2018-04-17

  • 「ICTと産業」
    • 東京大学大学院経済学研究科・経済学部
    • 産業にイノベーションを起こしている企業の実務担当者等をゲスト講師とするオムニバス講義
    • 受講学生の主体は経済学研究科の大学院生
    • PCだと右のノートアイコンからStart Presentationできる

image ICTで社会が変わる事例紹介 東京大学大学院経済学研究科・経済学部オムニバス講義「ICTと産業」第2回@2018-04-17

サイボウズ・ラボ主幹研究員/東京工業大学特定准教授 ビープラウド技術顧問/一般社団法人未踏理事 博士(理学)/技術経営修士(専門職)西尾泰和

image Facebook非公開グループ 2 授業後のアフターサービス (講義資料の共有、補足、質問に答えるなど) のためにFacebookグループが作ってあります

image 自己紹介 3 働き方改革を自分の身で実験中

  • 東京工業大学 特定准教授
  • 一般社団法人未踏 理事
  • ビープラウド 技術顧問
  • サイボウズ・ラボ 主幹研究員 副業(サブワーク)ではなく複業(パラレルワーク)

image 著書 4

image コーディングを支える技術 5 2013年発売 陳腐化しにくい知識にフォーカス 5年経った今でも売れ続けている

image 小学生向け 6 “30日でできる! OS自作入門”の川合さん(同僚)と共著 “コーディングを支える技術”を小学生向けにしたような本 2018-03-28発売

image 東京工業大学特定准教授 7

東京工業大学環境・社会理工学院 イノベーション科学系 技術経営専門職学位課程特定准教授

ICT技術がもたらす社会の変化 (特に組織構造と知性のありかたの変化)に興味あり!

image 一般社団法人未踏理事 8

•未踏とは? •一般社団法人とは? •理事とは?

image 未踏事業とは何か?  9

経済産業省所管の独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が行っている 突出した IT人材の発掘・育成事業

2000年現在のべ1600人超の卒業生 発掘しただけでは散逸する。核が必要

image 一般社団法人未踏 10

2014年、未踏の卒業生を中心に 色々な方のご協力・ご支援を得て 一般社団法人未踏が設立される。

理事・監事: 一般社団法人とは: 株式会社から利益配分権をなくした法人(代わりに税金が安い)

理事とは: 法人の意思決定をつかさどる役職(株式会社でいう所の取締役) 第4回の久池井さんは本業の関係で理事になっていないが、運営にアドバイスを頂いている。

image 11

image 一般社団法人未踏の目的 12

創造的人材の業界横断的ネットワーク ↓ ITを中心としたイノベーション

“未踏事業のOB/OGを中心に、創造的人材を多角的に支援し、業界横断的なネットワークをつくることで、ITを中心としたイノベーションを加速することを目的に設立された社団法人です” http://www.mitou.org/

image 日本経済の発展の為に未踏と連携 13

2017年、一般社団法人未踏主催のイベント「未踏ナイト」にて、 世耕経産大臣が未踏と経産省で連携していきたい旨の冒頭あいさつ

世耕大臣「経済産業省として単に応援するだけでなく、 共に連携をしながら、刺激を与えながら頑張っていきたい」

落合陽一「世耕経産大臣,未踏ナイトでの冒頭挨拶にて, 未踏の年齢制限撤廃と予算の拡充, 起業土壌の養成のために規制と規制緩和について 経産省として取り組んでいくことを表明. 一般社団法人未踏で未踏クリエータと大臣のトークした甲斐があった!素晴らしい.#未踏会議https://twitter.com/ochyai/status/840153093933154305

image 自己紹介 14 半分終わった •東京工業大学特定准教授 •一般社団法人未踏理事 •ビープラウド技術顧問 •サイボウズ・ラボ主幹研究員

image ビープラウド技術顧問 15

image PyQ機械学習コースの監修 16 西尾監修で初心者でも1から機械学習を学べる

image 参考: “if文から機械学習への道” 17 機械学習を身近に感じられない聴衆のために、 if文と機械学習の間を一歩ずつ進むことで地続きにする講演をビープラウド主催で行った。 後半に実務で機械学習を使う上での注意点。

