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411新たな除路としての取材学 ところが、KJ法が表面的に普及しつつあるにもかかわらず、それはどうもまだ本格的に使 いこなされているとは思えない。ひとりでは達者に使いこなしている人びとがかなりあらわれ つつあるが、組織としてみごとに駆使している例は、今なお暁の星よりも稀である。なにがそ の除路なのだろう。障碍の原因は、いろいろある。けれどもその中で、もっとも重要な原因の ひとつは、どうやら次の点にあるらしい。 つま り K J 法の素材になる元ラベルのデータの質が悪いと、結果はどう救いようもないものになるわけ だ 。 す な わ ち 、 取 材 ネ ッ ト が う ま く 打 て て 〔A ← B 〕、 し か も 個 々 の 現 場 で の 観 察 と 記 録 が 新 鮮 で 鋭 い か ど う か 〔B ← C 〕。 こ れ が K J 法 の 死 活 を 決 め て し ま う の で あ る 。 こ の 〔A ← B ← C〕 の部分を、取材活動といってもよいし、 フィールドワータといってもよい。そのフィール ド ワー タ のやり かたや訓練 が、 多 く の職場 でひじ ょう に不足 し て いる のであ る

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まずAの点で、わたしたちは自分の問題意識をはっきりさせる。これはごらんのように、頭 の中、つまり 「思考レベル」で行なうわけである。次にこの問題意識をコンパス会静釘盤)にし て、野外 (もしくは現場といってもよい)へ取材活動にでかけねばならない。そこで自分たちの間 題意識にかかわってきそうな判断のためのデータを集めようというわけである。ごらんのよう に 「経 験 レ ベ ル 」 へ A ← B と 進 む 。 こ の 過 程 を 「探 検 」 と 呼 ば う 。 探 検 で は 、 取 材 ネ ッ ト (第 2章参照)をどう打てばよいかが問題である