6章

芽生えるフェーズ

p.188

  • 何が特殊資料なのかは、みなさんの置かれた環境や解く問題によって異なります。しかし、自分の身近な課題を解決したい場合、問題特化の情報を見つける手段として、自分が有効な可能性が高いです。正解が自分の外にあると思い込んで自分の外ばかりを探検するのではなく、自分に目を向けること、自分を一人のインタビュー対象として尊重し、主観的にどう思っているのかをきちんと聞いてあげる必要があります。
  • 何が特殊資料なのかは、みなさんの置かれた環境や解く問題によって異なります。あなたの身近な課題を解決したい場合、あなた自身が有用な情報源である可能性が高いです。私たちは正解が自分の外にあると思い込みがちです。しかし、これは正しくありません。自分の外ばかりを探検するのではなく、自分に目を向けることが必要です。あなた自身を重要なインタビュー対象だと考え、あなた自身が主観的にどう思っているのかを丁寧に聞く必要があります。

p.194

  • 物理的に形を持たない抽象概念を身体感覚に落としていくと、たとえ話が生まれることがよくあります。抽象概念が現実に形を持たないので、現実に存在する別のものにたとえるわけです。たとえ話は、水面下のまだ言語化されていない身体感覚や経験が、言葉を一般的でない使い方をすることでかろうじて言語化されたもの、ととらえることができます。 rewrite
  • 抽象概念は物理的な形を持たない。われわれがこれを具体的な身体感覚に近づけていくと、しばしばたとえ話が生まれる。
  • なぜか。抽象概念は物理的な形がないため、身体感覚で捉えられない。これを身体感覚で捉えようとすることによって、物理的な形を持った物をその概念の代わりに使うようになる。
  • たとえ話では、言葉を一般的な意味とは異なった意味に使う。この一般的でない使い方によって、あなたのまだ言葉の形になってない経験が、かろうじて部分的に言葉の形になる。

p.195

  • Young も、アイデア創造のプロセスをサンゴ礁にたとえました。青い海原に突如として美しいサンゴ礁が現れるように、アイデアも唐突に現れます。しかしそのサンゴ礁は、海の中で無数の小さなサンゴ虫が活動することで作られています。アイデアも同じように、意識下で進行する活動の最後の結実なのではないか、というわけです。 rewrite
  • ヤングはまた、アイデアの創造過程を珊瑚礁に例えた。青い海の中に突然美しい珊瑚礁が現れる。アイデアも唐突に現れる。サンゴ礁は、海の中の無数の小さなサンゴ虫によって作られる。アイデアもまた、意識の下で進行する無数の小さな営みの結果である。

p.195

  • また、たとえば工業製品と自然界に存在する物の間のアナロジーのように、遠い分野のアナロジーが行われたときには、製品の新規性が高くなることがわかりました
  • また、たとえば工業製品と動物のような遠い分野のアナロジーが行われたときには、製品の新規性が高くなることがわかりました

p.195

-メタファ(隠喩)は、厳密にはたとえ話であることを明示しないたとえ話のことです。「アイデアを温める」は隠喩で、「アイデアは卵のようだ。生み出された当初は動かないが、温めることでヒナになり、自分で動き始める」は直喩ですが、本章での話にこの区別は重要ではないので「たとえ話=メタファ」だと思ってもかまいません。 +メタファ(隠喩)は、厳密にはたとえ話であることを明示しないたとえ話のことです。たとえば「アイデアを温める」は隠喩です。「アイデアは卵のようだ。生み出された当初は動かないが、温めることでヒナになり、自分で動き始める」は直喩です。しかし、本章での話にこの区別は重要ではないので「たとえ話=メタファ」だと思ってかまいません。

p.197

  • カウンセリング心理学者の David Grove が作り出した Clean Language、およびその派生である Symbolic Modelling (注 29) は、相手からメタファを引き出すことを目的とした方法論です(注 30)。この手法は直接的には他人を相手とした手法ですが、参考になる概念がいくつかあります。本章での「抽象概念、身体感覚、メタファ」という 3 分類は彼らの主張を参考にしました。
  • 二つ問題点がある
    • 「参考になる」が「何に参考になるのか」が明確でない
    • 「彼ら」が誰を指すか明確でない