2017年9月公開以来、 8万view以上ある人気の講演資料 https://www.slideshare.net/nishio/if-80195170

image ビープラウドの複業の取材記事 18 https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m001358.html

image 複業は学びの速度を上げる 19

image サイボウズ・ラボ主幹研究員 20 サイボウズという会社の研究部門 「サイボウズ・ラボ」にて中長期的に研究開発をしている 2007年、博士(理学)取った後1年間東京大学でのポスドクを経て新卒なのか中途なのかよくわからん入社

image サイボウズとは?  21 社員がこんな複業をすることを許す「サイボウズ」って会社は何なんだ?

image 紹介しようと自社サイト見たら 22 何の会社なんだ?!

image kintoneという製品を作ってて… 23 東京駅などの交通広告で見た人もいるかも? でも「キントーン」と「サイボウズ」がつながってないかも?

image 真面目に説明すると 24 •創業20年(2000年に上場、‘06から東証一部) •グループウェア国内シェアNo.1 (11年連続) •クラウド(cybozu.com)だけで1万社以上、35万人以上が使っている。 ←クラウド ←クラウド https://cybozu.co.jp/company/job/recruitment/business/

image グローバル展開25 サンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨーク 上海、深セン、台湾、ホーチミン、シンガポール フィリピン、インドネシア、タイ、ミャンマーインド、シドニー https://cybozu.co.jp/company/job/recruitment/global/

image Platform  26 日本企業がプラットフォームを作ることができてない、 なぜか、という議論があったりする?

image Platform 27 http://group.cybozu.jp/news/16042501.html

image Platform 28 •アメリカのガートナー社のレポート •aPaaS(application platform as a service) •主要なエンタープライズ・ベンダーの一つとして日本企業で唯一掲載 http://group.cybozu.jp/news/16042501.html

image Platform 29 https://topics.cybozu.co.jp/news/2017/07/14-4153.html

image Platform 30 •クラウドネイティブなWebアプリケーション開発プラットフォームである「kintone」 •2017年追加された「エンタープライズ高生産性アプリケーションプラットフォーム」 •ガートナーにより主要14ベンダーの1つに選出 https://topics.cybozu.co.jp/news/2017/07/14-4153.html

image 事実と解釈 31 •サイボウズ社内では事実と解釈の区別を重視 •“日本企業はPlatformを作れていない”は解釈そう解釈する人がいるのは事実 •ガートナーは”サイボウズはPlatformを作っている主要14ベンダーの1つ”と解釈した。そう彼らが公表しているのは事実 •事実としてPlatformを作れてるのかどうかはPlatformの定義次第。僕は議論する気はない。具体的な事実を紹介する。

image 事例紹介: IRODORIシステム 32 •過疎化・高齢化の進む上勝町•日本料理の”つまもの”である葉っぱのビジネスで年商3億弱、年収1000万のおばあちゃんも。 •高齢者がタブレットやPCで全国の市況を見て”葉っぱ”を収穫し出荷する。 http://www.irodori.co.jp/asp/nwsitem.asp?nw_id=2&design_mode=0 https://www.amazon.co.jp/dp/4797340657

image 33

image 情報システムによる市場の誕生 34 •情報システムの導入によって情報の流通がスムーズになった •需要の情報がすぐに供給者に伝わることでタイムリーな生産が行われる •タイムリーに生産されることで需要が増加する •ポジティブフィードバックが起きて3億円市場が誕生した

image 事例紹介:三浦市農協の配車予定作成システム 35

image 「出荷作業8時間を1秒に」三浦市農協で起きた驚異の進化 36 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12062

image アルゴリズムで8Hの仕事を消す 37 •“農協の業務の中でもやっかいな出荷物の配送予定の作成” •“1日8時間かかっていた作業がわずか1秒で済む” •“独自のアルゴリズム”

