@MasatakaGoto: 「ACT-IからACT-Xへ渡されたバトン」(後藤 真孝) のVR学会誌記事PDFが URL に掲載されました!(5ページ、無料閲覧可) JST ACT-I「情報と未来」研究総括を昨年まで務め、ACT-X「数理・情報のフロンティア」領域運営アドバイザーを現在務めている経験を踏まえた内容になっています
安西祐一郎先生「個を確立しよう」
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「自由な発想で自立して研究を推進し,自分の分野で第一人者になろう」というアドバイス
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「個の確立」の支援に重点を置き、情熱を持った若手研究者を応援することを目指してACT-Iを設計した
- ACT-Iの成功を受けて後継プログラムである「JST ACT-X」も「若手研究者の個の確立を期待するプログラム」として継続的に発展している
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1 )若手研究者の「個の確立」を支援する
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2 )若手研究者が,自由な発想で主導権を握りながら挑戦的な研究開発を推進する支援をする
面接審査への「テキストチャットツールによる即時性と秘匿性の高いコミュニケーション環境」を導入した
- Slackでのテキストコミュニケーション
- 研究総括と領域アドバイザー,および JST 担当者が,各自のパソコン上でコミュニケーション
- 応募者には見えない
- 発表中や質疑中にも意見交換できる
- 面接発表を聞きながらどういう意見・疑問を持ったかを共有できる
- 研究総括が領域アドバイザーに質疑応答で聞いて欲しいことを交通整理できる
- Slack 導入の効果は劇的に優れている
- 多くの応募者かつ多様な分野の審査を深い議論に基づいて可能になった
- 発表後に評価シートに記入してそのファイルを共有するような通常の方式だけでは不可能
ACT-Iでは 1 年半の支援を標準期間とし,その 3 分の 1 程度に対して追加で 2 年間の加速フェーズ期間を設けることが,JST により定められていた.
- 「成功したものだけが加速フェーズに進む」というステージゲート的な誤解が生じないようにすることが大事と考えた
- 標準期間こそが ACT-I の支援の中心であることを明示的に告知
- 1 年半の研究に挑戦した若手研究者全員が,本研究領域の「卒業生」として誇りを持って,その後に活躍できるようにした
- 未踏ジュニアや未踏ITにも大事な考え方
- スーパークリエータに選ばれなかった人が「卒業生」として誇りを持てるようにしなければならない
- 未踏アドバンストに進まなかった人が「事業化に繋げられなかった人」とみなされることがないようにしなければならない
- 未踏ジュニアや未踏ITにも大事な考え方
- 追加支援は希望者の申請にした
- 実際、希望しない人も多い
3 .ACT-I「情報と未来」の領域会議での工夫
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お互いに切磋琢磨し相互触発する場
- 将来の連携の土台となる
- 記憶に残る
- 人的交流の機会を提供することが大切
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約70名が,学会で一般的な,短時間の発表と質疑応答を70件繰り返すだけでは,お互いに親しくなって記憶に残るような交流は困難
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(i)テキストチャットによる活発な発言環境を構築
- 関連: 発表並列チャット
- 専門分野の遠い発表内容に対して素朴な疑問を抱いたときチャットに書き込むのは心理的抵抗が低い
- 専門が近い他の聴衆が補足説明をして,聴衆全体の理解が深まった.
- 通常の質疑より多くのフィードバックが得られる
- 多数の聴衆が自分の発表をどう思ったのかが可視化される
- Slack の内容を読めるように前方の小型スクリーンに表示した
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(ii)大きく見やすい名札の利用
- はがきサイズの名札に,目立つ大きなフォントで姓を記載
- 名札が裏返っても姓名を読めるよう,両面に同じ内容を印刷する
- 関連: RubyKaigi名札
- 研究課題名も記載
- 同期が一目でわかるよう年度ごとに名札の色を変えた.
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(iii)座席の指定
- 話したことのない人と話しやすくして異分野交流を促進するため
- 発表会場の座席と昼食・夕食時の座席をすべて指定席とした.
