2021年9月第54回情報科学若手の会で西尾が招待講演をするにあたり、未踏ジュニア2021ブースト会議で好評だった「発表者が動画を事前にScrapboxで共有するスタイル」を提案した 幹事団との議論の結果、少し調整して下記のスタイルで開催された :

招待講演動画を事前共有当日再生なし発表者と幹事2人によるディスカッションを流す
一般発表動画を事前共有当日再生あり
ライトニングトーク動画の事前共有なし
  • 発表時間中はScrapbox上でコミュニケーション
  • 当日動画を再生することは新しい試みだった
    • 従来型の発表イベントをイメージしている参加者の体験を損ねずに、能動的な参加者に追加の価値を生み出せる

発表動画事前Scrapbox共有スタイルとしては西尾が把握してる範囲では未踏ジュニア、talk.cppに続く3つ目の事例

当日動画を再生するかどうか

  • 事前の幹事団の議論
    • 未踏ジュニアほど参加者にコミットを求めることができない
    • 当日までに動画を見ない人がいるだろう
    • →当日、動画を流す
      • ここがこれまでに行われた試みと大きく異なっているところ
      • /talkcpp/talk.cpp
        • イベント当日は動画の上映は行わず、Scrapbox への質問やコメントをベースに、発表者が口頭 + 画面共有で回答など補足の議論を行います

    • 予定では1倍速での再生だったが、当日発表者が「1.5倍速で再生して」とリクエストする現象が観察された
      • 視聴者から、1.5倍速再生の結果「えーと」などのフィラーが気になりづらくなるという感想あり
  • 当日、参加者からの感想
    • 動画を再生しない形式はディスカッションをコンテンツにする場合は聴講者が事前に動画を見てなくても成り立つ
    • しかし通常講演について「視聴した人」「してない人」の両者を楽しませる設計は困難
    • 「動画の事前視聴は必須」とする「ストロングスタイル」が必要かも?
  • 実際、過去2例はどちらもストロングスタイルであった
    • 未踏ジュニアブースト会議後の参加者の感想
      • YoshifumiSeki: いやしかしこの未踏ジュニアブースト会議のフォーマットはよかった。全員に一定の知性とモチベーションがあり、基本ボランティアなので、ついてこない人を置いてけぼりにしても良いという特性が為せる技だけど、それでもパフォーマンスがめっちゃ良くてたのしい。

      • 関連 未踏ジュニアの設計思想: 能動的に動くトップ1%を伸ばす場
      • nishio.icon結局のところこれはどういう場を作りたいかという設計思想の話
    • Compassで募集し不特定多数が参加するイベントスタイルのため、他のイベントからの連想で思い込みをする人が観測された
      • 参加者の感想
        • イベント当日より前に作業が必要だと気づいてなかった
        • イベント当日だけ時間を割けば良いみたいな思い込みがあった
      • nishio.icon新しく生まれた開催スタイルなので、こういうスタイルがあることの認知が広がるまではもっと強調した方がいいかも
  • 開催時に動画を流すスタイルは、事前に動画を見た人が退屈?
    • 意外とそうでもない
    • 参加者の感想
      • 2回視聴するのも良いかも
        • オンラインコミュニケーションツール(チャット、Scrapboxなど)た書き込んでると発表を聞き逃すことがある
        • 事前視聴で発表内容を把握し、当日はリアルタイム視聴しながらコミュニケーションする
    • 西尾の感想
      • 僕はすべての動画を事前に視聴してコメントをつけるストロングスタイルで挑んだ
      • 2回目は退屈かと思ったが、退屈ではなかった
      • 余った認知リソースをScrapbox上でのコミュニケーションに振り分けられる
        • 例:
          • アイコン記法がCtrl+iで出せることに気づいてない人に教える
          • 運営が動画に続きがあることに気づかず止めてしまった時に指摘する
      • nishio.icon運営に優しいスタイルだよね
        • リアルタイム講演だとしばしば「運営に認知リソースを取られて聞きたい話だったのにしっかり聞けなかった、質問できなかった」という「運営は労働コストを支払ってるのに受益が少ない貧乏くじ」って状況が発生する

発表時間中はScrapbox上でコミュニケーション

  • リアルタイムで共同編集できる
  • 書いている人がテキスト形式で反応をする心理的障壁は発表並列チャット並に低い
    • と僕は思ったけど、書きづらさを感じてる人もいたかも?観測できないな
  • Scrapboxがチャットと違って素直に加筆できる媒体であることで、発表者が事後的にリアクションできる
    • プラス、発表が動画再生であることによってリアルタイムにも発表者がコミュニケーションに参加できる
      • 発表を聞いた人の疑問点に発表中に回答が行われていた
  • 参加者から、Scrapboxの共同編集は読み上げなどとの相性が悪くてアクセシビリティに問題があるのでは、と懸念する声があった

1.5倍速再生に関して

  • 講演系の動画はいつも1.5倍で観るという参加者の意見が複数
    • 通常は「リアルタイムで1倍速聴講」「アーカイブで事後に1.5倍速視聴」のどちらかを選択しないといけないのですが、この形式だと「事前に1.5倍速視聴」ができてリアルタイムのディスカッションにも参加できるのでとても良い

    • 1.5倍速視聴は集中が保ちやすい 数値データ

  • イベント参加者95名(+幹事など)
  • Scrapbox参加者 61名
  • Scrapboxに作られたページ 64ページ
  • 事前リクエストに従ってScrapboxに自己紹介ページを作った人 38人
  • 自己紹介ページ総文字数: 11993文字
    • 平均文字数: 316文字
      • デフォルト生成のものだと10文字くらいで、少し書き足して100文字未満の人がたくさんと、積極的にたくさん書いたり会話が発生したりしてる人が少数、という感じ
  • 発表ページの総文字数: 48642文字
    • 招待講演 17431
    • 若手特別講演 13229
    • 通常発表 3351 / 4076
    • LT 4867
    • ナイトセッション 5688
    • (参考: このページが2~3000文字)

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