このアルゴリズムを作ったのが僕。 「出荷作業8時間を1秒に」三浦市農協で起きた驚異の進化 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12062

image “配送予定の作成”とは 38 •“翌日に農家から出荷される出荷物の量を把握し、 市場などの配送先ごとの出荷数量と、荷物をどの運送会社のトラックにどう積み分けるかを決める。” •配車予定の作成には、中堅職員で8時間、ベテランでも56時間掛かっている。 •若い職員「こんなのはさすがにやれない」

「出荷作業8時間を1秒に」三浦市農協で起きた驚異の進化 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12062

imageAIが仕事を奪う“って悪いの?  39 •“AIが仕事を奪う”をネガティブなニュアンスで使う人がいる。 •今回の1日8時間、人間およそ1人分の仕事を奪ったが… •“同農協共販部長補佐の飯島昌祥さんは「労働時間の短縮が一番大きい。職員の負担が減るし、空いた時間を営業などに効率的に使えるので期待している」“とポジティブ

image 人口ピラミッド 40 出典:国立社会保障・人口問題研究所 http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/pyra.html

image 人口の変化 41 僕や僕より若い世代は毎年人数が減る環境で育ってきた

image 7人に1人いなくなる 42 今後15年で7人に1人の割合で20代人口が減る。

image 7人に1人いなくなると… 43 今7人チームでやっている仕事は、 チームの年齢構成が変わらないなら15年後には6人でやらなければならない

仕事量が変わらなければ1人当たりの仕事量は17%アップ

月20日×8時間働いている人は仕事が17%アップで月に+27時間。 毎日残業+1時間か、毎月休日-3日

image 現状維持とは 44 「今までと同じ仕事の仕方をする」は現状維持ではない。

人間の負担が増えて仕事が回らなくなる。

これ以上人間の負担を増やさず、仕事を回し続けるためには、 7人に1人の仕事が“AIに奪われる”必要がある。

image 3人に1人いなくなった 45

2000年からの15年で3人に1人いなくなった。 もっと早く”仕事を奪われる”べきだった。 過去を嘆いても無益なので今から大急ぎでやる!

image 何がボトルネックか?  46

image 何がボトルネックか?  47 •データがない •データがデジタル化されてない •データがデジタル化されてても分析に使えるきれいなものではない

image 機械学習コンペと実社会の違い 48

(Kaggleなど)機械学習コンペでの機械学習 綺麗に整理された十分な量のデータ→機械学習→結果

実社会での機械学習 データ収集→綺麗に整理された十分な量のデータ→機械学習→結果

image きれいなデータを得るしくみ 49 きれいなデータを得るしくみ作りが必要。 情報系の学生に講義をする時には

実社会は大部分が人間で構成されていてコンピュータプログラムは構成要素のごく一部

って言ってるけど、ここは経済学部だからわかるよね?

image インセンティブが必要 50 •「データが必要です」と口で言うだけではデータの収集は進まない、仕事が増えるから •8時間の作業が一瞬になり仕事が減るなら、人間がデータ収集に時間を使うようになる •これによってデータが集まり始める データ収集→綺麗に整理された十分な量のデータ→解く→結果→データ収集に戻る

image 悪いサイクル 51 •きれいなデータは経営資源である •しかし資源を持たない人は、その資源から価値を得られない •その結果、その資源を持つために人や時間など他の資源を使う投資が、魅力的でないように見える

image 良いサイクル 52 •データ収集のインセンティブを作る •データを収集するようになる •蓄積されたデータが具体的な価値を生む •データ収集に価値を感じるようになる=インセンティブ

image 段階的成長のメンタルモデル 53 •最初から完成形を作ろうとするのではなく将来大きく育ちうる「種まき」をする •スモールスタート:最初の一歩が小さくなることで、顧客が一歩踏み出しやすくなる •「最小限の実現可能なプロダクト」(MVP)*

