先入観を持ってはいけない」は否定形の指示なのでわかりにくい。 この「先入観」という言葉についてもっと掘り下げる。

具体的に「アンケートを取って、その回答から何か新しい気づきを得たい」というシチュエーションを考える。 この場合「アンケートを取る前でもしたであろう配置」はアンケートから得られた情報を使っていない。 そういう「普通の配置」よりも「一見普通ではないが、アンケートの内容を踏まえるとこの配置の方がいい」と思うような配置の方が、目的に合致している。

例えばここに「犬」「猫」「トカゲ」「観葉植物」の4枚のカードがあるとする。 詳しいアンケート内容がない状態でこれをグループ化するなら、まず「犬」と「猫」をまとめる人が多いだろう。次に近いのが「トカゲ」かな、なぜなら同じ動物だから。「観葉植物」は一番遠いね。

これがアンケート結果を使っていないグループ化の例。

アンケートの自由記述がこうだったとしよう:

  • 「トカゲが好き、じっとしてて面白くないと犬好きの友人には言われるが、毎日見ていると少しずつ表情が違う。今日は機嫌が良さそうだな、少し乾燥気味かな、とわかるようになる。楽しい」
  • 「常緑の観葉植物を育てている。時々新しい芽が出てきたり、古くなった葉が落ちたりする。時間の流れがゆったりとしているのがよい。せわしない動物は好きではない。」

これを踏まえて考えると、むしろ「犬」「猫」「トカゲ」「観葉植物」の中では「トカゲ」と「観葉植物」を近くに配置するのが良さそう。このグループと見比べると、犬は遠そう。猫の中でも人間を無視して自由人的な生き方をしているタイプは近そう、人間に甘えて構うことを要求してくるタイプは遠そう。

これがアンケート結果をしっかり使ったグループ化の例。

この「トカゲ」と「観葉植物」が入ったグループを見て「この分類はおかしいのでは?」という人がいるかもしれません。そんな時、あなたは「あー、この人はアンケート以前の先入観にとらわれているのだなぁ」と心の中で思って、顔には出さずに「そう思われるのも当然のことです。これが今回のアンケートで初めて見出された新しい構造なのですから」と自信満々で答えれば良いのです。

まとめ

  • 「先入観を排せ」をもっと具体的な指示にすると「元から知っていたことより、新しく知ったことを重視せよ」になる

関連話題

  • 今回のカードの例はKJ法に関する他のいろいろな疑問に関しても良い題材になると思う。
  • 例えば「アンケートの長文から付箋にどう切り出すとよいのか」
    • 今回の例では無味乾燥な「トカゲ」「観葉植物」という切り出し方をした。だから、グループ化のフェーズで「犬と猫をまとめよう、観葉植物は遠いな」となった。これは切り出し方があまり良くない。
    • 「トカゲが好き、じっとしてて面白くないと犬好きの友人には言われるが、毎日見ていると少しずつ表情が違う。今日は機嫌が良さそうだな、少し乾燥気味かな、とわかるようになる。楽しい」から、例えば「毎日見ていると少しずつ表情が違う」を切り出しても良い。
  • 例えば「どのように表札をつけたらいいのか」
    • 「犬と猫」のグループに表札をつけることと、「トカゲと観葉植物」のグループに表札をつけることを、自分ならどうするかと考えてみよう
    • 先入観や既存の分類基準に従って作られたグループは、タイトルに何をつけたらいいか言葉がでてこなくて苦しみやすい
    • 良いグループなら、タイトルにつける言葉は溢れ出してくる。「なぜトカゲと観葉植物を一つのグループに入れたの?」「それはね〜」となる。

KJ法勉強会@ロフトワーク