結論

広聴AI のツール戦略は 二段構造のエコシステム として設計する。

  • Web UI: 全体傾向把握ユースケース一本の simple モード。デフォルトで「デカい見落とし / デカい違和感を見つける」ビューを提供し、設計判断は反応事後誘導型に倒す
  • CLI / analysis-core: 実験機能の追加場所。tokoroten の DivCon、Long Context 再分類によるマッピング不能抽出、ユーザカスタム prompt 経路、KJ 5 系の補完 artifact など、多様な手法を実験できる空間
  • コミュニティ: CLI で試行錯誤された新しい分析が共有・比較・継承されるコミュニティを育てる

これが analysis-stance / label-quality-redesign-reset-2026-05-30 で「別ツールで補完」「少数重要論点系は CLI 分析者責務」と整理した空き地に対する設計上の答えになる。slack-stance-discussion-2026-05-30より

読者像 3 像 (2026-05-31 追記)

このエコシステムには、技術背景の違う 3 種類の読者が並ぶ。pr-883-restructuring-2026-05-31 が PR #883 の盲点として整理した区分と整合する。

動機技術背景接点
一般ユーザ / 自治体担当本人結果を読みたい / 組織で導入したい技術者でない場合が多いWeb UI を SaaS 経由で見る (将来) または 動かせる人に依頼
組織内デモ役 (橋渡し役)意思決定者 / 予算決定者に動くものを見せるエンジニアでもデータサイエンティストでもない可能性。PC 操作はできるWeb UI を自分のローカルで動かす (Docker Compose)
分析者 / 研究者新しい分析手法を試したい、アルゴリズムを触りたいデータサイエンス素養ありCLI / analysis-core、コミュニティ共有

「組織内デモ役」は Web UI を使うが、エンジニアではない可能性が高い 第三像 で、これまで Web UI = 一般ユーザ / CLI = 研究者 の二段構造では明示的に扱っていなかった。広聴AI の現実の普及を担うのはむしろこの層 (自治体への導入推進、書籍からの読者、政党 / NPO の評価役) なので、エコシステム設計でも独立した像として扱う。

2026-06-01 定例で、この読者像は team discussion に掛けられた。nishio の反応は、非エンジニアの橋渡し役に手元 Windows マシンで起動させようとすること自体が複雑さを生んでおり、短期は Azure デモ環境で「見せる」方向へ寄せる方がよい、というものだった。したがって「組織内デモ役 = Mode 1 Docker Compose」と固定せず、短期は hosted demo / Azure 体験環境、長期は local LLM / local box route も含めて扱う。meeting-minutesより

なぜこの構造か

Web UI を simple に絞る理由

analysis-stance が言語化したとおり、広聴AI = 構造把握装置で、reader は「自分の事前 mental model と突き合わせて構造を読み、他者に解説する」主体である。ところが Web UI の主たる reader (政策担当 / 自治体 / 一般ユーザ) は、自分のしたいことを「全体傾向把握 / 少数論点発見 / 構造把握 / 詳細探索」のような解像度で区別できない。したがって (やりたいこと) を選ばせる UI は機能しない。slack-stance-discussion-2026-05-30より

代わりに、default mode を提供 → 反応を見て別 view を案内する という事後誘導型 UX に倒す。「ざっくりモード / 詳細モード」程度の切替は用意しうるが、選択を強制しない。

CLI を実験機能の場所にする理由

データサイエンティスト的な素養を持つ分析者は、ユーザのデータを直接観察し、「重要とは何か」を言語化し、適切な手法を選べる。Web UI に複雑機能を載せると、(1) 一般ユーザの simple さを壊し、(2) 分析者の自由度も逆に下げる。両立しない。

CLI は分析者向けなので、複雑機能を載せても simple さは壊れない。tokoroten が提案した Long Context 再分類による少数意見救出、DivCon 由来の自治体カテゴリ突合、ユーザカスタム prompt による「重要」定義の言語化、ohki-shingo 公開UI 7 要件のうち #5 #7 を担う実験 artifact、などすべて CLI 機能として実装できる。slack-stance-discussion-2026-05-30より

コミュニティを育てる理由

「DivCon を広聴AI の WebUI に搭載するのは複雑すぎる」という理由で DivCon 方向の発展が抑制されている、と nishio は観察している。これは Web UI と CLI の二段構造を維持しつつ、CLI 側の実験が 共有・比較・継承される場 がないと結局単発で終わる、という構造的問題を示す。slack-stance-discussion-2026-05-30より

したがってツール戦略の第三層として「新しい分析が多種多様に試行錯誤されて共有されるコミュニティ」を育てる必要がある。これは技術ではなく場と運営の問題で、product 単体では解けない。

直近で示唆される具体アクション

エコシステムビジョンの実装着手点として、現時点で見えるもの:

  • default mode の具体形 を「デカい見落とし / デカい違和感を見つける」ビューとして定義し、これと「詳細モード (上位 cluster 30 程度 + ツリービュー)」を Web UI 上で切替可能にする (新規 issue 候補)
  • サンプル分析結果カタログ: 同じ入力データを複数手法 / 複数 cluster 数で分析した結果を並べて見比べられる教育コンテンツ。ユーザが「どっちを選んだらいいですか」と聞いてきた時の補助になる
  • DivCon / Long Context 再分類 / カスタム prompt の CLI 機能化のスコーピング (tokoroten / 別 contributor との連携)
  • コミュニティ場の整備: GitHub discussions、Zenn / note、Slack 等で「自分の分析を共有する」型のコンテンツを促す仕組み

Open Questions

  • 「コミュニティ」は具体的にどの場でどの形でやるか (GitHub discussions / Slack / 別 forum / 書籍 13 章末尾の cookbook?)
  • CLI 実験の入り口 = kouchou-analyze だけで足りるか、ipynb / Jupyter 経路も同等に整える必要があるか (open-decisions A9 と関連)
  • サンプル分析カタログをどこに置くか (docs サイト / 別 repo / Web UI 内ギャラリー)
  • 「ざっくり / 詳細」モード切替を Web UI に入れる時、命名と分かりやすさのバランス ((やりたいこと) 言語化の難しさを考えると、ラベルを工夫しないと「どっちを選べばいい」問題が再現する)

Updates

  • 2026-05-31: 「読者像 3 像」セクションを追加。Web UI = 一般ユーザ / CLI = 研究者 の二段構造では扱えていなかった 第三像「組織内デモ役」(エンジニアではないが PC 操作はできる橋渡し役) を明示。pr-883-restructuring-2026-05-31 の読者像細分化と整合
  • 2026-06-01: 定例議事録を反映し、組織内デモ役を手元 Windows / Docker Compose に寄せすぎると複雑になるため、短期は Azure デモ環境で「見せる」方向へ寄せる判断を追記
  • 2026-06-03: 本ビジョン(Web UI 簡素化 / CLI 実験 / コミュニティ)の前提となるスコープ線(広聴AI=キーインサイト発見まで、その先はパートナー)が、2025-07-16 マーケ戦略 mtg の時点ですでに置かれていた系譜を kouchou-ai-scope-line-from-marketing-to-plugin-2026-06-03 に整理
  • 2026-05-30: 初版。slack-stance-discussion-2026-05-30 で nishio が言語化した CLI + コミュニティビジョンを、analysis-stance / label-quality-redesign-reset-2026-05-30 が残した「別ツールで補完」の空き地に対する答えとして整理