エリック・リース「リーン・スタートアップ」

image ここまでのまとめ 54 •情報の流通が価値を生む •情報の蓄積が価値を生む •どちらの事例も小さく始めて大きく育てる

image ICTによる組織構造の変化 55 ここまでの話はいったん伏線としておいて ここからは別のことを考えてみよう

image グループウェアって何?  56

image グループウェアって何?  57

グループ+ソフトウェア 複数人で使うソフトウェアのこと

image 何のために複数人で使うのか?  58

image 何のために複数人で使うのか?  59 情報の流通 情報の蓄積

image 情報の蓄積と流通 60 サイボウズが使ってるkintone上の「2018年新入社員」という場(スペース)では 今年の新入社員が日々いろいろ書いていて他の社員がコメントやイイネをしている。

僕は2007年4月3日16:55にサイボウズOfficeに 「西尾のひとりごと」という場(掲示板)を作って勝手に色々書き始めた。

それから今までに22376件の書き込みがある。 今この場から接続して10年前の新入社員(僕)が日々どんなことを考えてたか見ることも可能。

image ICTによる組織構造の変化 61 グループウェアの導入によって情報の流通・情報の蓄積が起こる これがどういう効果を生むのか考えるうえで少し昔と比較してみよう

image 思考実験:大人数への情報伝達 62

BC3500年頃のメソポタミアでは大規模な組織的農業が行なわれるようになった。

メソポタミアは太陰暦を採用していて、暦と季節がうまく対応しない。

大勢の農民が正しい時期に種まきをするためには 天文観測ができる人から大勢の農民への情報伝達が必要だ。どうすればできるか?

image 思考実験:大人数への情報伝達 63

当時情報通信技術はあまり発達しておらず生身の人間による情報通信が主で、 人間が単位時間にさばける情報量が通信のボトルネックだった。

この状況がもたらすものをわかりやすくするために 制約条件を極端に強めて「1人の人は4人としかやりとりできない」と仮定してみよう

この条件下で大人数に情報伝達するにはどうすればよいか?

image ツリー構造の発生 64

  • 1人から情報を受け3人に伝達する「中間管理職」を置けばよい

image 階層ごとの役割分担 65 A)「やること」(いつ何をどうやるか)を決める人 B)「やること」を正確に伝える人 C)「やること」を正確に実行する人

上の人がやることを決め、中間の人が正確に伝達し、 末端の人が正確に実行する「階層組織」のメンタルモデル

image 情報伝達力の改善 66 今、僕は50人くらいに情報伝達している 同じ時刻に同じ場所に集まれば1人1人個別に話すよりも効率的に伝達できる

古代ローマでも演説による情報伝達は行われていた マイクとスピーカーによって、さらに大勢に伝えられる。 アドルフ・ヒトラーはマイクを使うことで1000人以上に声を届けることができた

image 場所の制限をなくす 67

動画を中継すれば同じ場所にいなくてもよい

サイボウズは大阪や上海にも拠点があるが、 毎月の全社イベントは動画中継されて離れた拠点からでも見ることができる。

場所の制約のない同期的メディアは歴史的には、ラジオ、テレビ、と来てから、インターネットによる通信コストの激減でテレビ局でなくても動画中継が可能になった。

image 時間の制限をなくす 68

動画をサーバに置けば、いつでも好きな時に見ることができる。

「同じ時間に」という制約もなくなる。時間の都合があわなくても伝達できる。

しかも蓄積する。

もちろん動画サーバより前に、文字を使う「御触書」の掲示や、号外新聞などの形があった。

image 情報発信のコストの低下 69 •動画中継は機材や人員のコストが高いが文字での情報発信は低コスト •複雑な手続きなしに誰もが情報発信できる場ができることで情報発信が増加 •カメラのついているスマホの普及によって写真や動画を添付することが容易に

Twitterを知らない人はいないよね?

