鈴木 健「スノウ・クラッシュ」解読 (2008)
- [[セカンドライフ]]は、[[Linden Lab]]社が開発した[[仮想世界]]。
- リンデンラボの創設者たちは、ニール・スティーブンソンのSF小説「スノウ・クラッシュ」にインスピレーションを得ていた。
- 「スノウ・クラッシュ」は、[[アヴァター]]や[[メタヴァース]]の概念を初めて紹介した作品として知られている。
- 「スノウ・クラッシュ」の舞台は近未来のアメリカで、政府の力が弱まり、[[フランチャイズ国家]]が力を持つという状況が描かれている。
- フランチャイズ国家では、独自の法律と保安体制が存在し、大統領の権力が及ばない。
- メタヴァースでも同様の構造が見られ、特定のエリアには特定のメンバーしか入れないような設定がされている。
- [[ゲーテッドシティ]]
- 「スノウ・クラッシュ」の世界観は、[[リバタリアニズム]]、すなわち最小限の国家介入を主張する思想を反映している。
- 作中では、メタヴァースと現実世界がパラレルに存在し、交錯することはない。
- 主人公ヒロは、ピザ配達員でありながら、メタヴァース内で戦闘ルールのコードを書く著名な[[ハッカー]]でもある。
- 物語はメタヴァースでのウィルス攻撃から始まる
- ヒロの友人Da5idはスノウ・クラッシュウィルスに感染し、実世界でも病院送りになる
- ヒロはメタヴァースの人工知能ライブラリアンとシュメール文化について対話を始める
- 五千年前のシュメール文化では「ミー」(規則やアルゴリズム)で社会がコントロールされていた
- 「ミー」は人間の行動をプログラムし、社会の基盤となっていた
- メディア王L・ボブ・ライフは「ミー」を用いて支配しようと企む
- シュメール神エンキは「ミー」を書き換え、言語の多様化と自意識の芽生えを引き起こした
- ライフは二つのウィルスを世界に蔓延させようとする - 一つは人間の脳を書き換え、もう一つはコンピュータやハッカーの脳を破壊する
- ライフの目的は自分の信者を増やし、ハッカーという[[パワーエリート]]を撲滅すること
- ヒロはライフの計画を阻止しようと空母エンタープライズに乗り込む
- 「スノウ・クラッシュ」の主なテーマと考察:
- この作品は、二つのテーマを扱っています:
- 法のプログラミング
- 心のプログラミング
- 法のプログラミングについて:
- メタヴァースでは、各エリアのオーナーがルールを自由にコードで書き換え、秩序を維持します。
- これは例えば、セカンドライフのLinden Script Languageを使ったオブジェクトの挙動コーディングと似ています。
- 心のプログラミングについて:
- 古代シュメールの技術「ミー」は、心のプログラミングとして表現されます。
- これはチョムスキーの言語観やリチャード・ドーキンスのミーム理論から影響を受けています。
- しかし、現在、心のプログラミングはまだ可能ではありません。
- 作品解読:
- 「スノウ・クラッシュ」は、人工言語(プログラミング)、自然言語、神経言語(ミー)、生物言語(DNA)、社会言語(宗教、ミーム)を交差させて、サイバースペースと国家の関係を描いています。
- 近未来社会における情報の力:
- ミーを使用して心のプログラミングを行った古代シュメールのフランチャイズ化された寺と同様に、近未来社会ではフランチャイズ化された文化コントローラーがマニュアルをプログラミング化していきます。
- これは[[消費文化資本主義]]への批判とも解釈できます。