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今回の「組織科学」が「現場における学習」特集で、佐伯 胖による記事が載っていて、イリイチのコンビビアリティの概念が出てきて、最終的に学ぶとは他者とコンヴィヴィアルな関係を生み出すことだ、と結論している。面白い。
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組織科学 Vol.48 No.2 pp.38-49 佐伯胖 “そもそも「学ぶ」とはどういうことか:正統的周辺参加論の前と後”
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正統的周辺参加論が生まれるまでの心理学の流れと、その後の変革の可能性についての話。
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1913年にWatsonが「行動だけに注目したら心理学も自然科学になる(逆に言えばそれ以外は科学じゃねーよ)」と言ってから心理学は行動主義の全盛時代になった。
- この時代の考え方は「行動が起きた直後に報酬を与えたらその行動が強化される」(オペラント条件付け)。
- ところがこれはだいぶ昔から破綻している。
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Krechevsky 1932
- ネズミの弁別学習の学習曲線の分析
- ネズミは行動を強化されることで学習しているのではない
- 何を弁別の手がかりにすれば良いかの「仮説」を持っており、誤った仮説を捨てることで急激に正解率が上がる
- と主張
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Tolman 1948
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などなど、あと2つほど例が挙げられている
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要するに動物に関して「刺激と反応の連合で学習してる」ってモデルは破綻してるよね、という話。
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ところが、このモデルに基づいたCAIや行動療法は成果を出している。なぜ誤ったモデルに基づいてるのに成果が出るのか?
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ここから更に衝撃の展開。
- 仕組みが見えない装置で特定の手順で操作をしてお菓子を取り出すことをチンパンジーと人間の3歳児にお手本の動作を見せることで学習させると、どちらも同じように学習する
- その後中の仕組みを見えるようにして「なんだよ、手順の大部分は無意味じゃないか」と分かる状態にする
- チンパンジーは無意味な手順をスキップするが、人間は無益な手順を忠実に実行する。(Whiten+ 2005)
- 人と他の動物の大きな違いは「文化」であり、意味が不明なまま「こうすることになっている」と教えられたものを「盲目的に」伝承すること(Gergely&Csibra 2006)
- 僕の解釈
- 各個体が自分の頭で考えて行動している種よりも、一部の頭のいい個体が新しいルールを作り出し、残りの個体が自分で考えずに盲目的にそのルールに従う種の方が生存に有益で、自然淘汰によりそちらが選ばれたのではないか。
- これは常に自分の頭で考えることを是とする僕の価値観にとってはかなり衝撃的。
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さて、全体のストーリーの中ではこの話は脇道
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元の道に戻ると「こうやって行動主義が破綻して、他にどういう道があるか」と試行錯誤されていた1956年に4つの画期的な研究が発表された。
- Bruner+の「人間は仮説を立て、その検証をし、修正する」、
- Millerの「短期記憶は7±2」、 Miller1956
- Newell&Simonの定理証明系、
- Chomskyの生成文法
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その後、2つの考え方が登場
- 人間の情報処理にフォーカスを当て、鍵概念は「プラン」であるとするMilner+の考え方
- 人間は感覚の入力から意味のあるまとまりを生成しようとしているのだ、というNeisserの認知心理学の考え方
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後者が主流になる
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Winogradの自然言語の理解(あの有名なSHRDLU)で知識や言語をどう表現するかという趨勢が高まり、学校で算数を学んで間違える生徒も脳内のプログラムにバグがあるからだという視点からバグを特定してそのバグを修正するという方向性の研究が盛んになる。
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これに対して人類学的観点が必要だと言い出したのがPiaget 1974。#ピアジェ
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しかしその考え方が有効であることが示されたのはSuchman 1987。
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LaveがSituatedという言葉に感銘を受けて1991年にSituated Learningという概念を提唱する。
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ここにおいて学習とは「人が実践の共同体に参加することによってその共同体の成員としてのアイデンティティを形成すること」と定義されるものになる。
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佐伯 胖はここで、この正統派周辺参加論は「人はなぜ学ぶのか」についての問がなされていないと批判する。
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イリイチのコンヴィヴィアリティは、普段は「自立共生」という訳語が当てられるけど、古瀬は共に楽しむ「共愉性」という言葉を当てている
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共愉的な社会を生み出すにはReddyの自分の子の観察の話を紹介して、三人称的に観察する関わりかたではなく二人称的な、対象をこちらの行動に反応する存在で、かつ基本的に楽しいことを好む関わりが必要だ、としてる。
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よって、学ぶとは、他人をコンヴィヴィアルな存在だと考え、コンヴィヴィアルな関係をつくろうとすることだ、という結論につながる。