image ここまでのまとめ 70 階層組織は情報通信技術が未発達な状況で大規模な情報伝達をする際に有益だった 情報通信技術の進歩により情報伝達・情報発信のコストが下がった。

image 当たり前?  71

僕が大学生だった2000年、 学生同士でインターネットを介してグループチャットをしていて、レポート締め切り前には深夜まで議論してた。

今の学生さんも、なんらかのツールで似たような情報の流通をやってるんだろうと思う。

今20歳の人が物心ついたときにはこういう情報流通ツールは当たり前に存在した

僕はICQとYahooメッセンジャーだったけど、今だとLINEとかSlackなのかな?

image 25年ほど前の話 72

1992年発売 “現在使われている電子メールは一般に文章しか送ることができません” NTTの研究所所属の著者らが実験的にファイル添付を体験し始めたぐらいの時期

溝口文雄,児西清義“チームの知的生産技術”

image 25年ほど前の話 73

この本が紹介する進んだICT利用事例(DTP) •原稿はメールだとそのまま投入できて便利 •ファイル添付はできないのでゲラはFAX •絵の入稿はFAXだと画質が足りないため郵送

「チームの知的生産技術」

image ツールは変わった。ルールは?  74

25年前に既に大規模だった組織は当時の技術力で 大人数を管理するための組織構造やルールをその時点で持っていた。

情報通信技術、ツールの進歩に合わせて、そのルールを改善してきたか?

image これは当たり前??  75 •子供ができる •子育てのために1日8時間勤務ができない •だから退職する

image •子供ができる 76 •子育てのために1日8時間勤務ができない •だから退職する •↑なんでだよ!

image 当たり前ではない 77 •人が足りない •業務を覚えた人が辞めるともったいない •「8時間労働できない」が理由なら8時間労働を求めるルールがおかしい •時短勤務、リモートワーク、育児休暇6年取っていいから一段落ついたらぜひ戻ってきて!とするのが当たり前では?

image “100人いたら100通りの働き方”  78

image 新しいマネジメントの仕事 79

「1日8時間同じ場所に集合する」という前提を取り払ったマネジメント

一律のルールを強要するのではなく メンバーそれぞれのニーズを理解してそれに合わせてルールを変えていく

人間で構成されたシステムの設計変更をする“人間システムエンジニア”

image 「部署の壁」問題 80 階層組織のもう一つの問題点 他部署が遠い

image ジョブローテーション 81 この問題に対する昔の対処法がジョブローテーション 定期的に職場の異動や職務の変更を行う これによって他部署との間に人的ネットワークを作ることができる

image アクセス権の概念 82

なぜ隣の部署の情報にアクセスができないか

情報が紙で共有されていた時代、 情報の一部に他部署に見せられないものがあると全部へのアクセスを禁止するしかなかった

デジタルの時代、アクセス権の設定で、 情報の一部の見せられない部分だけ部分的に隠すことができる

image アクセス権 83

データの一部のみの公開・非公開ができる 雑に例えるなら、Google FormsにGoogle Spreadsheetをくっつけて、 列や行に対して人や部署に対してアクセス可否を設定できるようにしたようなもの。 https://jp.cybozu.help/ja/k/user/rights

image アクセス権による情報流通促進 84 •アクセス権設定によって「見せてはいけないところ」だけ隠す •それ以外は全社公開する •「見なくてもよいが見ることが可能な情報」の社内での流通が促進される

image 事例1  85 サイボウズの本部長会議などの議事録は 一部を除いて全社員に公開されていて誰でもコメントを付けられる

大部分はここでは公開できない話題だけども、一部の議論を許可を得て紹介https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m001358.html

image 事例2  86 •研究部門の僕の週報は一部の非公開情報以外は共有されている •あるA社さんから技術的な相談を受けてそれを週報で報告した •営業本部のBさんは、A社についてグループウェアを全文検索して これを発見しグループウェア上で僕にメッセージを送信

image 事例3  87 •営業本部のCさんは、D社について全文検索 •人事のデータからEさんが以前D社に勤めていたことが分かった •Eさんの知識が有効に生かせる可能性がある

image 「意外な結合」という価値 88 •先入観で対象を絞らずに検索すると意外な情報が手に入る •情報システムが特定の部署に閉じてるとこういう意外な発見は起こりにくい •「隠すべきところ」だけを隠して残りを全社公開することで、 部署をまたいだ情報の流通が促されて価値を生んでいる

image カジュアルな情報発信 89

•「見なくてもよいが見ることが可能な情報」の流通促進のために、 情報発信を勇気づける•新入社員に日報を書かせることで 「日々グループウェア上で全社に発信する」ことを当たり前だと思わせる

