• 少ないリソースでまあまあの精度が出る手法Xと、リソースをつぎ込むことによって精度が向上する手法Yがあるとする

    • 手法Yはここではニューラルネットを例として考えているので図ではNNと書かれている
  • 手法Yは消費リソースと精度にトレードオフがある手法なので図では三角形になる

  • 手法Yが登場して間もないころ、その手法は手法Xに比べて消費リソースも多く精度も低い「使えない手法」であった

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  • 手法Yの研究が進み、技術制約線が上がっていく

  • その結果、この三角形のてっぺん、精度競争の最先端が、手法Xでの精度を超える

  • 論文などで手法Xよりも手法Yの方が精度が良いと書かれるようになり、話題になる

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  • しかし、この時点でビジネス応用で手法Yが選ばれるのが合理的か、というとそうではない

  • 顧客が手法の価値を評価する際には、精度だけではなく消費リソースも勘案するから。

  • 下の図では、精度では手法Yが手法Xを追い越しているが、顧客の評価においてはまだ手法Xの方が圧倒的に良い

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  • この時点で現実には顧客の満足につながりにくいが、注目は集まり投資が行われる

  • 将来の成長に期待して長期投資をするのは非合理とは言えない

    • 将来このドメインの知識が必要になることに備えて、従業員が学習に時間を割けるようにする
    • 手法Yが広く使われるようになることを見越して、その利用に必要になるものを押さえる
      • 工業における「サプライチェーンの上流を押さえる」に相当する戦略
      • 具体例としては手法Yの計算インフラに対する投資
        • GoogleのTPU開発などが典型的
  • 現時点での応用を目的とした短期投資は、まあ当然高い確率で失敗する

    • それがわかってない人・企業から養分を吸って上記の長期投資に回すことが行われている
  • この長期投資の、特に計算インフラに対する投資によって、同一コードでも消費するリソースが減っていく

  • 顧客が見出す価値における、消費リソース量の寄与が減る

    • 解釈は2通りある
      • 全体的な高速化によって消費リソース量が減るから、という解釈
      • 消費リソースの差が変わらなくても、その金銭への対応付けが変わるから、という解釈
  • 顧客の評価軸はより「立った」線になり、手法XとYの「顧客にとっての良さ」の逆転が起こるx

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  • この大きな流れの中で「消費リソースの削減に役立つ知識」のドメインは顧客に評価されなくなりシュリンクしていく

  • 「それ線形回帰でいいだろ」的なものにニューラルネットを使ってAIですとか言ってるとムッとするのだけども、よくよく考えると世の中は「それC言語で書けばいいだろ」ってものにスクリプト言語を使ってCPU時間とメモリーを無駄遣いしてきて、そのうちCPUとメモリの性能が上がってスクリプト言語でもいいかって感じになったのだった。今は過渡期だから「それニューラルネットでやらなくてもいいだろ」的なことにまでニューラルネットを使うけども、これがブームとして終焉することはなく、どんどんニューラルネットしかできませんって人が増えて行くのかもしれないな…。そしてスクリプト言語しかわからない人が「mallocってなんです?」って言うのと同様にニューラルネットしかわからない人が「線形回帰ってなんです?」って言い始める。

  • 僕は「それ線形回帰でいいだろ」みたいなことを思う側、旧世代の住人なのだが、かつてC言語とスクリプト言語の関係において起こったのと同じように、その旧世代の知識を知らない世代が出て来て、そして知らないままでも顧客価値を生み出せてしまうようにいずれなるのだろう。

  • 知識獲得戦略

  • ロードマップ指向とエコシステム指向