顧客について考えよう」という視点が広く知られるようになり、考察する人も増えたのだけど、一種類の顧客を考察して満足してしまってるケースがしばしばある。

例えばネットで料理を注文すると自宅に運ばれてくるUberEatsみたいなシステムを考えてみよう。

image

これは考察が足りていない。「料理」や「配達」は勝手に湧き出してくるのではない。

実際には「配達」という労働を提供する配達人がいる。配達人がこのシステムを使いたいと思わなければ、このシステムはうまく回らない。 image

で、この図を見るとまだ「料理」の出てくるところが描かれてない。それを描こう。

image つまり「注文者」だけが顧客なのではなく、「配達人」「料理人」という顧客がいる。この三種類の顧客それぞれが、このシステムを使うことに価値を感じなければシステムはうまく動かない。 つまりこのようなシステムを設計する時には、三種類それぞれの顧客にどんな価値を提供するのかを考えなければならない。

別の例、PixivとかYouTubeみたいな「そこに行くと面白いコンテンツが見れる」というタイプのサービスを考えてみよう。 「このサービスを使うとユーザは面白いコンテンツが見れます!」では考察が足りていない image

そのコンテンツは勝手には湧き出してこない。それを作り出すYouTuberとか絵描きとかのクリエータがいるはず。では、そのクリエータはどんな価値をこのシステムから受け取るのか?

image 例えばクリエータにお金を払うとしたら、そのお金はどこから出てくるのか?を考えることになる。視聴者はお金を払う払うだろうか?

それが無理そうである時に、例えば広告主という別の顧客を開拓することでこういう形にすることができるかもしれない。 image これで「どこから湧いてくるのかわからないリソース」は存在しなくなったので、辻褄はあった。 広告主がこのシステムに価値をどの程度感じるのか、広告主が出したお金でどの程度のコンテンツが生まれるのか、という未知数だが…。

まとめ

  • 顧客を一種類だと考えない
  • 勝手に湧いてくるリソースはない。リソースがどこから湧いてくるのかを描きくわえて、ようやく辻褄のあった図になる
  • その上で、その図に出てくるすべての顧客が価値を感じるようにしなければシステムはうまく動かない

関連

  • 市場の二面性を理解せよ、という表現をされることがあるが、そもそも一種類の顧客しか見えてない人はそのシステムを市場だとも認識してないので抽象度の高いことを要求しすぎだろと思っている
  • ステークホルダー分析と考えてもいい。顧客と呼ぶかステークホルダーと呼ぶかの違いに過ぎない
  • 会社の従業員も会社というシステムに労働を提供して対価を受け取るステークホルダーなので顧客満足度と同じように従業員満足度を高めることが必要になるのである。雇用契約という強い契約で拘束されるのでシステムと分けずに一体と考える人が多いだけ。