•ひとりごとを書いてよい場所を作っておくことで、 思ったことを気兼ねなく全社発信•何が後で役に立つかは事前に知りえない。 だから内容を問わずに勇気づけ、発信を促す

逆に「全社投稿には事前に上司の許可を得ること」ってルールにすれば カジュアルな情報発信は簡単に死ぬ。ツールで可能でもルールで死ぬ。

image ここまでのまとめ 90 ツールの進歩に合わせてルールの進歩が必要 •「1日8時間同じ場所に集まる」という前提を置かないマネジメント •「全部まとめて非公開」ではなく本当に隠すべき情報以外は公開 •カジュアルな情報発信を勇気づける →これによって容易になるものは?

image 複数部署の兼任 91

•他部署の業務がカジュアルに発信されることで「隠れたニーズ」が発見されやすくなる* •そのニーズの解決のために時間を割くことが「1日8時間前提」でないため容易 複数部署の兼任が起こりやすくなる

*たとえば経理部で毎週丸1日かけて行っている作業が、開発部のエンジニアから見ると「それ自分が1日使えば自動化できるのに」となったりする。 しかしその自動化タスクがどの程度の難易度であるのか見積もることが経理部側では困難なため、フォーマルに依頼を出すことが難しい。→付録C

image 人が点ではなく広がりを持つ 92 個人が複数組織をブリッジする

image 個人が先、組織が後 93 ブリッジする個人が増えてきた後で、 事後的に「組織」の形になることもあるが個人主体のスモールスタートが先に起きやすい

image 誤った二分法 94

•「階層組織である?階層組織でない?」 「階層組織はなくなる?なくならない?」は誤った二分法

•個人主体のスモールスタートで今の階層的な組織構造の中に 徐々に階層的分類にそぐわない個人が増えていく

•組織の「事実」が、階層組織という「解釈」からゆっくりと離れていく

image 育児などのための時短勤務 95 社外プロジェクトに責任ある立場で参画している これも個人が複数プロジェクトをブリッジ

image パラレルワーク 96 複数の企業・組織に参加する これも同じ構造

image 知識の分布 97 組織が異なると知識の分布が異なる

image 知識分布の異なる組織をブリッジ 98

image 複数の組織に所属するメリット 99 知識の交換には周囲が持っていない知識をあなたが持つことが必要 その「周囲」が複数あると?

image それぞれの組織で知識交換可能 100

これを与えて これを貰う これを繰り返すと…

image 複数の分野を知ってる人材 101

「連続スペシャリスト」や「π型人材」とも呼ばれる

image パラレルワーク 102 パラレルワークを実践しているのはなぜか? それが自分個人にとって有益な戦略だと考えているから。

image ブルーオーシャン 103

かつて軸周辺にしか仕事がなかった

パラレルワークが可能になったことでこのあたりにブルーオーシャンができた

image 一般的な研究室のメンタルモデル 104 大学の中に、部分集合として、研究室がある

これもパラレル化すると有益なのではないか?