+カウンセリング心理学者の David Grove が作り出した Clean Language、およびその派生である Symbolic Modelling (注 29) は、話し相手のメタファに注目して言語化を助けることを目的とした手法です(注 30)。この手法の考え方は自分自身の言語化の助けにもなります。たとえば本章での「抽象概念、身体感覚、メタファ」という 3 分類はSymbolic Modellingを参考にしました。

p.197

  • ❶と❷が特に重要です。たとえば相手が「鳥の声」と言ったときに「その鳥 の声は、どんな種類の鳥の声ですか?」と掘り下げて聞いて「ジュウシマツ の声」と返事があれば、抽象概念だった「鳥の声」が少し具体的なメタファに 近付くわけです。掘り下げるだけだと視野がどんどん狭くなっていくので、「そのジュウシマツについて、ほかに何かありますか?」と視野を広げさせると、たとえば「実家で飼っているんだ」という周辺情報が出てきたりします。「鳥の声」と「実家で飼っているジュウシマツの声」ではメタファの詳細さが全然違いますね。
  • 特に❶と❷が重要です。
  • 例えば、相手が「鳥の声」と言ったとき、“その鳥はどんな鳥ですか?“と聞くことができます。
    • 相手が「ジュウシマツの声」と答えたら、「鳥の声」という抽象的な概念がより具体的になる。
  • そうやって、どんどん掘り下げていくと、どんどん視野が狭くなっていく。
    • そこで、「ジュウシマツについて、他に何かありますか」と聞いて、視野を広げることができます。
    • 相手が「実家で飼っているんだ」と答えたら、 周辺情報を得ることができました。
  • 「鳥の声」と「実家で飼っているジュウシマツの声」ではメタファの詳細さが違う。

p.198

❸と❹はほぼ同じことを聞いています〜

  • ❸と❹はほぼ同じことを聞いています。この手法ではメタファの位置を重視します。
  • この問いには「Xは抽象的な存在ではなく、ある場所を占める物理的な存在である」と考えさせる効果があります。この問いによって抽象概念が物理的なメタファになることが促されます。
  • たとえば「創造性」は抽象概念です。質問してみましょう。創造性はどこにありますか?少し考えてみてください。
  • ある人は頭だといい、ある人は指先だというでしょう。個人的なメタファなので、人によって異なります。
  • (6.2.3.1) 絵に描いてみるでいくつか例を示しました。あるデザイナーは「創造性は最初は脳の中にあり、やがて脳の外に広がっていく」と考えました。別のデザイナーは「創造性はチームメンバーの間に存在する」と考えました。
  • 「創造性はどこにあるのか?」という問いに、あなたがもし「頭の中にある」と答えたとしましょう。それは「他のチームメンバーはあなたの創造性を直接見ることできない」と示唆します。もし「メンバーの間にある」と考えたなら「その創造性はメンバーひとりひとりの考えとは一致しない」と示唆します。
  • 私も「創造性はどこにありますか?」と自問自答してみます。私の場合は〜
  • ここまで説明してから気づいたのですが、つまり腹に 2 つ目の創造性がありますね。大量の情報をさばく 機械的な創造性と、時間をかけてゆっくり育てる植物的な創造性の 2 つがある、と私は考えているようです。メタファを発展させていくことで、私の創造性に対する考えが言語化されました(注 32)。
  • ❺はダイレクトにメタファを聞き出す質問です。この基本 5 質問でメタファが生まれ、明確化されます。この明確化され たメタファをSymbolic Modellingでは「シンボル」と呼びます。そしてシンボル の時間軸上での変化や、シンボルの間の関係を明確化していくことで「シンボルを使って作られたモデル」を作ります。このモデルが言語化の助けになるわけです。

