ワンナイト人狼というゲームを、人狼の言葉ではなく、[経営学]の言葉で説明する

ワンナイト人狼は組織の意思決定をコントロールするゲームである

  • 多くの人は自分が善の側にいると考えている
  • そのため自分と異なった考え方をする人を悪だと考えてしまいがち
  • 組織経営上、意見の対立が起こることはある
  • でもこれは善悪の対立ではない
  • ただ、目指している方向に食い違いがあるだけ
  • なのであなたは電車で席をゆずる心優しい人とも対立する可能性があるし、あなたは悪ではないし、相手も悪ではない
  • ワンナイト人狼はこの「組織のメンバーの目指している方向に食い違いがある」という状況を体験するゲーム
  • プレイヤーは典型的には2つのチームに別れる
  • 5分程度の議論時間の後、投票で1人が選ばれ、その人はゲーム内でひどい目にあうことが決まっている
  • どちらのチームも自分たちの仲間がひどい目にあって欲しくない。各チームの勝利条件がそうなっている。
  • そこで議論時間に色々な発言をして、他のメンバーの意見を自分に都合の良いものに収束させようと努力する
  • つまりは組織の意思決定をコントロールするゲームである

少数派と多数派

  • 組織の2つのチームは少数派と多数派に別れている
  • 少数派は、少数派であることがバレれば、多数派の投票によって犠牲になってしまう
  • だから少数派は正体を隠している
  • 少数派同士は典型的にはお互いを知っている
    • ルールのバリエーションによってはここにちょっと手を入れる
    • 少数派は連携しながら組織の意思決定を少数派の自分たちに都合が良いようにコントロールする必要がある
  • 多数派はお互いを知らない(知っていたらお互い以外に投票すればいいだけだからね)
    • なので周りの誰が敵なのかがわからない
    • もしAさんが他人Bから「Aさんが怪しいのでは」と言われた場合、Aさんは自分が多数派であることを知っているので、そう指摘してきたBさんが怪しいと思うだろう。でも、それを主張しても「Aさんが多数派であること」はAさんしか知らないので、その意見を聞くCさんからは「Aさんは少数派で、それを指摘されたので自分は多数派だと主張している」との区別がつかない。
    • 多数派は、少数派に誤った判断へと誘導されないように頑張る必要がある
  • 論理的な推論によって、誰の目からも明らかな、客観的な判断がつくことは、このゲームでは少ない。
    • もちろん確率的な高い低いはあるが、どの現象も無視できるほど低くはない
      • 例えば5人プレイで7枚のカードに2枚「少数派」カードがある状態から5枚配る場合
      • 少数派が誰もいない現象が起きうる。例外的な出来事だ、とても小さい確率だ、と思いがち
      • だが 2/7 * 1/6 = 1 / 21 なので5%くらいの確率で起こる。
      • この場合「場に少数派が存在しない」という合意に至らなければ、自分たちの仲間に酷いことをして敗北である
    • 確率計算や論理よりももっと、評判、信頼、納得感、などの主観的要素が大きいように思う

おおよそのゲーム状況は上記だが、ここから話を面白くするために「特殊な人」が導入される

  • 誰か1名に対して、その人が多数派か少数派かを知っている人。

    • この人がもたらす情報は重要だ。
    • しかし、この人自身は、自分がその能力のある人であることを証明する手段を持たない
    • なので他の人から見ると「自分は知っていると主張している人」に過ぎない
    • 少数派の立場で考えてみよう
      • ある人Aが「私は誰が少数派かわかります。Bさんです」と言ったとする
      • これが事実であって、場の雰囲気がそれを事実だと認めるものになると、少数派チームは負けてしまう
      • どうするか
      • 例えばBさんは「えっ、違うよ」とか言う
      • もしくは少数派チームの誰かCが「Aは嘘つきだ、だって私が本物だもの」と主張する
      • これで場の雰囲気は「どっちが本物だ?」となる
      • 先に宣言するのが本物だという雰囲気があれば、少数派チームは先に宣言することで裏をかく
    • あなたAさんが多数派チームで、Bさんが「Aさんは多数派チームです」と言った場合、あなたのBさんに対する信頼は高まるだろう
      • でも、Bさんは少数派チームで、適当に言ってたまたま当たっただけかもしれない。多数派チームは人数が多いので、とりあえず多数派チームだと言っておけば高い確率で当たる。
  • 何と説明したらいいか

    • この組織運営のメタファーでは説明しにくい人がいるが、個人的にはとても面白い
    • 自分が選択した1名と自分の役割を交換する人
      • 交換された人はそれに気づけない
      • Aさんがこの特殊能力を使ってBさんと交換して、Bさんが少数派だった場合
        • Aさんは自分が少数派になってしまったのでその事実を秘匿しないと負ける
        • Bさんは「自分が少数派だと思い込んでいる多数派」になる
        • 他の少数派はBさんが少数派、Aさんが多数派だと思っているが、事実に反する
        • Aさんは少数派から仲間だと認識されていないが、勝利条件を共有している
        • 他のプレイヤーが自分の所属を誤解している、という状態が発生する
      • 上記の「誰か1名の役割を知っている人」の発言に対して
        • 自分はその人と交換したからその主張は正しい、と援護できる
        • 逆に、嘘をついている、と指摘することもできる
      • そしてこの人もやはり、自分がその能力を持っていることを自分で証明する手段がない