image 組織横断型バーチャル研究室 105

image 現状の実装 106 •Facebook上に非公開グループを作った •今回のこの授業を聞いた人は参加できる •後で入会用リンクをこの授業のFacebookグループに書いておく

image ここまでのまとめ 107

•技術の進歩に合わせてルールが変化すると複数部署の兼務や、 社内外の複数プロジェクトへの参加が容易になる

•「階層組織がなくなる」みたいな派手な変化ではなく、 個人からのスモールスタートで働き方が変化していく

•複数組織をまたぐ非公開Facebookグループを カジュアルに作ったりするとよい。実際に作ってみたので興味があればどうぞ。

image ルールは交渉の産物 108

•ルールとは、過去に誰かが交渉や議論をし合意に至ったので仮に定めたものに過ぎない •状況が変わればルールも変わるべきだが「会社がルールを変えるべきだ」ではない •あなたがルールが変わることでメリットを得るなら、あなたが交渉と議論の口火を切る

「サイボウズはすごい会社だなぁ、うちの会社も同じようになればいいのになぁ」 とぼんやり待っていても「うちの経営陣は馬鹿だ」と飲み屋で愚痴っても勝手に変わったりはしない。

image 奪われやすい仕事、残る仕事 109 A)「やること」を決める人 B)「やること」を正確に伝える人 C)「やること」を正確に実行する人

決められた「やること」を正確に実行する仕事は人間より機械による自動化が有利 「やること」を正確に伝える仕事は情報通信技術を活用する方が有利 「やること」を決める仕事をより多くの人がやることになる

image ここまでのまとめ 110 •人口が減少していて、人間の仕事を機械がもっと奪う必要がある •ツールの進化にあわせたルールの変化が必要 •「やること」を決める仕事の必要性増加 =ルール変更を交渉し、議論する仕事

image 一言にまとめると 111 ルール変更の交渉をしよう

image 以下付録 112

image 付録A:三浦市の問題の規模 113 •出荷所が21カ所 •市場は約50か所 •作物の種類が約40品目 •ブロッコリー、青首大根、レディ… •1日に600トンほど出荷•10トントラック80台程度に指示を出す

レディはサラダ専用の赤い大根(知らなかった)

image 付録B 114 要約して伝えることはまだ人間の仕事 言語になっていないものを観察や問い掛けで引き出したり

image 付録C:課題の提出と解決 115 課題を提出する部署の「課題の解決によって減少するコスト」と 課題を解決する部署の「課題の解決に掛かるコスト」

image 116 課題提出部署が課題解決コストを把握できないと自分たちの「削減されるコスト」が最も大きい 選択肢が最も良いと判断する。局所最適

image 117 全体最適を考えた場合 「小さいコストで大きなコスト削減になる」が好ましい選択肢

image 118 実際には問題が大きくなるにつれて一定量のコスト削減に掛かるコストが増える

経済学の言葉だと「限界費用逓増の法則」と言うのだろうか? エンジニアの言葉でいうと「システム内の要素の個数Nが増加すると 要素間相互作用はN^2のオーダーで増加する」となる。

image 付録D:サイボウズの企業理念 119 チームワークあふれる社会を創る

image 付録E: ICTはB層の仕事を全部奪うか?  120

本編では分量の関係で全部奪うかのような表現になってしまったがもちろんそんなことはない。

一つの入力を大勢に伝える(左図)は情報通信技術によって置き換わるが、 多くの入力を得て伝えるべきところだけを抜き出す(右図)はまだまだ。

image 残されたニーズ 121

•多くの入力を要約して少ない出力を出す

•情報の受け手の置かれた状況を理解して「相手に必要な情報」を抽出する

•質問や観察によって「まだ言語化されていない情報」の言語化を行い、 流通可能にするこれらのニーズは技術的に解決されておらず、今後重要度が上がっていくだろう

image 出力先は上だけではない 122

ただし、伝える相手は上司とは限らない

部署をまたぐ働き方が増えることで部署Aの情報を引き出し、 要約して、部署Bに伝えるニーズが増える。

image 付録X: 123 MANABIYA基調講演 「エンジニアのための自分経営戦略」 知識獲得戦略についてこちらで詳しく説明したが 今回の講演では分量の関係で入らなかったので丸ごと全部掲載した。

公開用スライド追記:これは割愛した

ICTで社会が変わる事例紹介