ここまで済んだ

p.200

  • ここまで、言葉にできているものとできていないものを氷山にたとえて、抽象概念から身体感覚、メタファへと掘り下げ、水面に近付いてきました。水面に一番近いものは何でしょうか?私は違和感だと考えています。この節では暗黙知の概念と、それとコインの裏表の関係である違和感について解説します。
  • ここまで、言葉にできているものとできていないものを氷山の水面より上の部分と下の部分にたとえました。そして、山頂付近にある抽象概念から、身体感覚、メタファへと進んで、水面に近付いてきました。 水面に一番近いものは何でしょうか?私は違和感だと考えています。この節では暗黙知と違和感について解説します。暗黙知と違和感はコインの裏表の関係だからです。

p.201

  • Michael Polanyiは、問題の解決に迫りつつあることを感知する感覚を「暗黙知」(tacit knowing)と呼びました。人間には、問題の解決に近付いているか、近付いていないかを感知する非言語的能力があり、それがいまだ発見されていない言語的な知識を発見するために活用されている、という主張です。
  • Michael Polanyiは、人間には、問題の解決に近付いているか、近付いていないかを感知する非言語的能力があると考えました。また、その能力がいまだ発見されていない言語的な知識を発見するために活用されていると考えました。この能力によって感じられる「問題の解決に迫りつつある感覚」のことを、彼は「暗黙知」(tacit knowing)と呼びました。
  • 哲学者Plato(プラトン)は著書『メノン』 注32 の中で、もし何を探し求めているかわかっているなら問題は存在しないし、もし何を探し求めているかわかっていないなら何かを発見することは期待できない、と記しました。知識の探索は、行方不明の財布を家の中から探し出すのとは違います。見つけたいものが何であるのかが明確に言語化できたら、それはもう答えを手に入れているのです 注33。
  • 哲学者Plato(プラトン)は「もし何を探し求めているかわかっているなら問題は存在しないし、もし何を探し求めているかわかっていないなら何かを発見することは期待できない」と考えました *32。知識の探索は、行方不明の財布を家の中から探し出すのとは違います。見つけたいものが何であるのかが明確に言語化できたら、それはもう答えを手に入れているのです *33。
  • この「問題の解決に近付いている感覚」を表現する良い言葉を私は発見できませんでした。Polanyiの提案したtacit knowingの訳語は「暗黙知」ですが、2017年現在「問題の解決に近付いているかどうかを感じる感覚」と「まだ言語化されていない経験的知識」の2通りの意味があり、後者の意味にとらえている人が多いように思います。
  • この「問題解決に近づく感じ」を表現する良い日本語が見つかりませんでした。“tacit knowing”の一般的な訳語は「暗黙知」です。しかし、2017年現在、「暗黙知」の意味は2つあります。一つは「問題の解決に近付いているかどうかを感じる感覚」、もう一つは「まだ言語化されていない経験的知識」で、多くの人は後者の意味で使っています。

p.202

『個人的知識』のサブタイトルは『脱批判哲学をめざして』というものでした。「批判哲学」とは何なのかを掘り下げましょう。René Descartes(デカルト)が 1644 年に著書『哲学の原理』注 2 で方法的懐疑を提案して以来、西洋哲学では「当たり前だと思っていることを疑っていく」という言語的な思考 プロセスが重視されてきました。Immanuel Kant (カント)は、この疑うこ と(批判)こそが哲学の最も重要なタスクであると考え、批判という言葉を 掲げた書籍『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』を 1781~1790 年 に出版します。Polanyi の著書の題に書かれた「批判哲学」とは、これを指す ものです。

  • 1644 年にRené Descartes(デカルト)が 著書『哲学の原理』注 2 で「確実なもの以外は疑う」という方法的懐疑を提案しました。 以来、西洋哲学では自分が当たり前だと思っていることを疑っていく言語的な思考プロセスが重視されてきました。1781~1790 年 に Immanuel Kant (カント)は、この疑うこ と(批判)こそが哲学の最も重要なタスクであると考え、批判という言葉を 掲げた書籍『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』を 出版します。Polanyi の著書の題に書かれた「批判哲学」とは、これを指す ものです。

p.203

-経営学者の野中郁次郎は、1996年に著書『知識創造企業』 注4 で、Polanyiの考えを踏まえて知識を暗黙知と形式知に分け、これに知識が個人に存在するのか組織に存在するのかの次元を加えて、組織内での知識創造について議論しました。Polanyiの関心は科学者個人の知識創造にフォーカスしましたが、野中郁次郎の関心は組織内での知識創造です。

