高度非言語思考
- 読み: こうどひげんごしこう
- 種類: 造語
一言要約
通常は言語に頼って行われるような高度な概念操作を、言語を経由せずに 行う思考法。宇田川氏が自覚的に実践している(と本人が言う)思考法で、デライトの設計にも反映されている。
詳細
宇田川氏の説明:
- 知能の高い動物や幼児が行う非言語思考は「原始非言語思考」と呼ぶ。それを高度なレベルでやるのが高度非言語思考。
- 「道具に頼らず思考の高速化を実現する」という意味で、原始 知能増幅(IA)技術とも言える。
- 16歳頃に自覚的に実践し、17歳での 輪郭法 のひらめきにつながった。
- これを支えていると思われる能力が 論理共感覚。
利点と欠点:
- 利点: 言語化にかかる負荷がなく、超高速で思考できる。誰も考えたことのないことを考えやすい。
- 欠点: 言語化を後回しにするので大きな「言語化負債」を抱える。社会的孤立、最悪の場合反社会性につながる。
デライトとの関係:
- デライトの言語化しにくさはこれに由来している。
- 現実にあるものは言語で綺麗には分解できない。
- 「言語を無視して、現実に作られてしまった『何か』がデライト」。
- それを言語的に説明するパターンが集約されない: KNS、知能増幅メモサービス、マインドクラフト、意味符号化システム、FPN……。「左側から見た犬、右側から見た犬、上から見た犬」のように、全てがデライトの違う一面。
先行概念
「非言語的に高度な思考をする」「言語化されない知がある」という観察は、認知科学・哲学で広く扱われてきた。
特に強い対応: ジェンドリンの felt sense
ユージン・ジェンドリン(Eugene Gendlin, 1926-2017)の「felt sense(フェルトセンス/体感)」 が、宇田川氏の「高度非言語思考」とほぼ同じ現象を指している。
- ジェンドリンの felt sense は「身体で感じている、しかしまだ言葉になっていない複雑な意味の塊」。
- 「言語化にかかる負荷がないので超高速で思考できる」「言語化を後回しにすると言語化負債を抱える」という宇田川氏の説明は、ジェンドリンの 「implicit intricacy(暗黙の複雑さ)」と「carrying forward(明示化への運び出し)」 の関係と構造的に同じ。
- ジェンドリンが半世紀(1962『Experiencing and the Creation of Meaning』〜1997『A Process Model』)かけて理論化し、フォーカシング(Focusing) という具体的な訓練法まで開発したのが、まさに「高度非言語思考」の探求。
宇田川氏が 17歳以降に傾倒したと述べる「ホワイトヘッド」はジェンドリンの理論的祖 であり、間接的な系譜の重なりがある。
その他の系譜
- 暗黙知(tacit knowledge)(Polanyi『暗黙知の次元』1966): 「我々は語れる以上のことを知っている(We know more than we can tell)」が代表テーゼ。
- Dual Coding Theory(Paivio, 1971): 言語的表象と非言語的(イメージ的)表象の二重符号化。
- Mental imagery 研究(Kosslyn ほか): 視覚的思考の認知科学的探求。
- Embodied cognition(Lakoff & Johnson『肉中の哲学』1999): 身体的・非言語的な認知基盤。
- Visual thinking(Arnheim, 1969): 思考そのものが本質的に視覚的。
- System 1 / System 2(Kahneman, 2011): 直感的・非言語的思考と熟考的・言語的思考の二項対立。
宇田川氏の独自性
- 自己体験を「論理を粘土のように扱う」と感覚的に語り、それを情報設計(論理共感覚)に直結させた表現。
- 「高度な」と限定することで、原始的(動物・幼児的)な非言語思考と区別する区分。
- デライトという形で「非言語思考の言語化負債を返す」具体的な道具を作った こと。これはジェンドリンが Focusing という訓練法に止まったのに対して、宇田川氏は「Focusing する場としての SNS」を作った、と読める。
- ただし、現象自体の理論化は Polanyi/Gendlin/Paivio 以来60年以上の蓄積がある領域。サーベイなしに「新概念」と呼ぶのは難しい。
関連用語
ソース
- villagepump-デライト.2hop.md (Page: 高度非言語思考)