撮ってiPadに貼り付ける
      • 出し切った後の実例
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        • どこがグループかとかわからない、それが正しい
      • 今後動かしたくなっても動かさない
  • (5)統合図解化
    • 島どりを作る
      • 2〜3枚、多くても4〜5枚ずつ囲む
        • どこにも入らない一匹狼がいてもいい
      • 捜すマインドが大事
        • まとめるのではない、まとまりをみつける
        • nishio.icon密につながったネットを少しずつつまんで、だんだんまとまってくるイメージ
    • 島どりにそってタイトルを記入
      • KJ法でいうところの表札
      • 1段階くくった実例
        • (今まで出してたのと違うもの、今までやってたものはスクリーンショットを撮り忘れた)
        • image
    • これを5〜6個の島になるまで繰り返す
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  • (6)判断・決断する、行動する
    • 採用すべき結論や、新たに明らかになった問題に印をつける
    • 図解を作って満足しない
      • 目の前の問題に対するネクストアクションを決めるためにやった
      • 具体的ネクストアクションが明らかになったなら、それをやる
      • 叙述化、これもアクションの一つ
      • その他のネクストアクションの例
        • まとめる
          • 情報が多すぎてまとまらなかったら、ネクストアクションとして統合型花火やKJ法でまとめる
        • 見えてきた新たな課題について別の考える花火をする
          • 掘り下げてるうちにやろうと思ってたことができないことに気づいたなどのケース
        • 書き込み花火
          • この花火の図解に書き込みながら考える
  • 感想
    • 真ん中に置いたテーマについて360度の方向にラベルを置くことで「色々考えてたつもりだったけど視野が狭かったな」が可視化される
    • ガラ空きのゾーンを埋めたいなと思って、近くのラベルから連想して発展させる
      • 考えを多角的にする上でとても良いツール
    • 3枚作ったけど自分の思考から取材したものはみんな良い感じだった

質疑

  • Q: 「統合的なんちゃら」は一種の収束?
  • A: (統合型花火のことだと解釈した)一種の収束です。雑なKJ法です。
  • Q: 雑なKJ法は花火でやればいい、と
  • A: 花火という名前になる前の探検ネットですね
  • Q: それが統合型花火?
  • A: Yes。
  • Q: 島を作るという操作がその操作?
  • A: えっと、今回は統合型花火の手順の解説はしてないですよ、細かい違いの話をすると混乱するから省いた
  • Q: 今の話は「考える花火」で、その後半で「島を作る」があって
  • A: (ここまではYes)
  • Q: それが「雑なKJ法」と呼ばれてるもの?
  • A: いや違う。考える花火はKJ法のように「まとめる」「収束」が目的なのではなく、発散的に思考を展開してネクストアクションを決めるのが目的。考える花火をした結果、アクションが決まればOK、この図や構造がきれいにまとまることは目的ではない。
    • ネクストアクションが決まったならOKで、次はそのアクションを実行すれば良い
    • ところがネクストアクションが決まらないケースがある
    • いっぱい考えが出てきて収拾がつかないよーとか訳わかんないよーという気持ちになる
    • そうなった場合には「これを収束させるフェーズ」が必要になる
    • なので、この考える花火とは別に、この考える花火で作られたラベルからピックアップして、KJ法をするとか、KJ法の雑なものとして統合型花火をするとかをネクストアクションにしたらいい
  • Q: 島どりをした後、赤やオレンジで書いてあった言葉を出す操作は「収束」
  • A: Yes
  • Q: 考える花火のゴールは構造を作るところまで
  • A: No, 考える花火の目的は構造を作ることではなくネクストアクションを決めること
  • Q: 決めるために構造が必要
  • A: 決めるために全体像の把握ができると好ましくて、構造があると把握しやすくなる
    • 「表札つけて行くのはある種の収束だよね」という件に関して、確かに「ある種の収束」ではある
    • 狭義のKJ法は、その表札作りをかなり厳格にやろうとする、しかしそれだとしんどい、時間が掛かる、社会人が実務的に日常の仕事に使うのには適さない、だから考える花火が作られた
  • Q: この赤い文字を作るのは「雑」?
  • A: Yes, 川喜田二郎自身も「KJ法の表札づくりのように厳格にやらなくて良い」と書いている
    • そもそも束ねるわけではないので。
    • KJ法だと表札つけて束ねて、中身が見えなくなるから、中身が見えなくてもいいように表札をしっかり書く必要が出る
    • 花火だと束ねないので、表札の文章が多少雑でもすぐそばに中身のラベルがあるから意味の解釈に困らない
  • Q: 量の問題であって、やってることはあまり変わらないように思った
  • A: 初期の本で川喜田二郎が「厳密にやらなければならない」と書いちゃったので、それを読んだ人が真面目にやろうとすると大変すぎてあちゃーとなったから、反省して厳密にやらなくていい方法を作った

Kozaneba

  • 考える花火は面白いのでやってみるといい
  • 「考える花火をやる」をKozanebaを使う目的の一つとしてプッシュしていっても良いかも
  • Kozanebaを作ったときは考える花火のことを意識してなかったが、線と対立矢印がかけるので考える花火をやる上で使い勝手が良かった
  • Kozanebaが考える花火をもっとやりやすくなる方向に開発を進めても良いかも
  • Q: Kozanebaでネットまで作って、丸を付けるのは別途?
  • A: そう、スクリーンショットを撮ってiPadに貼ってノートツールで丸をつけてる
    • Kozanebaで自由な線を書くところまでサポートするのかどうか悩ましいですね
    • 柔らかい線で囲うことに良さがある気がする
    • image
    • 例えばこの例だと表札を書いた上でその「自信」「主体的」「あなたは」に関係があると考えて線を引いてる、これはなんでも自由に描けるツールであるからこそ行われた表現
    • 悩ましい、手書きだと検索しにくくなるというデメリットもある
    • ここのところはまだ「良いツール」が生まれていない

----以下未使用断片

ラベルにどれくらいの分量を書くか

なぜ束ねるのか

  • 枚数が多くなると脳内で処理できないから圧縮するため
  • KJ法
    • 10枚以下になるまで圧縮を繰り返す
    • nishio.icon例えば5枚を1枚に圧縮するなら25枚スタートで1回圧縮すると5枚になって完了
      • 125枚スタートだと1段階圧縮して25枚、そこからもう一段階圧縮して5枚

探検ネット勉強会Kozaneba1 探検ネット勉強会Kozaneba2 探検ネット勉強会Kozaneba3 探検ネット勉強会Kozaneba4 探検ネット勉強会Kozaneba5

KJ法のシンボルマーク

  • 体系に入れたのは1970年ごろp.157

KJ法 探検ネット 20年 アップデート Miro Zoom 環境の変化 アップデート

思いついたことはどんどん書く 傍に置いといたら良い 後でこのプロセスを振り返る助けになる

書籍を読む 読むの形 ラベルに刻んでKJ法をする 探検ネット 枚数が多くなりがち

発散的な花火をする 後でKJ法をやればいい

ラベル集めをたくさん集めるイメージ むしろ2枚でもよい、川喜田二郎は2枚で説明してから「2枚とは限らない」と説明している p.126

枚数が2倍になると 4倍しんどくなる

読んでるうちに忘れていく 速読できる人 心の中で音読してる人 慣れ

Kozaneba KJ法とは呼んでない