+1996年に経営学者の野中郁次郎は著書『知識創造企業』でPolanyiの考えを発展させました。 知識を、言語化された「形式知」と、まだ言語化されていない経験的知識「暗黙知」に分けました。そして、知識が個人に存在するのか、組織に存在するのかという次元を追加しました。これは、組織内での知識創造を論じるためです。Polanyiの関心が科学者個人の知識創造にあったのに対して、野中の関心は組織内の知識創造にあったのです。

p.204

-みなさんも、このような「違和感」を経験したことがあるかと思います。しかし、理由を言語化できていないため、何か劣ったもののようにとらえて、軽視している人が多いのではないでしょうか。しかし、むしろ逆で、違和感はまだ理由が言語化できていない、言語化されるべきものがそこにあるという、重要な兆候だととらえたほうがよいでしょう。

+みなさんも、このような「違和感」を経験したことがあるかと思います。違和感の理由はまだ言葉にできていないため、言葉になったものより劣っていると感じがちです。そのため、違和感は軽視されやすいです。 しかし、逆なのです。違和感は「まだ言語化されていないもの」がそこにあるという兆候です。水面化を泳ぐ魚影のようなものです。それを釣り上げることが言語化です。

p.204

-TAEは14ステップからなる複雑な方法論なのでここでは詳細には説明しません。この手法を開発した哲学者Eugene T. Gendlinらは、「まだうまく言葉にできていない、しかし重要だと感じる、身体的な感覚」を「フェルトセンス」という名前で呼んでいて、便利なのでこの本でも採用することにします。

  • TAEは14ステップからなる複雑な方法論なのでここでは詳細には説明しません。この手法を開発した哲学者Eugene T. Gendlinは、「まだうまく言葉にできていないもの」を「フェルトセンス」という名前で呼んでいます。概念に名前をつけると、概念を指し示すハンドルとして使えるので便利です。そこで、本書でも「フェルトセンス」という言葉を採用することにします。
  • 概念を指し示すハンドルの話はp.36
  • 「まだうまく言葉にできていない、しかし重要だと感じる、身体的な感覚」 と書いていたが、そこまで限定する必要がないので整理した。
  • 私が日本語でカジュアルに説明する時には「モヤモヤ」と表現している。

p.204

私が特に興味深いと感じたのは、辞書を使うステップです。短文の中の重要そうなキーワードを辞書で引き、辞書の説明と自分が言いたかったことを比較します。短文に書かれている単語は、自分の中のうまく表現できないフェルトセンスに仮に当てた単語なので、辞書の説明と比較すると多くの場合何らかの食い違いがあります。その食い違い、つまり違和感に注目します。

  • TAEで特に面白いと感じたのは、辞書を使うステップです。
  • まず、自分の感覚を表現した短い文章の中から、重要なキーワードを選びます。
  • そして、そのキーワードを辞書で引きます。
  • その後、辞書の説明と自分の言いたいことを照らし合わせます。
  • 短文に書かれた言葉は、自分の中でうまく表現できないフェルトセンスを一時的に指し示すものです。
  • だから、多くの場合、辞書の説明とは、どこかズレがある。
  • そのズレに着目してみましょう。

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たとえば、私は「頭の中に歯車があって、ときどき高速に空回りする。この状態でほかの歯車とかみわせると歯が欠けてしまうから速度を落とす必要がある」というメタファを持っています。あるとき、この「速度を落とす」が世の中でいうところの「瞑想」なのではないか、と思い付きました 注37。

  • 例えば、私はある喩えを持っています。
    • 私の頭の中には歯車がある。
    • その歯車が時々、他の歯車と噛み合わないことがある。
    • その場合、私の頭の中の歯車は高速で回転している。
    • もし、その歯車を他の歯車に噛み合わせたら、歯が欠けてしまう。
    • だから、歯車の回転を遅くする必要がある。
  • ある時、この「回転を遅くする」が世に言う「瞑想」なのではと思いました。

ところが、瞑想を辞書で引いてみると「目を閉じて深く静かに思いをめぐらすこと」と書いてあり、強い違和感を持ちました。私が「瞑想」という言葉で表現しようとしたフェルトセンスは、目を閉じる必要はありません。また「思いを巡らす」という表現も、何かを回そうとしていて、回転を遅くするイメージに合いません。この説明文の中で私にしっくりきた言葉は「深く」と「静かに」だけです。

