効用の概念の誕生

サンクトペテルブルクのパラドックス (St. Petersburg paradox) は、意思決定理論におけるパラドックスのひとつである。極めて少ない確率で極めて大きな利益が得られるような事例では、期待値が発散する場合があるが、このようなときに生まれる逆説である。

1738年、サンクトペテルブルクに住んでいたダニエル・ベルヌーイが、学術雑誌『ペテルブルク帝国アカデミー論集』の論文「リスクの測定に関する新しい理論」で発表した。その目的は、期待値による古典的な「公平さ」が現実には必ずしも適用できないことを示し、「効用」(ラテン語: emolumentum)についての新しい理論を展開することであった。

The St. Petersburg Paradox (Stanford Encyclopedia of Philosophy/Winter 2017 Edition)

ベルヌーイは、主観的価値とでも言える「効用」を定義して、このパラドックスを回避した。

これは現在の経済学における限界効用逓減と同じ考えである。

ベルヌーイはさらに、効用は、金額の対数とした。 対数関数で得られる効用を「対数関数的効用」という。 資産の増加による効用は資産の総量に反比例する

  • これを「ベルヌーイの規則」と呼ぶ。

効用の増加がどれだけ緩やかでも、1回裏を出すごとに「効用が2倍になる」ように賞金額を設定すれば、効用の期待値はやはり発散する。 これを完全に防ぐためには、効用には上限があると考える必要がある。つまり、ある金額を超えれば、効用は基本的にそれ以上増えない、と考えるのである。効用の上限は、金で買える全ての欲望を満たした状態を意味し、これを「至福水準」と呼ぶ。

ダランベール「ゲームを無限に続けることができるという仮定が現実にありえない」 無限回できる