nishio: 技術的に両立しにくい選択肢AとBがある時、世の中ではしばしば「Aを使ってる人」と「Bを使ってる人」が互いに相手の陣営を馬鹿にしあう論争が起きるが、実はどちらの陣営にも「何が最適な選択肢であるかは状況によって決まる」と考えている勢がいる。彼らは「無条件に片方を支持する意見」に賛成しない

nishio: 彼らは、自分と違う選択Bをした人に対して「馬鹿だから正しい選択Aをしなかった」とは考えない。今の自分とは違う状況に対する最適解として選択Bをしたと考え、選択の理由を知りたがり、自分が「Bが適した状況」に気づけるようになろうとする。

nishio: そして、自分と異なる選択Bをした人と友好的な関係をキープし、自分が「Bが適した状況」になったときに、その人にBを使うノウハウを教えてもらう。 こういう人が「Bを選ぶ奴は馬鹿だ」と主張する人を見た時、同じAを選ぶ者同士であるが、仲間だと感じない。仲間だとみなされると不利益なので避ける。

nishio: ある程度の年齢の人が、この「対立陣営をけなす」モードに入ってるのを見ると「あー、学びの扉閉じちゃってるなー」「老害化スイッチ入っちゃってるなー」「今後ズルズルと老害化する流れに呑まれちゃってるなー」と感じる、で、自分が同じようにならないためにはどうすればいいのかを考える

nishio: で、気づいたのだけど「対立陣営をけなすようになった」のではなく、若い学生の頃からそれをやってたのではないか。学生コミュニティでは権威勾配がないしみんな自分に自信がない、だから自分の選択をけなされた人が「いや、この選択肢にはこういうメリットがあって〜」と解説しがち。

nishio: それによって「けなす人」の学びの扉は閉じていなかった。むしろ効率が良かった可能性まである。「けなす行動」が強化されてしまう。

nishio: 時が経つと年齢や肩書きや実績が積み上がっていき、必然的に若い人との間に権威勾配ができる。この状態で若い人は言い返さない。「Bの価値を理解してないオッサンだ」と思って距離を取るだけ。 じゃあ権威勾配のない同年代なら反論するか?と考えたが、これも言い返さない、なぜかは次のツイート

nishio: なぜかというと、学生時代の「自分の選んだ選択肢をけなされた時に言い返したくなる原動力」が「自分に自信がなく、選択肢をけなされたことで自分の判断能力などに疑問が呈されたと感じ、凹んだ自尊心の回復のために自分がその判断をした理由を説明する」というプロセスだから。

nishio: Aさんが若手に対して権威勾配が発生するくらい実績を積んだ時、そのAさんと権威勾配が発生しないBさんもまた同様に実績を積んでおり、これが自尊心の下支えをするので選択肢をけなされても自尊心が凹まない。なので反論エネルギーが生まれないのである。

nishio: これはとてもわかりにくい罠だ。だって本人は行動を変えていないから。ある行動パターンが、若い頃には効率よく多様な視点の情報を集めるのに寄与していて、それがそのまま年齢とともにじわりと真綿のように首を絞めて気づかないうちに脱出不能の老害化ブラックホールに吸い込まれているのだから。

nishio: 観測事実として吸い込まれた本人が気づかないのだから、相対化すると気づいていない僕自身も現在ブラックホールに落ちつつある過程の可能性があり、落ちる時間を少しでも先に伸ばすためには今からでも全力で重力に抗ってエンジンを動かす必要がある。具体的には何をすれば良いのか。

nishio: 具体的に何をすれば良いかはわからないが、とりあえず自分と違う選択をした人を見た時に「バカだ」と仮定するのではなく「自分の知らない何かを知っているのではないか」と仮定するべきなのだろうなぁ

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