  • ところが、瞑想を辞書で引いてみると「目を閉じて深く静かに思いをめぐらすこと」とある。
  • 私が「瞑想」という言葉で表現しようとしたフェルトセンスと、「瞑想」という言葉の辞書の定義は一致しない。違和感がある。
  • この違和感に注目します。何がしっくりこないのでしょうか?
  • 私が「瞑想」という言葉で表現しようとしたフェルトセンスは、目を閉じる必要はないのです。
  • また「思考をめぐらせる」という表現も、何かを回転させようとしていて、回転を遅くするイメージに合いません。
  • この辞書の記述の中で私にしっくりきた言葉は「深く」と「静かに」だけです。

つまり「深く」「静かに」が、私のフェルトセンスを表現するうえでしっくり くる単語です。これは「速度を落とす」に対応しそうです。ということは、逆 に「高速に空回り」には「深く」「静かに」の逆の単語が対応するはずです。「うるさく回転するのだろうか?」「深いの反対、浅いでも高いでも違和感がある。 浮いている、地に足が付いていない、なら許容できるかな」と思考が発展していきます。このようにキーワードを辞書で引いて、その説明の違和感にフォーカスすることで、自分の言いたいことをより明確にしていくわけです。

  • つまり、「深く」「静かに」が、フェルトセンスを表現するうえで重要な単語です。これに注目してみましょう。
    • 「深く」「静かに」は「速度を落とす」に相当しそうです。ならば逆に、「深く」「静かに」の反対語は、「高速で回転している」ことに対応するはずです。
    • 「うるさく回転するのだろうか?」
    • 「深いの反対語は何か?浅いでも高いでも違和感がある。 浮いている、地に足が付いていない、なら許容できるかな」と思考が発展していきます。
  • このようにキーワードを辞書で引いて、その説明の違和感にフォーカスすることで、自分の言いたいことをより明確にしていくわけです。

p.205

注 41 -日本語には「頭の回転が速い」というメタファもありますね。私はこれを悪い意味に解釈できるので はないかと考えています。

+日本語には「頭の回転が速い」(=賢い)という慣用句がある。この慣用句は、たいてい良い意味で使われる。しかし、頭の回転が速いことが悪い状況もあると私は考えている。

公共の言葉と私的な言葉 全面的に書き直し。

  • 意図: メルロポンティの用語をそのまま本文に使っていたが、そのせいでわかりにくくなっていた。用語は重要ではないので脚注に追い出す。

公共の言葉と私的な言葉

  • 言葉には「公共の言葉」と「私的な言葉」の2種類があります。
  • 二人の人間AさんとBさんを考えてみましょう。
  • 辞書による言葉の意味の定義は、AさんとBさんの間で共有されている。この「意味」はAさんの氷山とBさんの氷山の共通領域にある。
  • 一方、Aさんが何か言語化されてないものを言語化しようとして話した「生まれたばかりの言葉」は、Aさんの氷山の水面近くにある。なので、その言葉を見たBさんが「Aさんの意図通りの意味」を感じるかどうかはわからない。
  • 「生まれたばかりの言葉」は私的な言葉なので、他の人に理解されるかどうかを心配する必要はありません。一方で、それを他人に伝えるには、より良い表現に磨き上げる必要がある。
  • (6.2.5.4) 辞書との照合で解説した手法は、「生まれたばかりの言葉」で自分が言いたいことと辞書に書いてある公共の意味を比較することで、自分の言いたいことがなんなのかを明確化する手法です。

脚注

  • 「制度化」という言葉は、哲学者 Maurice Merleau-Ponty が使ったものです。彼は「語られつつある言 葉」が「制度化」することで、複数人の間で共通の意味に使われる言葉が生まれるのだと主張しました。 参考:Maurice Merleau-Ponty 著、木田元編訳、滝浦静雄/竹内芳郎訳『言語の現象学』みすず書房、 2002 年

  • 哲学者のMaurice Merleau-Pontyは、個人的で私的な「語られつつある言葉」が、生まれた後で公共の「制度化された言葉」になると考えました。「制度化」の過程で、複数人の間で共通の意味に使われる言葉が生まれるのです。我々は普段「制度化された言葉」を使うことで、他人とコミュニケーションをしている。しかし、言葉が最初に生み出される時点では、それは制度化されていない。参考:Maurice Merleau-Ponty 著、木田元編訳、滝浦静雄/竹内芳郎訳『言語の現象学』みすず書房、 2002 年

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