サービスAの中のデータをサービスBに持って行こうと考えたとき、両者が共通の方式(記法、データ形式など)を採用していると、接続コストが低くなる。この目的のためには### 今現在 普及している方式を採用することが好ましい。これはそれぞれのサービス提供者が別の意思決定主体であって、足並みをそろえて方式を変更することができないからだ。 image

一方で、サービス内部での接続の場合は、接続対象の方式が両方ともサービスAの提供者によってコントロールされているので、任意の方式を採用できる。これは先に述べた状況とは異なるので、前者を外部接続、後者を内部接続と呼ぶことにしよう。 image

「接続によって顧客価値が生まれる」という共通の状況で、接続にかかるコストを削減したいという目的は、外部接続も内部接続も共通である。しかし、その実現のために進む方向が異なる。外部接続では「最も普及している方式を選択しよう」となる。内部接続では、現時点で普及している方式と無関係に「最も接続コストの低い方式を選択しよう」となる。現時点で普及している方式と異なる方式を採用し、その方が接続コストが低い場合、それこそが競争優位の源泉となる。

具体例

  • Appleは自社製品の相互接続のために独自の手法を開発した: Bonjour - Wikipedia
    • この技術をベースに、Apple製品は周辺にあるApple製品同士の接続に関して、ユーザが設定にコストを掛けずに行えるようにした。
      • 「iPhoneでWebページを見ていて、その後iPadを開いた」というシチュエーションで「iPhoneで開いてたこのページをiPadで見たい?」とドックアイコンに出現する(図の右端アイコン)
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      • iPhoneで写真を撮って『その写真、ください』となった場合、iPhone同士なら連絡先の交換など必要なくAirDropで渡せる
  • NotaはScrapbox内でのページ間接続にブラケティング記法を採用した。
    • 接続のコストを極限まで下げる[接続先]という記法
    • URLをコピペした時にも自動でこの記法になる
    • さらに、[ ]の中身を入力しているときにはリアルタイムで類似検索が行われサジェストされる
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    • これによって過去に書いたものを発見し、接続することのコストが格段に下がっている。

こういう内部接続性を高めるための研究開発に対して「広く使われている手法を使えばよいのではないか」というのは、将来の競争優位を手放そうとする「経営センスのない発言」なのではないか。競争優位がないまま外部接続性が高まっても意味がない。外部接続性を高めることは内部接続性が高まった後で事後的に行われること。

外部接続内部接続 相互接続性