- 一度隣り合って話せば,次からは休憩時間等でも話しやすくなる
- 納得感ある、指定席メソッドと呼ぼう
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KPTで振り返り
- 参加者全員で領域会議を振り返り,毎回の最後に,Slack に 5 分間で一斉に書き込む
- 平均約149件が書き込まれる
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領域アドバイザートーク・研究総括トーク:プログラム上で時間が許す際には,一人 5 分の講演をする
- 内容は話し手に一任
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卒業生セッション
- 研究期間を終了した研究者(卒業生)も,守秘義務に同意した上で,自発的に領域会議に参加可能
- 発表者が少なくなる2020年度以降は,卒業生からの近況報告の時間を設けた
- 未踏ITのブースト会議に近い
- が「自発的」というのは「希望者が参加できる」という意味だろうか
- だとすると「PMからの依頼で参加する」未踏ITとは少し経路が違う
- 未踏ではこの試みが始まってから5年目(2006年)の段階では「ぜひ大挙して押しかけて」と言っていた
- が2008年以降、参加希望者が多すぎて卒業生からの近況報告の時間が溢れるようになった
- その後、参加希望を取らなくなった
- 未踏ITのブースト会議に近い
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2020年度以降の 4 回の領域会議は,Zoom を利用
- 聴衆も常に顔を見せ,姓名と採択年度を明記する工夫をした
- 休憩時間等でも顔が見えていることで雑談のような交流が可能となった
- 懇親会
- Zoom のブレイクアウトルーム
- 15分ごとにランダムに強制シャッフル
- 卒業生が遠隔参加できるメリット
- 物理開催と比較してどちらが良いかに関しては色々と難しさがある
- COVID19で物理開催が不可能だった時期のワークアラウンドとしては間違いなく有用
- 卒業生参加が容易になるメリットも同感
- 常時正面から見られ続ける状態が長時間続くことによる疲労がある
- 休憩時間に全体共有の場で会話を始めることに対する心理的ハードルがある
- 物理的開催で話したい人のところに行って話し始める場合、2人の会話からスタートする、その会話は周囲から見えるので徐々に人が参加することは可能
- Zoomでは全体ブロードキャストからスタートする
- 逆に個別会話ができるように自由に出入りできるブレイクアウトルームを作った場合に、ルームの中の会話が外からうかがいしれなくなる
- この辺はZoomのUIがもう少し改善される度合いと思うのだけども。
- 他の解決策として未踏ジュニアでは2020年にSpatial Chatを使った(2020未踏ジュニアSpatialChat)
- があまり良いとは思っておらず、2021年にはZoomのブレイクアウトルームに(システムのランダムではなく)運営が割り振りをした
- 指定席メソッドに近い
- 2022年の未踏会議ナイトはoViceで懇親会を行った
- 他にはRemoやGather.townなどがあちこちで試されてる印象
4 .ACT-I「情報と未来」の成果報告会での工夫
- 一般公開型の成果発表会「ACT-I 先端研究フォーラム」
- 通常の学会発表とは雰囲気の違う注目が集まる場
- 「発表する価値が高いと感じられる場」を提供することが重要
- プロが演出をして司会をするステージ
- 研究者の登壇時にインパクトのある映像・音楽による演出を実施
- 全体の最初と最後には,オープニング動画とクロージング動画を上映
- 会場配布パンフレットも魅力的なデザインに
- 未踏会議の卒業生LTが枠は少ないけどかなり近い構図かも
- 余裕があればもっと増やせるといいんだけども、なさそう
- アーカイブも重要
- 登壇発表の様子を収録した動画とポスターを,インターネット上で持続的に誰でも閲覧できるようにした
- “アーカイブも重要”に完全に同意
- 加えて未踏ジュニアでは一般公開の「成果報告」だけではなく、ブースト会議や中間発表の動画も非公開のScrapboxに溜まっていく仕組み
- 次年度以降の参加者が「去年の参加者はどんな発表だったのか」を見ることができ、プロジェクトの発展プロセスについて知る機会ができている