テストは記憶の手段で、そのテストを自分で作ることは、それ自体が理解を深め、記憶を強化する、という話

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知識を構造化する20のルールの「ルール1:理解できないことを学ぼうと してはいけない」にも関係することですが、覚える前にまず理解をすること が大事です。第1章で紹介したピラミッドのたとえ話を思い出してくださ い。本を読んで情報を収集しただけでは、それは地面に平たく並べられて いるだけです。集めた情報を積み上げてピラミッドを作る作業が必要です。 心理学者の Crailk と Tulvingは、単語の記憶と、その単語に対して行った 処理の深さの関係について実験を行いました注29。処理の深さは4段階あり、 各単語についてそのいずれかをしました。1段階目は、たとえばTABLE と いう単語に対して「これは大文字で書かれているか?」という質問に答える 「形の処理」です。2段階目は、crate という単語に対して「これはweight と 韻を踏むか?」という質問に答える「音の処理」です。3段階目は、 shark と いう単語に対して「これは魚の一種か?」という質問に答える「分類の処理」 です。4段階目は、friend という単語に対して「“He met a ___ in the street.” という文にはまるか?」という質問に答える「文の処理」です。 単語についてこの質問のいずれかをしたあと、単語をどの程度覚えてい るかをテストしたところ、形の処理をした単語は18% しか覚えていなかっ たのに対し、音の処理は78%、分類の処理は93%、文の処理は96%も覚え ていました。つまり認知的に高度な作業をしたほうが記憶にとどまるわけ です。 教科書を読んで、覚えるべき内容を見つけ出し、それを可能な限りシン プルな問題にするという作業は認知的に高度です。問題を作る作業を面倒 に思って、どこかからダウンロードしたり、機械的に生成したりできない か、と考えるかもしれません。しかし、それは認知的に高度な作業をして 記憶にとどめるチャンスを、みすみす手放していることになります。

エンジニアの知的生産術 p.99 (3.5.7.1) 作る過程で理解が深まる