「なぜフェンスが建てられたのか分かるまで、決してフェンスを壊してはならない」 チェスタートンのルールとも呼ばれる

作家・随筆家のG. K. Chestertonが書いたThe Thingにでてくるたとえ話

IN the matter of reforming things, as distinct from deforming them, there is one plain and simple principle; a principle which will probably be called a paradox. There exists in such a case a certain institution or law; let us say for the sake of simplicity, a fence or gate erected across a road. The more modern type of reformer goes gaily up to it and says, “I don’t see the use of this; let us clear it away.” To which the more intelligent type of reformer will do well to answer:“If you don’t see the use of it, I certainly won’t let you clear it away. Go away and think. Then, when you can come back and tell me that you do see the use of it, I may allow you to destroy it.” 道をまたぐフェンスがあって「用途がわからないから壊そう」と言ってる人に対して、別の人が「用途がわからないなら壊してはいけない」と答える。

そう答えた理由は「フェンスは勝手に生えてくるものではない」から。誰かが誰かのために良いだろうと思う理由があった。私たちがそれを知るまでは、その理由が合理的であるかどうかはわからない。

Some person had some reason for thinking it would be a good thing for somebody. And until we know what the reason was, we really cannot judge whether the reason was reasonable.

「理由を知るまで理由が合理的かどうか判断できない」までは論理的に正しいが「フェンスを壊すな」になるのには飛躍がある。 例えばピンクが好きなおばあさんがある時勝手に道路にペンキを塗ってピンクにして、そのことを誰にも話さないまま死んでしまったとしよう。ここに「理由はわからないがピンクの道路」ができる。理由を知っている人が死んでるので未来永劫ピンクな理由が解明されることはない。ならば残された人は道路を永遠にピンクに保ち続けなければならないのか?そんなわけはない。 おかしな結論になったのはチェスタートンが「理由が合理的か判断できない」を「きっと現状を維持すべき理由があるに違いない」にすり替えているから。

物事を変えるかどうかは、それぞれの選択肢のメリットデメリットを比較して判断するのが合理的。作られた理由のわからないフェンスが、維持費0で維持できるなら、維持したらいい。維持費が毎年100万かかるなら、その「作られた時にはあったが今はもうわからない、合理的かどうかもわからない理由」のために年間100万支払うのか合理的か?という判断になる。

また、やり直す場合のコストも判断に影響する。フェンスを壊して、やっぱり必要だとわかって作り直す時に100万でできるなら、壊したらいい。1年間必要にならなければ得だ。作り直すのに1億かかるなら慎重に考えた方が良い。100年間必要にならなくて、ようやくトントンになる。

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