多元投票 / Plural-Voting の理論的祖先が両言語で違う

観察

JA 多元投票 と EN Plural-Voting は同じ章 (本書 5-6 ⿻ Voting) を出典としており、列挙されるメカニズム (クアドラティック投票 / 液体民主主義 / Futarchy / eigenvoting など) もほぼ同一。だが、それぞれが「同章の中から何を引き出すか」が異なる。

JA が立てた主要セクション「分人民主主義 (Divicracy)」

JA 多元投票.md には独立した節「分人民主主義 (Divicracy)」がある。本書 5-6 多元投票の脚注を全文引用しつつ、ドゥルーズ → 鈴木健 → なめらかな社会とその敵 という系譜を「⿻ の多元投票の一例」として明示的に位置づける:

LD とは異なり、分人民主主義は自分の票を他者に委ねるだけでなく、複数の政治課題に票を分散させることも認めている。…鈴木健 はこの概念を 2000 年代に導入し、2013 年の著書 なめらかな社会とその敵 で詳しく述べている。

JA agent が「本書脚注」だったこのリンクを「主要セクションを構成する material」と判断した。

EN が立てた理論的接続「Amartya Sen / Arrow’s Impossibility Theorem」

EN Plural-Voting.md は冒頭の definition で:

The chapter cites Amartya Sen’s observation that Arrow’s Impossibility Theorem is dissolved once preference strength is admitted.

を引き、welfare economics における Arrow の不可能性定理を出発点として全章を位置づける。EN page には Sen / Arrow への言及があり、分人民主主義 / 鈴木健 への言及は ゼロ

同じ章脚注からの選択

両 page は同じ本書脚注プールから読み取れる候補のうち、異なる footnote を「メインに引き上げる」判断をした。これは ingest agent の preference ではなく、両言語コミュニティの概念空間 prior によって駆動されている可能性が高い:

  • JA: 鈴木健は日本語版解説執筆者であり、JA Plurality 言説の重要 node。分人 系譜の脚注は JA 言説にとって「すでに重要な接続」だった
  • EN: Sen / Arrow は英語圏 social choice 理論の標準ルート。EN Plurality 言説にとって「すでに重要な接続」だった

帰結

両 page は同じ章を典拠としつつ、それぞれの言語コミュニティの理論的 prior に従って「多元投票」概念の theoretical hinterland を異なる方向に広げている。JA を読む者は分人と Plurality の接続を強く意識し、EN を読む者は welfare economics と Plurality の接続を強く意識する。

これは 同じ概念を異なる lineage に hook-up している 例であり、correspondences.yaml の 1 行 en: Plural-Voting ↔ ja: 多元投票 が示唆するよりも、両言語の概念空間における意味的近隣 (semantic neighborhood) は乖離している。

Open Questions

  • 両 page が言及しないが本書 5-6 章にある他の理論的祖先 (Penrose / Hanson / Lewis Carroll など) のうち、片側だけが詳述している項目はあるか
  • 分人民主主義を EN 側に逆輸入する場合、Plural-Voting page の “Related concepts” に Divicracy を追加する形になるか、独立 concept page にするか