短期記憶は容量が限られており、一冊の本をじっくり読むと、その著者の視点が我々の短期記憶を占領し、他の視点や入る余地がなくなります。
乱読によって、我々は複数の書籍からの異なる視点、思考、情報を同時に短期記憶に納めることができます。これにより、予期しない視点が結合し、新たな洞察や知識を生み出すセレンディピティの発生可能性が高まります。外山滋比古の「乱読のセレンディピティ」を西尾はそう解釈しています。
人間と同じように、AI(LLM, Large Language Model)もまた限られた入力コンテキスト幅を持っています。これはAIが一度に処理できる情報の量の限界で、これによりAIの思考も制限されます。
しかし、乱読による新しい知識や視点の結合の促進は、AIにとっても有効な戦略です。AIが様々なテキストやデータから自由に「乱読」することで、その理解はより広範で深いものとなり、その結果としてより創造的で有益な出力を生み出す可能性が高まります。
したがって、乱読のセレンディピティは、人間だけでなくAIにとっても有益な戦略となり得るのです。それは、知識の統合と新たな洞察の発見に向けて、我々の認知能力の制約を超える道筋を示してくれるからです。乱読は、我々が未知の知識と視点の海を探索するためのコンパスとなり得るのです。
2023-07-27 共著, log