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まとまりのあるかんがえ、あるいは文章を構築するには、つぎのような技法が役にたつだろう。
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まず、紙きれを用意する。…
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その紙きれに、いまの主題に関係のあることがらを、単語、句、またはみじかい文章で、一枚に一項目ずつ、かいてゆくのである。おもいつくままに、順序かまわず、どんどんかいてゆく。…
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ひととおり、でつくしたとおもったら、その紙きれを、机の上、またはタタミの上にならべてみる。…
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紙きれを一枚ずつみながら、それとつながりのある紙きれがほかにないか、さがす。あれば、それをいっしょにならべる。このとき、けっして紙きれを分類してはいけない。
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何枚かまとまったら、論理的にすじがとおるとおもわれる順序に、その一群の紙きれをならべてみる。そして、その端をかさねて、それをホッチキスでとめる。これで、一つの思想が定着したのである。こうしてできあがった紙きれのつらなりを、わたしは「こざね」とよんでいる。
- ホッチキスでとめたもの:
- p.204
- ホッチキスでとめたもの:
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エンジニアの知的生産術で紹介したKJ法の流れと比較すると:
- 思いついたことを書き出す 書き出し法
- 並べて一覧性を高くする
- 分類するのではなく、つながりのある紙切れを見つけて一緒にする
- 筋が通る順番に並べる
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KJ法ではつながりのある紙切れを一緒にした後、口の中で説明してみてストーリーがつながるかどうかを検証する。
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こざね法は物理的に並べる。
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KJ法はこの後で表札を作るが、それはこざね法ではやらない。
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僕が執筆や講義資料の作成の際に付箋でやってるのはこざね法とほぼ同じ
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本人もそう書いてた p.206
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この方法は、かなりまえから、わたしたちの仲間のあいだで、すこしずつ開発がすすんでいたものであった。ところがそれを、理論においても実技においても大発展させて、たいへん洗練された技法にまでもっていったのが、KJ法の創始者として有名な、東京工大教授の川喜田二郎君であった。
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KJ法というのは、かれの頭文字をとって命名されたものであるが、異質のデータからいかにして意味のある結合を発見できるかという、いわゆる発想法の体系的技術として、最近たいへん注目されているものである。とくに、複数の人たちの「衆知をあつめる」法として、おおいに評価されて、各種の企業でも実用化されているようだ。わたしがここに紹介したこざね法というのは、単数個人用の、いわば密室むき知的生産技術であって、川喜田君の体系でいえば、比較的素朴で、初歩的な技法に属する。かれの体系のなかでは、「KJ法B型による文章化」とよばれているものと、ほぼおなじである。
- は、共創の前にまず独創と考えているので、KJ法に関してもまず「衆知をあつめる」の前に単数個人で知的生産に使うべきだと考えている。その点、こざね法と方向性は近い。
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僕もScrapboxを使い始めた初期には、ページが「こざね」の紙切れに相当するものと認識していて「なんでタイトルを強要するんだ」「並び方を自分で変えられないのか」などと不満を抱いていた。
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粒度の捉え方が変わって「ScrapboxのタイトルはKJ法の(複数枚のカードの束に対してつける)表札に相当するものだ」と考えるようになった。
- 関連 タイトルを後でつける